Text - Movie


"Movie" Menu] ["All Movies"


ライフ・イズ・ビューティフル La Vita E Bella
●●●●●●



 これは、ひたすらに胸に突き刺さる、痛い痛い映画でした……。
 人の心を明るくするための『笑い』が、こんなにも『痛い』ものに変質するなんて。

 大まかにいえば二部構成になっているこの映画。
 前半ではとにかく、主人公の破天荒な明るさを前面に押し出して、ハッピーなムードで盛り上げてゆきます。ここはまさに古き良きコメディといった様相で、観ている者を単純に楽しませ、主人公のキャラクターを強烈に印象づけます。
 ところが後半、舞台が強制収容所に移るに至って、彼のもたらす『笑い』は、まったく異質なものへと変容するのです。やっていること自体は変わっていないのに、舞台のほうが変わったことで、すべてが哀しく、悲劇性を帯びたものに映るんですね。これはまったく、構成と脚本の妙、そして主人公たるロベルト・ベニーニのを演技の妙と言えるでしょう。

  血生臭い戦場を描いているわけではありません。戦争批判というスタンスをストレートに見せているわけでもありません。にも関わらず、戦争というものの悲劇性は、この作品を観た者全てに確実に伝わるはずです。
 どこまでも純粋であるがゆえに、それを観ている者は、胸がかきむしられるような痛みを覚えることでしょう。実に見事な作品でした。



(00.06.23)