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ココニイルコト
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 上司との不倫がその妻にばれ、手切れ金を押し付けられた上に大阪支社の営業部に飛ばされたコピーライターの志乃。すっかりやる気をなくした彼女の前に、「ええんとちゃいますか」が口癖のやたら楽観的な営業マン、前野が現れる。次第に親睦を深めてゆく二人だったが、ある日、前野が入院して……。

 映像・音楽ともに澄んだ透明感があり、ビジュアル的には好みの作品です。
 しかし、人物描写にどうにも抵抗を感じてしまって駄目でした。リアリティに乏しく、妙な気取りがあって、台詞のひとつひとつが浮いているのです。前野を演じた堺雅人の、微妙に不自然な大阪弁も、物語自体の胡散臭さに拍車を掛けてしまっています。
 ところどころに入る、取って付けたようなコメディ風の描写にもぎこちなさを感じました。脚本と演出に、根本的なズレがあったように思えます。もっと自然な感じにした方が、この雰囲気には合うはずなんだけどな。

 後半以降にもなるとようやく私もこのぎくしゃくした作品世界に馴染んできて、結果的にはそこそこ楽しむことは出来ましたが、しかしそれでも……

(以下、枠内ネタバレのため反転してお読み下さい)

 ……この作品の伝えようとしていたテーマが今ひとつ判然としない。
 タイトルの「ココニイルコト」にもあるように、「いいことも悪いこともある、生きているそれだけで幸せなんだ、だから精一杯生きていこう」ということなんでしょうか?
 でもだとしたら、終盤、前野くんを死なせてしまった意図がさっぱり分からない。しかもその直後に物語は終わってしまって、ヒロインが彼の死から何を受け取ったのかも謎のまま。なんだか、雰囲気で誤魔化されたというか流されてしまったような気がしているのは私だけなんでしょうか。

(以上)



(02.1.25)