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奇人たちの晩餐会 Le Dinar De Cons
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 お笑いのツボというのはかなり個人差があって、うまくハマれば大爆笑できるはずのものも、人によっては笑うどころかむしろ不愉快になったりもします。笑いの質がブラックでクセの強いものであれば、それはなおさらです。
 そしてこの作品は私にとって不幸なことに、まったくハマれないタイプのコメディだったのでした。

 ブルジョアな主人公のひそかな愉しみは、水曜日ごとにおこなわれる晩餐会である。この会には、出席者それぞれが「町で見かけたバカ」をゲストとして招き、どのバカが一番かを競い合うという趣向があった。もちろんこの異様な趣向は、ゲストたちには知らされていない。
 さて、主人公が今回見付けたバカは、マッチ細工が趣味というピニョン氏だ。主人公は彼を自宅に招き、そのバカさ加減を会の前にあらかじめ知っておこうとした。ところが主人公はピニョン氏の予想を超えたバカっぷりによって、思いもよらぬ災難に見舞われることになる。

 大抵のコメディはキャラクターのバカパワーで笑わすものだし、そういうキャラクターに一般人が翻弄されるというのもよくあるパターンです。だから別に、「バカを俎上に上げて嘲り笑う会」という、常識で考えれば異常としか思えない設定がされていても構わない。
 問題は、コメディなのに、ピニョン氏が取る行動が、見ていてちっとも笑えないということです。むしろイライラしてしょうがない。もっと突拍子もないボケをしてくれたなら笑えたろうに、中途半端に「ああ、こういう傍迷惑な奴、いるいる」と思わせられてしまう。しかも本人には自覚がないので余計に始末が悪いという最悪のパターンなのです。

 もとは舞台劇だというこの映画、絵作りは綺麗だしテンポも悪くないんですが、なにぶん笑えないのではどうしようもない。とはいえこの映画を支持する人もかなり多いらしいので、コメディ好きの人なら一度見てみるのも一興かと。もっとも、この映画で大爆笑できる人とは、正直、あんまり友達になりたくないです。



(01.09.18)