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情婦 Witness for the Prosecution
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 最後に“あっと驚く”どんでん返しが用意されており、そしてその内容は決して人には話さないでください――こんな仕掛けが売りの映画が近年いくつか公開され、人気を集めています。例えば『シックス・センス』や『ユージュアル・サスペクツ』などがそれです。
 
 しかし、しかし。まだフィルムが白黒だった時代、1957年に、すでにこんなに見事な大仕掛けの作品があったのです。
『情婦』という、このどこか扇情的な邦題のイメージに囚われてはいけません。原題は『検察側の証人』といい、アガサ・クリスティー原作の、れっきとした推理劇です。まったく何を考えてこんな邦題を付けたんだか。この映画の知名度の低さは、ひとえにこの変てこな邦題のせいだと言っても過言ではないでしょう。
 とにかくも、この作品の驚き度は、前述の2作品の比ではありません。どんでん返しがある、ということを事前に聞かされていた私は、それならきっと看破してやるぞとばかりに、相当に注意を巡らしながら見たのです。しかしそれでもやっぱり、ものの見事に騙されてしまいました。く、くやしいぃぃぃ〜〜〜。

 酔いどれの弁護士のもとに、未亡人殺しの容疑をかけられた男が尋ねてくる。彼のアリバイを証明して容疑を晴らせる可能性があるのは彼の妻だけ。しかし、裁判に出廷した彼女はなんと、夫に不利な証言ばかりをする……。
 タイロン・パワー演ずる、飄々とした弁護士のキャラクターと、それを諫める看護婦の掛け合いが楽しく、ここはいかにもワイルダー・タッチ。しかし、二転三転するシナリオは全く予想が付かず、その見事さにはただもう唸らされるばかりです。
 舞台がほとんど法廷限定ということで、映画としてのダイナミズムにやや欠ける感があるのが強いて言えば難。ですがそれ以外は、役者の演技など全て最高の一級品です。ワイルダー作品で一つ挙げろと言われたら、私は迷わずこれを選びます。見るべし!



(02.04.03)