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アイアン・ジャイアント The Iron Giant
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 記憶を失ってしまったために経歴不明の巨大ロボットと、それを発見した少年との交流を描いた、純粋な優しさに満ちた作品です。

 アニメ作品ながら、これは老若男女問わず素直に感動させ、そして感涙させられる力を持った映画だと思います。序盤から中盤にかけては少年と巨大ロボとのコミカルなやり取りを、中盤以降からは、自らにひそむ破壊力や凶暴性に気付き始めて苦悩するロボの姿をそれぞれ描き、観客を充分に楽しませてくれます。

 この作品ではまた、その映像表現においても目を見張る部分が多々ありました。とりわけ、巨大ロボの重量感や巨大感といったものの演出が、実に見事です。音響との相乗効果もあるのでしょうが、今まで見たどんなロボットアニメよりも、その『存在』をリアルに感じられました。ロボの描写には、セルでなく実はCGアニメを使用していたということを観賞後に知ったのですが(おそらく、鑑賞中にそのことに気付く人はほとんどいないことでしょう)、そういう技術的なアドバンテージを差し引いても、やはり演出上の巧みさは特筆に値するものだと思います。

 ただ肝心の、物語のフォーマットそのもの……すなわち「異形のモノとの出会い・交流・そして……」といった枠組み自体に、オーソドックスに過ぎてオリジナリティに欠けるといったきらいが少なからずあります。そのために、「先が読める」「インパクトが弱い」といったような批判も受けてしまうようです。
 でも、オーソドックスであるがゆえに誰にでも受け入れられる、という美点として捉えることもできるわけですから、もともとが低年齢層をターゲットにした作品であることを考えあわせれば、こういった物語作りも許容範囲のうちなのではないでしょうか。
 おそらくはあえて奇をてらわないことによって、作品に純粋さを生みだし、観る者の心を素直に暖かくすることに成功している良作といえるでしょうね。

 気になったのは、政府の男・マンズリーの救いようのなさ。こいつの存在が、後味の悪さを残してしまっています。最後になにか、人の性善説を感じさせるような描写が欲しかったところですが……徹底したクズなんだもんなあ。



(00.06.26)