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ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ Hedwig and the Angry Inch
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 うーん。確かにパワフルで面白かったんですけど……観ている間どうしても、「ものすごく気合いの入ったミュージッククリップ」という印象から抜け出せませんでした。

 東ドイツ生まれのヘドウィグが、ろくでもない性転換手術を受けるなどの波瀾万丈な人生を乗り越えた末、やがて本当の自分に目覚める……というのが大まかなストーリー。その間、ヘドウィグのいろんな苦悩が描かれ、その人間くさい姿にかなり感情移入したりするわけですが……。
 なんか、冷静に見てみれば、単に好き放題やってるだけじゃないか? ヘドウィグって。いわゆるまともな方面に軌道修正しようと思えば、いくらでもその余地はあったと思うし。だから、一種の不具者としての悲劇性があまり浮き立ってこない。それゆえ、紆余曲折の末に幸せを掴んだにしても、それを観ている側としてはどこか他人事なのです。

 ライブシーンは文句なくすげえカッコイイものですし、それを物語中に違和感なく溶け込ませているのも素晴らしい。劇場で観る価値は十分にあります。
 しかし、主人公たるヘドウィグの生き様をどう見るか……それによって、この映画の評価はだいぶ変わってくるものだと思いますね。

 でも「皆さんご一緒に!」のとこではすごく歌いたくなってしまった私。日本の観客はああいうの、ノリ悪いなぁやっぱり。これがアメリカだったりしたら劇場全体で大合唱だったかと思うと、ちょっと羨ましい。



(02.05.18)