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初恋のきた道 The Road Home
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 これまた評価の難しい映画です。

 ビジュアル的には本当に素晴らしい映画です。雄大で奥行きのある自然、その季節の移り変わりをバックに描いた映像美には目を見張りますし、何よりまして、ヒロインを演ずるチャン・ツィイーの愛らしさといったら堪りません。彼女あっての映画だといってもいいくらいでしょう。

 しかし、ストーリーがあまりにシンプル過ぎます。言ってしまえば、とある少女と青年がくっついた、というそれだけの話で、それ以上でも以下でもありません。そこに至るまでに大きな波乱や障壁などはほとんどなく、そういうものを期待していると、あれれという間に終わってしまいます。
 茶碗や髪留めなどの小道具を巧みに使って、恋愛における心情の機微をうまく表現してはいますが、全体的なドラマの流れとして山場に欠けていることは否めません。
 特に気になるのは、少女と青年の人格描写がまったくというほどされていないことです。少女のほうはまだしもとして、青年のおざなりな描かれようは酷い。青年のどこに魅力があるのかはっきりしないから、少女がなぜああまで心惹かれたのかや、年老いても教え子たちに絶大な支持を得ていた理由などが分からない。それらのことは自明の事実として呈示されるだけです。
 これらの結果として、振り返ったときにインパクトの残らない物語になってしまっているのです。

 とはいえ、全体を包む純朴で暖かい雰囲気は、非常に好感の持てるものです。傷つく人も心ない悪人もおらず、見ていて気持ちがいいし、終わった後は晴れ晴れとした気分になれる。そういう意味では、たまにはこんな映画があってもいいな、と思わせてくれるのですが……。やはりちょっと肩すかしな感がありました。何かもうひとひねり欲しかったところですね。

 ごくシンプルな具材をもとに丁寧に作り上げた、上質の家庭料理のようなこの作品。大きな感動や意外な発見があるわけではありませんが、ちょっと心が疲れたときに味わって癒されてみるにはいいかもしれません。

 それにしても評価が難しい。気持ちとしては4.5点というところなのだがそうもいかないので、今回は特別にオマケして5点あげちゃいましょう(何様だよ)。
 何様といえばどちら様、どちら様といえばチャン・ツィイー。『グリーン・デスティニー』の女剣士と同一人物だとは、言われるまでまったく気付きませんでした。事実を知った今でも半信半疑なくらいです。



(01.09.24)