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GODZILLA Godzilla
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 超巨大な爬虫類がマンハッタンに突如上陸! これを撃退せんと軍が出動するが、怪物の動きは思いのほか速く、戦闘ヘリでも追い付けずに、逆に手痛い返り討ちにあってしまう。やがて地下に姿を消した怪物の生態を探るうち、生物学者のニックは、ある恐るべき事実に気付く……。

 鳴り物入りで登場した、ハリウッド製「ゴジラ」です。
 しかし! この映画には、私たちがよく知ってる、ずんぐりしててのしのし歩き、放射能火炎で都市を蹂躪する、あの「ゴジラ」という怪獣は登場しません。出てくるのはひたすらデカいだけの、限りなく恐竜に近い巨大生物です。「ゴジラ」とは姿といい生態といい全くの別モノで、ほとんど共通点はありません。火も吐かないです。このことをあらかじめ知っていないと、「ゴジラ」とのイメージのギャップばかりが気になって、楽しめなくなってしまうでしょう。

 というわけでこの映画は、「ゴジラ」を作る、という意味では明らかに間違った方向に行っちゃってます。ですからゴジラ映画として捉えると、これは失敗作でしょう。

 でも、あえて「ゴジラ」という名前を無視して、オリジナルの怪獣映画として観れば、じゅうぶん楽しめる映画になっていると思います。
 特に特撮の技術レベルの高さは特筆に値するもので、この点に関しては日本のゴジラはまったく比較になりません。巨大感を演出する画面作りがまた上手く、特撮技術との相乗効果を発揮して、素晴らしい視覚効果を生み出しています。怪物の実在感という点では、「ジュラシック・パーク」や「スターシップ・トゥルーパーズ」を凌駕するパワーがありました。

 監督のローランド・エメリッヒは、過去の作品「スターゲイト」や「ID4」などから、映像を魅せるセンスはあるけどそれ以外の面では全くダメ、と私は評価しているのですが、今回もご多分に漏れず、映像はバッチリですがストーリーの方はイマイチです。それでも、今までに比べれば、私はずっと楽しんで観ていることが出来ました。それは、マシュー・ブロデリック演じる主人公ニックや、ジャン・レノ演じる謎のフランス人のキャラクターがなかなか魅力的に描かれていたからです。このあたりだけでもエメリッヒはちょっとは進歩したと言えるんじゃないでしょうか。(でも、女性レポーターの描かれ方は最悪でしたけど……)

 ところで、いろいろ褒めはした映像面ですが、実はここにもちょっと問題があります。というのは、多くのシーンで、オリジナリティの欠如を感じてしまうことです。確かに凄いんだけど、どっかで観たようなシーンだな〜、というのがけっこうあるんですね。特に「ジュラシック・パーク」や、「ID4」との相似性はかなり高く、せっかく派手なシーンなのに、なぜだか新鮮味を感じないという現象が生じてしまっています。これはなんとももったいない感じでした。
 しかし、全体としては迫力あるシーンも多く、わりあいテンポ良く話しも進んでいくので、ほとんど退屈することなく最後まで観ることができる、娯楽作品としてなかなかの出来なんじゃないでしょうか。かなりひどい前評判を聞かされていた私はそれなりの覚悟をもって観に行ったのですが、思いがけず楽しめたのでかえって嬉しくなってしまったほどです。

 でも繰り返しますが、これは「ゴジラ」じゃありません、決して。むしろ「ゴジラ」という名を冠せずに、始めからオリジナルの怪獣として造形した方が興行的にもずっとうまくいったんじゃないかなあ。エメリッヒは続編以降も作る気まんまんらしいけど、「ゴジラ」にこだわってると泥沼になる気がするぞ。 



(98.07.16)