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ガタカ Gattaca
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”そう遠くない未来”――。
 それは、DNAによる徹底した人間の管理が行なわれている世界。遺伝子情報を調べることで、身体的特性から寿命までをデータ化され、それによって社会的な地位さえ制限されてしまう。そのため、新生児は母親の胎内にいるうちからDNAを操作され、劣性遺伝子を除かれて誕生してくるのが通例となっていた。
 だがこの物語の主人公は、そうした遺伝子操作を受けずに生を受けた人間だった。彼は宇宙飛行士になりたいという大きな夢を抱き、懸命に努力を重ねながらも、「劣った」遺伝子のために、夢への道を閉ざされかける。
 しかし、ある人物の協力を得て、彼はエリート遺伝子を持った人間を装って、宇宙飛行士養成所である「ガタカ」に入り込むことに成功する。夢へ手が届くかに思えた矢先、ある事件がきっかけで、彼の偽装発覚の危機が訪れる……。

 独特のクールな空気感を持った作品です。近未来の世界作りが巧みで、現実感のある設定と、シャープなコントラストの利いた美しい美術が、実に洗練された雰囲気を醸し出していました。
 物語自体は、ややインパクトに欠ける印象は受けるものの、「遺伝子」に翻弄され葛藤する人々の姿がドライな視点から描かれていて、この遺伝子統制の世界が事実「そう遠くない未来」であることを感じさせてくれます。
 役者では、主人公に遺伝子を提供する人物を演じたジュード・ロウが好印象でした。彼はエリート遺伝子を持っていながら、癒せない傷を脚に負い、そのために社会の表舞台に立つことが出来なくなってしまった人物です。主人公に自分の未来を投影し、積極的に協力しつつも、どこか諦観したような哀しげな表情を見せるこの陰影ある人物を、J・ロウは巧みに演じていました。
 小品ではありますが、全体として非常にいい形でまとめられた佳作だと思います。
 しかし、生まれた瞬間に寿命を宣言されるのって……ぞっとしませんねえ。



(98.07.16)