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ガメラ3 邪神〈イリス〉覚醒
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 同じ怪獣映画でありながら、ゴジラシリーズとは比較にならないほどクオリティの高さを見せてくれていた、平成版・ガメラシリーズ。特に前作である『レギオン襲来』の、そこらのハリウッド映画を凌駕するほどの面白さ・カッコ良さには私も大いに感銘を受け、当然その続編たる『3』にも大きな期待を寄せていました。前以上に「すげ〜!」「強えぇ〜!」と言わせて欲しいという欲求がみなぎって、映画館に入る前から鼻息が荒くなっていたほどです。

 ところが。
 待ちに待った『3』のその内容は……私が求めていたような、爽快感ある純粋なエンタテインメント……とは、ほど遠いものだったのでした。正直なところ、素直に「面白い」と言える内容ではなかったように思います。一緒に見た友人の中には、終幕直後、露骨に「つまらなかった」とまで言い放っていた者もいたほどです。
 作り手の伝えようとしていたメッセージの片鱗や、怪獣映画として表現したい事の方向性、そして何より強い気概みたいなものは大いに感じられたのですが、いかんせん、それを十分に活かすだけの肝心の脚本そのものが、じゅうぶんに練り込まれていなかったように思います。
 もともと説明不足の感のあるストーリーに加えて、存在意義のはっきりしないキャラクターが多いことが、余計にわかりにくさを増す結果となっていました。そのために、観客が物語世界に入り込んでゆけないのです。言ってしまえば、思想や理屈が先走った『頭でっかちな』映画になってしまっていた、という感じですね。
 そういう映画であること自体が悪いとは思いません。常に新しい可能性を追求し表現していくことは大事ですし、評価したいところです。ただ、この映画を観に来た観客の大多数は、『怪獣映画』にそういうものを求めてはいなかったと思います。そういう意味で、この『3』の内容は、私たちの期待に応えてくれたものとは呼べないのでした。
 とはいえ、相変わらず特撮面では魅せてくれました。圧倒的な迫力だけでなく『美しさ』さえも備えたその画面作りは、特技監督である樋口氏の独壇場といった感じでしたね。その点だけはたっぷり堪能させていただきました。樋口マジック健在という感じです。



(00.06.22)