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グリーン・デスティニー 臥虎藏龍
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 伝説の名刀『グリーン・デスティニー』をめぐって繰り広げられる様々なドラマを描いた、愛と闘いの物語です。

 ――とは書いたものの、この映画、はっきり言ってドラマ部分はイイカゲンです。見どころはあくまでも、壮絶な格闘アクション部分のほう。カンフーや武器を使っての人間離れした体術を、この作品は存分に堪能させてくれます。「許されぬ愛」「師弟間の確執」などといった要素は結局、対決を盛り上げる味付け程度でしかありません。まぁ、凡百のB級カンフー映画などに比べればずっとしっかり描かれてはいますけど、しかしやはり心理描写の踏み込み不足は否めませんね。

 さて、その眼目たるアクション。以前から「ワイヤー吊りのアクションが凄い」とさんざん聞かされていたので、ある程度はその心づもりを持って観てみたわけですが……いやいや、ここまでやってくれてるとは、さすがに思ってませんでしたよ。予想の範囲を遥かに超えていました。
 ジャンプ力がすごく強い、程度のレベルでは、すでにないのです。なにせ、人間が壁を真横になって走るわ、水の上をスキップするわ、挙げ句には空を飛ぶわ――と、もはや「何でもあり」状態。重力はどこ行った? の世界です。どうやら古代中国では、格闘技の達人は舞空術もマスターしていたようですな。オマエらはXメンか! と、何度ツッコミを入れた事やら……。もっとも、その天衣無縫な暴れまくりっぷりこそが、この映画のいちばん楽しいところなんですけどね。
 ワイヤーアクションだけでなく、実際に体を張った格闘シーンもまた凄まじい。ジャッキー・チェンやジェット・リーなどの作品でじゅうぶん見慣れているつもりでも、この映画における超人的かつ美麗な武術の応酬にはきっと目を奪われ、度肝を抜かれることでしょう。武術指導はユエン・ウーピン。『マトリックス』も担当していたお方です。カッコ良くわかりやすい“強さ”の表現というものを、さすがによく分かってらっしゃるようですね。参りました。

 繰り返しになっちゃいますが、ドラマ面の描写は物足りないので、それを期待していると拍子抜けする可能性大です。アクション部分がとんでもなく派手なだけに、それ以外の部分がよけい冗長に映ってしまうのかも知れません。
 そのかわり、単純に武術アクション映画として観れば、この作品は文句なく歴代最高ランクに入ります。問答無用でスカッとしたい人は、どうぞ観てみて下さいな。
 それにしても、ヒトの体術表現は、いったいどこまで進化してゆくのでしょう……。



(01.07.01)