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フル・モンティ The Full Monty
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 落ちこぼれの失業者の男どもが一念発起。しかしそれは、自分たちで男性ストリップダンスショーを行い、自分たちの「凄さ」を世間の人間(主に女性)にアピールすることだった。最初のうちは冗談半分でやっていた彼らだったが、会場の前売券はバカ売れし、初公演の日は迫り、主人公がどうしても金を稼がなくてはならないある事情も相まって、抜き差しならない状況になってしまう……というコメディ。
 失業という暗く辛い状況の中、半分キレかかった男たちの悪戦苦闘ぶりが、かなり笑わせてくれる作品です。登場人物もそれぞれみんな一癖あって、なんだかすごく情けないんだけど共感してしまうような、好感の持てる人物造形がされてました。
 この映画がいいのは、キワモノ的な題材を扱っていながら、下品な笑いを取るだけの単純なコメディには終わっていないところです。どこか切なく悲しげで、それでいて前向きな爽やかさに満ちているんですね。それがこの作品に後味の良さを与える大きな魅力となっています。
 ストリップダンスという行動自体は、彼らにとっては一種の現実逃避から始めたことでもあったわけですけど、その中で彼らは思いがけず色々なものを見付けることになります。一致団結することの素晴らしさ、夫婦や家族の信頼の暖かさ、恥を捨てても努力することの大切さ。それらがあるから、困難なことでも乗り越えてしまえるということを知るのです。そうしたことによって、初めは思い付きでしかなかったストリップが、彼らの中でしだいにその位置付けを変えていきます。ひたむきな一生懸命さが芽生えてくるんですね。
 例えば、主人公の動機づけに大きな要因となっているのが、離婚した妻の元にいる小学生の一人息子です。主人公は息子を強く愛しており、息子も主人公の唯一とも言える良き理解者です。しかし、期限までに養育費が払えないと、二人は会うことさえ許されなくなってしまうのです。このため主人公が一発当てるために考え出したのがストリップショーというアイデアなのですが、息子はそれを半分馬鹿にしたような冷めた目で見つつも、結局は色々な形で協力し、主人公の心の支えとなってくれます。いよいよクライマックスとなる初公演の当日、主人公は今までやってきたことへの自信を失いかけますが、ここでも彼を叱咤激励するのは他ならぬ一人息子なのです。こうした暖かい人間描写が、この作品のほのぼのと明るい雰囲気を生み出しているわけです。
 ラスト、この物語は、唐突にも思えるようなかなり潔い形で終わってしまいます。でもそれはもしかすると、「これで終わりではない。彼らにとっては、これがスタートになるのだ」というメッセージの表れなのかもしれません。全てをなげうって頑張れば、その先には素晴らしい成果がある。それを知った彼らにはもう怖いものはないでしょう。人生の再スタートのきっかけは案外こういうかたちで見付けだすものなのかもしれませんね。最近生きることに行き詰まりを感じちゃっているような人にお薦めしたい、肩の力が抜けること請け合いの佳品映画です。



(98.00.00)