Text - Movie


"Movie" Menu] ["All Movies"


フォーエバー・フィーバー Forever Fever
●●●



 ストーリーもキャラクターも何もかも、ベタベタのお約束で塗り固められた映画。
「お約束」であるがゆえに安心して観ていられる、という側面もないわけではないのですが、意外性のカケラもないようなお話をなぜ今さら、という気持ちが最後まで拭えませんでした。

 ふとしたきっかけからダンスの魅力に目覚めた青年が、ライバルの妨害や家族のトラブルにもめげず、ダンス大会を目指す。その大会の結果は、10人中10人が予想するその通りに終わります。そしてヒロインともめでたく結ばれ、ハッピーエンド。

 まあ、こんなふうに身も蓋もなくストーリーの骨格だけを取り出してしまえば、この程度にベタな作品はいくらでもあります。でも、たいていの作品は、そこに何がしかの創意工夫やひねりを加えて、物語にオリジナリティを持たせようとするものです。
 ところが、この映画にはそういった部分がほとんどない。特にいただけないのが、キャラクター作りまでが凡庸なものになってしまっていること。物語がシンプルなら、登場人物たちに独自の存在感を与えることで、話に幅を持たせるべきです。でもこの作品でキャラクターが“立っている”といえるのはせいぜい主人公くらいなもので、あとは、『献身的な幼なじみの女の子』だの、『ハンサムだけど意地の悪いライバル』だの、『優しくて高嶺の花の美人』だのといった、判で押したような造形の、底の浅い人物ばかり。主人公の友人たちに至っては、まるきり『友人A・B・C』程度にしか描かれていませんでした。これでは感情移入も何もあったものじゃありません。

 大会でのラストダンスも、今ひとつ迫力に欠けてしまっていたのが残念。ダンスシーンこそが眼目であろうこの作品で、クライマックスが盛り上がらないというのは致命的でしょう。
 映像としても全体的に泥臭い感じが否めません。’70年代のシンガポールが舞台ということも一因ではあるでしょうが、それ以前にまず、演出のセンスが古いのだと思います。

 まっすぐな映画を作ろうという姿勢自体には好感が持てますし、複雑なストーリーばやりの昨今、こうした分かりやすくて素直な映画が逆に新鮮に映るという向きもあるのかも知れません。でもやはり、私の肌には合わない作品でした。



(01.02.08)