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ボウリング・フォー・コロンバイン Bowling for Columbine
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 民間人による発砲事件での死者が年間1万人を超す国、アメリカ。この銃天国とも銃地獄ともいえる国の実態を、ジャーナリストであるマイケル・ムーアが、体を張った著名人への取材を多数交えつつ、シニカルかつ理知的な検証を行なってゆく。
 
 この作品は、アメリカに氾濫する銃犯罪をテーマにしたドキュメンタリーですが、着眼点がなかなかユニークなものになっています。

 おそらく、銃問題に対しての一般的な考え方はこうでしょう。アメリカでは、免許さえ持っていれば誰でも容易に銃を手にすることができる。そこらのコンビニみたいな店で弾薬も気楽に買えてしまう。確かにこれは問題だ。だからもっと銃に対する規制を厳しくしなければダメだ……。

 しかし、果たしてそうか? この作品は問い掛けます。銃そのものが問題なのか、と。
 ムーアは隣国であるカナダを例に出し、アメリカにひけを取らないほど銃が普及していることを指摘します。にもかかわらず、カナダでの銃犯罪は、アメリカのそれとは比べものにならないほどに少ない。
 この差はいったいどこから来るのか。歴史か? 国民性か? 環境か? そういった側面を一つずつ、ムーアは足を使った精力的な取材とともに検証していきます。

 事前に想像していたよりもずっと硬派で真摯な内容に、正直少々面食らわされました。もっと毒の強い、スラップスティックなものを期待してしまっていたからです(何しろ『アホでマヌケなアメリカ人』なんてタイトルの本を書く人が作った作品ですから)。

 逆に言うと、真面目すぎてやや退屈してしまった部分もあります。ムーアの主張は納得できるものだし、大変な努力があったことも感じられるけれども、アメリカの有様に疑問を投げかけるまでで終わってしまっているように思えました。
 なにかもう一歩煮え切らない感じが残るのは、それだけ銃問題が根深いということなのか、それともこの作品の甘さからきているのか、判断の難しいところです。

 エンタテインメント性の少ないドキュメンタリーなので相対的な評価がしにくく、評点はとりあえず5点という事にしておきましたが、刺激的な内容も多分に含まれているので、見ておく価値は充分あるでしょう。
 マリリン・マンソンの意外な(失礼)インテリぶりや、チャールトン・ヘストンのボンクラぶりも必見です。



(03.02.16)