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ビューティフル・マインド A Beautiful Mind
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 主人公ジョン・ナッシュは、プリンストン大学の数学専攻生。卓抜した才能を持ちながらも、人とのコミュニケーションを苦手とする彼は、学内でも常に浮いた存在だった。卒業後、研究所に勤めるかたわら、そのたぐいまれな暗号解読の能力を買われ、国家機密の任務を与えられることになる。
 そしてやがて、相変わらず人付き合いの不器用な彼にも、良き理解者となる女性が現れる。能力を活かせる仕事、愛する妻。心身ともに充実した生活が続いていた彼だったのだが……。

 エンターテインメントとして、非常によく出来た映画です。ラッセル・クロウ、エド・ハリス、ジェニファー・コネリーらの締まった演技、緩急自在の演出&脚本。どれも高い水準でまとまっていて、ぐいぐい引っ張って楽しませてくれます。

 この物語の骨子となるのは、主人公ジョンが「ある病気」に罹っていて、それをいかに克服するか……ということなのですが、それがどんな病気かは、未見の方のためにあえてここでは詳しく書かずにおきます。知らずに見た方が、劇中で知った時の衝撃度も高く楽しめるでしょうから。
 と言ってもこの作品は、巷によくあるような、『難病を克服して感動させるドラマ』とは趣を大きく異にしていますのでご注意下さい。途中、思いもよらない仕掛けが待ち受けております。くれぐれも油断なさらぬよう。私などは思わず「なにーっ?!」と声を挙げてのけぞってしまいましたよ。

 ただひとつ気になったのは、ラスト、ジョンが逆境から立ち直るきっかけに、今ひとつ説得力が足りないように思えたことです。それまであんな大変な目にあってきたわりに、復活に関してはわりとあっさり流してる感がある。ラストにもう一押し何かエピソードがあれば、ほんとに心に残る作品になったのにと思うと残念でなりません。

 ちなみにこの作品は実話をベースにしているそうですが、実際の人物をだいぶ美化して(映像的に、という意味ではなく)描いているとのこと。しかしそれでも、本来は不快な人物であるはずのジョンを、フィクション像とはいえ巧みにその内面まで演じきり、感動を与えてくれたラッセル・クロウの演技力に、まずは拍手を送りたいところです。



(03.02.19)