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バリー・リンドン Barry Lyndon
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 この作品は、ジョージ一世が統治していたころの英国を舞台に、バリーという青年がたどる、波乱に満ちた数奇な運命を描いたドラマです。二部構成になっていて、前半ではバリーが貴族社会へ成り上がってゆくまでを、後半ではその後のバリーが様々な不幸に襲われて苦悩する様を、それぞれ描いています。

 映像も音楽も素晴らしい、まさに一級品の映画だと思いました。3時間余りの長丁場ですが、メリハリの利いた演出は、長さを苦にさせません。役者の演技も良く、まず観て損のない作品だと言えるでしょう。

 とはいえ後半、せっかく掴んだ栄光の地位を、自ら招いた事態にせよ徐々に失ってゆくバリーの姿を観ているのは、辛いものがありました。というより、前向きな努力の姿勢が魅力的だった前半に比べると、後半以降のバリーの行動には感心できない部分が多くて、あまり感情移入もできなかったのです。そんな調子じゃ地位や信用を失うのも無理ないよ、って感じで。

 でも不思議なことに、観終わった後、私の気持ちは妙にすっきりしていました。観る前までは、ちょっと鬱気味の気分だったというのに。これも一種の浄化作用とでもいうのかな……。
 しかし、人の不幸ばなし見て浄化されるなんて、なんだかそれはそれで嫌な感じと言えなくもないですね。



(99.04.03)