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アルマゲドン Armageddon
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 なんというか、速球ストレートオンリーの剛腕ピッチャーみたいな作品でした。力技でねじ伏せ、無理矢理に胸を揺さぶり感動させ泣かせに来るような、そんな内容でしたね。

 人類の命運をかけて、選ばれた男たちが闘いを挑む。そこには熱い友情があり、愛する者との別離があり、使命のために命をなげうつ強い志がある。さあ、どうだ!

 ――観ていても、その映画作りはあまりにコテコテ・ベタベタで、いかにもあざとい感じがびしびし伝わってきます。意地でも泣かせてやるぞという、ある意味悪意にも似た作り手の気概がありありと感じられます。
 これは、やりすぎだ。あんまりだ。こんな映画作りを認めてはいけない。泣かされてしまったら、それこそ作り手の思うツボだ。泣いちゃダメだ。私は頭の中でははっきりとそう、理性的にこの映画を評価していました。少なくとも、していたつもりでした。

 でも……泣かされてしまったのです。ええ、まんまと。
 クライマックスあたりで我知らず目頭が熱くなるのを感じ、父と娘がモニタ映像を通じて言葉を交わすシーンでは、もうぼろぼろ涙を流してしまっていたのでした。
 こうなったら『負け』、です。負けを認めるほかありません。いくら冷めた観点から、それこそ山のようにあるこの映画のアラを指摘し、映画としての完成度にイチャモンを付けたところで、もうどうにもなりません。私は泣かされてしまった。その厳然たる事実があります。私は、負けてしまったのです。
 自分の中の背反する感情に、「くやしさ」であるとか「いまいましさ」であるとか、何かそういった表現を用いることで、私は無理に自分を納得させようとしていました。こんな映画に、こんな映画にっ……! それほど、この映画で泣かされてしまったことは、私にとっては一種の屈辱だったのです。犯されたようだ、といってもいいくらいの気分でした。
 ……でも、実のところ、そういったきつい言葉を使うほど、この映画に不快感を持っていない自分もいたのです。で、結局、
「――してやられた」
 と、心地よさをともなった敗北感を感じながら、苦笑するしかありませんでした。 



(98.12.13)