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エニイ・ギブン・サンデー Any Given Sunday
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 まずはアル・パチーノの魅力が全編にみなぎった力作でした。とにかく、アメフトのコーチを演じる彼が選手相手に「無駄に生きるな、熱く死ね!」なんて怒鳴ってるだけで、ゾクゾクするほど絵になっちゃいますから。
 パワフルな演出で2時間超の長丁場を一気に見せるストーン監督の手腕もさすがのものでしたね。全体を通じて、音楽のプロモ・ビデオ的なノリを意識していた雰囲気もあって、それが観客を退屈させない要因の一つになっていました。
 ヒロインのキャメロン・ディアスも頑張っていたと思います。最近はすっかりコメディエンヌのようなイメージが定着してしまっている彼女ですが、この映画ではシリアスに徹し、パチーノと丁々発止の激しい口論をするシーンなどでは、かなりの新鮮味を感じました。映画の中の彼女を「綺麗だな」と思ったのは、これが初めてかも知れません。もっとも、金こそすべての女オーナーという役を演じるには、彼女はちょっと若すぎた感もありますが。もっと老獪な味を出せる女優さんでもよかったかな。それこそシャロン・ストーンだとか、ジュリア・ロバーツなどのような。

 褒めるべき所の多い映画ではありますが、看過できない難点もいくつかあります。
 一つには、基本的なこととして、大まかにでもアメフトの知識がないと、頻出する専門用語のために話が掴めなくなる可能性が強いこと。それから、手持ちカメラの映像を多用した試合シーンがあまりに目まぐるしく、試合の流れを見失ってしまいがちなこと。
 そしていちばん問題なのは、登場人物の心理描写のツメが甘い点ですね。コーチと女オーナー、あるいはコーチとルーキーなどとの対立と衝突をあれだけ見せておきながら、それらが和解に至る課程が充分に描かれていないため、終盤の和解そのものが唐突なものに思えてしまうきらいがあるのです。このせいで、ちょっと『イイ話』過ぎるんじゃないかという印象さえ受けてしまいました。普通はこんな簡単なものじゃないぞ、と。ただ、ラストには毒の効いたどんでん返しがあるので、それでバランスを取ろうという意識はあったみたいですけどね。

 全体としては、ややいびつな部分があることは否めないものの、熱さと勢いとで押し切ってもらえる快感は堪能できるので、そういった方面の映画がお好みの方にはお勧めしておきましょう。



(00.06.23)