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エイリアン4 Alien Resurrection
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 舞台となるのは、「3」でリプリーが死を遂げてからさらに未来、極秘の生体実験が行なわれている宇宙船の中。DNAレベルでエイリアンと融合してしまっていたリプリーの血液から彼女のクローンを創り出し、そこからエイリアンのみを摘出し繁殖させ、生物兵器として利用しようという、愚かしくも恐ろしい計画がそこでは進行していた。計画は慎重に進められ、そして成功しようとしていた。リプリーはほぼ人間そのままの姿で復活したのである――その肉体に、強靭なパワーや強酸性の血液など、エイリアンとしての特性を備えて。と同時に、エイリアンの胎児の摘出も成功を収めていた。
 数日の後、この船に小さな宇宙艇がやって来る。乗員は不審な荒くれものばかり数名。彼らは軍と裏取引をし、その依頼で、エイリアン繁殖の媒介として必要な「あるモノ」を運び込んできたのである。モノの入手は、違法な海賊行為を働いて、であった。
 全ては『安全に』ことが進められているように思えた。ところが意に反して、成体となったエイリアンは檻を抜け出してしまう。襲われる人間たちはなす術もなく、船内はとたんに阿鼻叫喚の地獄と化す。リプリーは海賊たちと手を組み、またも生き残りと脱出を賭けて闘う事になった……。

 私はこのシリーズの初代と『2』はかなり好きです。でも『3』は観てません。あまりに評判が悪いし、個人的にも「もういいだろ」的な気持ちがあったので、観るのを避けていたのでした。
 そこへもってきてさらに『4』と来たもんですから、私は内容についてはまったく期待してませんでした。でも観てしまったのは、とにかく「ウィノナ・ライダーが見たかった」、これに尽きます。何しろファンなもので。で、少なくともその期待だけは応えられたと、あらかじめ書いておきましょう。彼女ならではの透明感のある可憐さと意志の強さが感じられる役柄で、まあ良かったと思います。
 でも、肝心の映画そのものの内容については……正直、特に語るべきところがありません。
 このシリーズは、基本的なフォーマットがもう出来上がっちゃってるんですよね。そして『2』ですでに完成されてしまっている。とにかくエイリアンから逃げる、闘う、そして最後はクイーンと対決。これだけです。だから観ていて、どうしても新鮮味が感じられないのです。キャラクターや設定などの、多少の味付けの工夫程度ではもはや駄目でしょう。
 もちろんこの『4』ではその辺のことも制作者はいちおう踏まえたうえで、中盤以降ではいろいろと意外な展開なども見せてくれているのですが、でもそれも枠から大きく飛躍するようなものではありませんでした。
 何より肝心の演出が凡庸で迫力不足です。特に音楽の使い方が拙く、音楽でむりやり恐怖感を煽ろうとしている感じでした。音楽そのものにもセンスが感じられませんでしたし。
 そんな中で、ウィノナ演じる「コール」という女性のキャラクターだけは出色でした。ワイルドなリプリーのキャラクターとはまさに対照的な役柄で、いい存在感を出していたと思います。でも仕方のないことですが、彼女一人だけで作品が成立するほどのパワーまではさすがにありませんでした。
 せめて、終盤の彼女の台詞、
「プログラムされているから……」
 というあたりをもっと深く踏み込んで描いていけば、この作品は奥行きを増したかもしれないと思うんですけどね。どっちにしろその時はもう手遅れでした。
 もっとも、美術や特撮はよく出来ていましたし、今までのシリーズと比較しないで考えれば、とりあえず水準は超えている内容ではあったと思います。しかし『エイリアン』という大看板を背負ってる以上、これくらいでは満足できないと言わざるを得ません。後はもう『5』を作ろうなんて思わないで欲しいです……。
 (ちなみに、私の付けた評点のうち「○」1個分は、ウィノナに対してのボーナスです(笑))

 それにしても、エイリアンの体の表面をしたたりまくっている液体……どっからあんなに溢れてくるんでしょう。ほったらかしとくだけでも水分不足になって干からびる気もする。
 そうそう、エイリアンの特性をまったく理解していないあの檻もひどかったなあ。周囲の壁はせめてコンクリとかにしとかないと駄目に決まってるだろ〜。どうも基本的なとこで間が抜けてるんですよね、このシリーズの科学者って、いつも。



(98.11.9)