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アバウト・ア・ボーイ About a Boy
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 38歳の独身男・ウィルは、親父が遺したある財産のおかげで、無職でブラブラしてても食っていけちゃう暮らし。結婚なんてメンドクセー事は考えず、いろんな女に手を出しちゃ泣かせてきた彼が、「これは美味しい」と目を付けたのはシングルマザー。何しろ、さんざ遊んだあとに捨てても、責任を感じるのは向こうだから。(ひでえ)
 さてそんな彼がわざわざシングルマザーの集会に出かけ、ある女性とその息子である少年と出会う。最初はウィルに反感を抱いていた少年だったが、うつ気味の母親を救うため、彼を利用することを思い立つ……。

 飄々とした主人公をいきいき楽しそうに演じるヒュー・グラントが、なんとも好印象の映画です。また、その彼と対決する少年・マーカスを演じるニコラス・ホールトも、他の大人を食う好演を見せます。
 自由に生きてるけど孤独なエゴイストたちが、お互いの関係の中で存在理由を確かめ合っていくという過程を、軽すぎず重くもならない微妙なタッチで描く手腕は心地よく、なかなかのものです。基本的にこういうノリ自体は大好き。

 ただ、エピソード全体としては焦点がぼやけ気味で、どこに着地するのかよく分からないまま時間ばかり過ぎていくという感覚が、特に後半以降に強く感じられました。
 何より気になったのは、マーカスの母親という人物の描かれ方です。かなり身勝手で、悪意の感じられる人物描写がなされているため、共感も感情移入も出来ませんでした。仮にも中心人物のひとりなんだし、最終的にはマーカスと幸せにならなきゃならない人なんだから、もうちょっといい人に描いてくれないとなあ……。

 また、テーマそのものは悪くないとは思うんですが、主人公の置かれてる境遇って、一般の人から見れば十分恵まれてて羨ましい環境なわけで、だからこの話も結局はどこか他人事、という感覚がある。そういう意味でちょっと勿体ない気もします。



(02.10.02)