Text - Diary - Past - 1999 Selected the 2nd Half


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99.07.10

 とりあえず胃腸の不調の方は、『ストレスから来る慢性胃炎』ということでカタが付きました。変な潰瘍とかはなかったので、まずは一安心。

「――とにかく、仕事にストレスを感じないことです」

 先生は平気な顔をしてそんなことをさらりと言ってくれます。それができれば苦労はないっつーの。
 曖昧な苦笑いで応えた私に、先生はさらに続けます。

「こんな事、会社に聞かれたら怒られちゃうと思いますけどね……」と声を落として、「ストレスを感じない最良の方法は――“仕事に責任を持たない”ことですよ」
「……はぁ……」
「失敗やミスをしても、『これは私のせいじゃない、私にこういうミスをさせるように仕向けた“神様”のせいなんだ』とでも考えるといいんです」

 凄い発想です。一種の解脱と言っていいでしょう。そこまでの領域に到達できたら、人生どんなに楽か。

「いいですか。精神医学上の見地から言えばね、“責任感の強い人”というのは病人なんです。逆に“無責任な人”って言うのは、健康な人なんですよ――」

 先生はそう言って、意味ありげな笑いを浮かべました。もちろん半ば冗談で言っているのでしょうが、でもある面、確かに真実でもあるのでしょう。

「……ヒニクなもんですねぇ」
 それくらいの言葉でしか、私には応じられませんでした。


99.07.16

 私の声真似が、社内で大流行中です。

 以前から、「声だけはカッコイイ、声だけはシブイ」などと、本人には嬉しいような嬉しくないようなことを、友人たちからも言われてはいた私。それが、会社での電話の応対になるとまた輪をかけて、私本来のキャラクターのイメージとは大きくギャップのある声になっているらしく(“らしく”、というのは、私自身では自覚がないからです)、「カッコイイ」を通り越して「気取ってる」「」などとまで言われてしまうほどなのです。そんな私の声を真似て電話の応対をするというイタズラが、先輩たちの間で流行ってしまってるんですよ。

 以前、社長の声真似も同様に流行したという話を書きましたよね。その後、社内の何人かの人が同様な声真似イタズラの犠牲にあうという経過を経た後、ついに私にそのおハチが回ってきてしまったというわけですな。もちろん今回の仕掛け人もやはり同じ先輩です。

 それがあっという間に社内じゅうに広まってしまいました。なかには、わざわざ得意先に電話をかけて「こんな感じかな? いや、こんな感じかな」などと、どれくらい似てるかを評価してもらっている人まで現れる始末。もう会社じゅう私だらけ状態です。いったんこういう事になったら、飽きるまでやり続ける人たちですから、私としてはただもう、ほとぼりが冷めてくれるのを待つより他にありません……。

 あー、まったくもう、変な会社。


99.07.29

 どうも、残業をしない人間=怠けてる人間、という認識がうちの職場にはあるようです。そのことが今日はっきり分かりました。

 うちの会社、定時の帰社時間は5時半ということに一応なってはいます。でもその定時通りに帰る人なんてまずいないわけで、誰しも多少なりと残業という形で仕事を続けるのが(悪しき)慣例になってます。
 そういうこと自体はまぁ、今のご時世、どの会社でもあることだとは思います。

 この日、私は7時まで残業していました。済ませるべき仕事はきっちり済ませていましたし、だらだら会社に残る理由はありません。私は帰り支度をはじめました。
 そうしたら……「もう帰るのかよー」「お帰りが早いねー」などと、嫌味たっぷりの言葉が、職場のあちこちから飛んできたのです。半分冗談めかしてですが、残り半分は本気で言ってることが明らかに分かる口調でした。
 私、ほんとに切れそうになりましたよ。私は勤務時間中はまったく手を抜かずにみっちり仕事をしているという自負がありますし、だからこそ、わざわざ残業までしなくても仕事を切り上げることができるのです。
 それなのに彼らときたら、仕事をしている時間がただ長ければ長いほどエライ、という実に単純なものの見方しかしていないのです。
 そんなこというなら、私だってもっとのんびり仕事して、仕事時間を長引かせることはいくらでもできますよ。でも、それでいいんですか? その方が「エライ」と見てくれるんですか?

 仕事大好き人間たちは勝手に仕事に没頭してて下さい。でも自分らの勝手な尺度で、仕事に対する他人の姿勢を評価しないでほしいです。少なくとも口には出さないで下さい、頼みますから。


99.07.30

 会社で残業中、出前でレバニラ炒めを頼みました。
 15分ほどで届いたそれにはしかし、レバーは入っていませんでした……。疲れてて頭の回転が鈍ってたので、しばらくそのことに気付きませんでした。やはりレバニラを頼んだ先輩のも、同じようにレバ抜きでした。レバニラ炒めレバー抜き、そりゃただの野菜炒めです。む〜。

 それを見た他の先輩が、こんな事を話してくれました。
「むかし縁日でね、タコ焼きを買ったんだよ。ところが、タコ焼きなのに中にタコが入ってないわけ。当然、タコ焼き屋のおっちゃんに抗議するよね。そしたら――」

この忙しいのに、タコなんか入れてられるかバカヤロウ!

 ――と、怒鳴られたそうです。
 逆ギレここに極まれり。いっそ清々しくもあります。……とはいえ、私が同じ被害にあったら、そりゃ怒るでしょうけど。

 ……で。そもそもなんで残業中に出前なんか頼んでるかというと……
 昨日の一件で頭に来た私は、この日は11時近くまで残業してやったのでした。どうだ、これなら文句あるめー、ワーカホリックども。ふんっ。


99.08.06

「ガキの頃なあ――」
 近所にあった、じいさんばあさんがやってたような小さな駄菓子屋。そこの菓子をしょっちゅうパクって(盗んで)たで、と、関西弁の先輩が、笑い混じりに、それでいてどこか誇らしげに話しはじめました。
「ま、今はなかなかそうもいかへんけどな」
 っておい、当たり前やろがっ。

 それを聞いていた別の先輩が、
「あ、でもおれ最近、飲み屋の代金踏み倒したよ。会計の時、いくら呼んでも店員が来ないから、もういいやって思って、店出て来ちゃった」
 先輩のその言葉に呼応して、関西弁の先輩の方も、
「あ、似たようなん、わしもあるでー。靴屋で靴買お思て、店員さんを20分くらい待ってたんやけど――」
「ウソ、そんなに待つわけないでしょ」すかさず女性社員のツッコミが入ります。
「ええツッコミやな、ウソやウソ。でもなぁ、確かに遅かってん。だからまあええやろ、これはもうパクってくれという店の意向なんやな、税金対策かなんかやと思て、遠慮なくパクらしてもろーたわ」

 どんな税金対策じゃ……そんな正当化があるかいな。


99.08.12

 この日記にもたびたび登場していた私の友人、ししょう氏。彼がついに、というか、ようやくというか、7年ほど付き合っていた彼女と結婚することになったそうです。めでたいー。
 いいかげん付き合いも長いのに一向に結婚の意志を見せようとしないししょう氏の態度からは、彼女も含め周囲の一部の友人たちからも危惧の声が上がっていたほどだったのですが、その実、しっかり考えるべきことは考えていたんですね。でも、そういうところもまた彼らしいといえば彼らしいといえるかな。

 何はともあれ、お二人には幸せになってもらいたいものです。もっともあの二人なら、私が心配する必要なんてなにもないと思いますけど。がんばってね。


99.09.28

 「恋愛は孤独の複数形」――という言葉があるそうです。
 恋愛というものの一つの側面を如実に表していて、うまいことを言ったもんだなあと感心させられました。

 いや、今の私の現状とはあまり関係のない話なのですが。ちょっと思いつきで書いてみました。

 ところで同僚のYくんよ。窮地に追い込まれそうなとき、
「大ピンチだ!」
とか言うならまだしも、

「こういう時いつも、大ピンチのテーマが流れてくる仕組みになっているんだよ!

とかわけの分からないことを言うな。爆笑してしまったではないか。何なんだよ、大ピンチのテーマ。


99.10.01

 残業も一通り片づいた深夜の10時ごろ。ふいに気が緩んだためか、どっと来るような疲労感に襲われて、ぐてっと椅子に沈みこんだ私。
 その時、机の上に置いてあったタバコに、ふと目が止まりました。
 私はふだんタバコを吸いません。むしろタバコよ滅びよとさえ思っている派の人間です。世にはびこるマナー無用のスモ−カーたちには殺意を覚えるほどです。
 だから机の上のそのタバコも当然私のものではなく、先輩がただ置きっぱなしにしていただけのものです。

 ところがそんなタバコを、どうした心境の変化か、私はそのとき無性に吸いたくなってしまったのです。

 実のところ私は、全くのタバコ未経験者というわけではありません。友人と飲んでいるときなど、もう腹いっぱいで食べ物に手を出す気がしなくなると、ツマミ代わりの口慰みに1,2本吸う時はあります。
 でも実際にはろくに吸い方さえ知らない私が、酒も入ってないというのに、この時はなぜか衝動的に喫煙欲に駆られたのです。そしてやがて、高まるその気持ちを抑えることができなくなり、
「先輩……」私は頼んでいました。「タバコ、もらってもいいですか」
 私がいつもは吸わないことを知っているその先輩はちょっと意外に感じた様子でしたが、
「ああ、ええよ」
と快く1本差し出して、火まで着けてくれました。
 そうしてもらったタバコを、私は慣れない手つきで、咳込んだりしないように恐る恐るながら一口吸い込み、そしてゆっくりと吐き出します。

 これが、実に……うまかったのです。

 どこがどううまい、と説明しろといわれたら困ってしまうのですが……くたびれ果てた体に、その一服は、まさに清涼剤のように染み渡ったのでした。
 今まで喫煙家の友人たちに、「そんなもの、何がうまいんだ」といってはばからなかった私でしたが、その時ばかりは彼らの気持ちが少しだけ分かったような――否、『分かってしまった』ような気がしました。

 結局この日はその1本だけでやめましたし、今後、恒常的に吸おうという気もありません。でも、タバコにハマるきっかけというのは案外こんなものなのかな、と思ったのでした。
 だけどこれに味をしめてタバコ中毒になったりしないように、それだけは肝に命じとくつもりです。何しろ一度ハマったら終わりだからね。

 『禁煙なんて簡単だよ。なぜなら僕はもう100回もやっているから』
 ――マーク・トウェインの言葉だそうです。


99.10.14

「――いや、むかしマックでバイトしてた時のことなんですけどね」
 私の同僚が、そう切り出しました。妙にテンションの高い口調で話すので(とは言っても彼はいつもそうだが)、ちょっと期待して聞いていると……

「ときどき、外人のお客さんが来るんです。で、その外人さんが商品の名前を言うとね、

ィーズ・ァーグァー』

とか、

ゥク!』

とかって、とにかく、めっちゃくちゃ発音イイんですよ! うわ、カッコええ〜、とか思いましたね〜」

 ってあんた、オイ。発音いいのは当たり前じゃんか、外人なんだから!
 ……なんだけど、さもそれがスゴいことのように大袈裟に目を丸くして言う彼の口ぶりがおかしくって、私は大笑いさせられちゃったのでした。ふ、不覚。

 皆さんの近所のマックはいかがでしょう。カッコイイ外人さん、来ますか? 巻き舌ですか?


99.10.15

 私の隣の席に座って仕事をしていた、同僚の女の子。この子が、三日前から会社に来ていません。
 ただ来てないだけならともかく、この状況がちょっとおかしいのです。

 まず初日である水曜日、午前中にその彼女から電話連絡がありました。いわく、体調が悪いのでちょっと遅刻するからと。
 遅刻、ということなので、私たちは当然、そのうち来るものと思って待っています。ところがいつになっても彼女は来ず、時間ばかりが過ぎてゆき、結局終業時間となっても彼女は現れませんでした。その間、なんの連絡もなしにです。
 この日は職場の人々もそう深刻に捉えることなく、まあそういうこともあるだろう、くらいにしか思ってなかったはずです。

 ところがその次の日、木曜日。この日はもういきなりなんの連絡もなく欠勤です。
 彼女がふだんから無断欠勤を頻繁にするような子かというと決してそんな事はなく、むしろ非常に真面目な働きぶりで、ほとんど皆勤賞ものといっていいほどでした。私などよりよっぽど優良社員です。その彼女が無断で会社を休むなんて、ちょっと考えられません。さすがに自宅に連絡しようということになりました。

 しかし、彼女は自宅にいないばかりか、家族ですら、その行方を知らないというのです。携帯電話も持っておらず、まったく連絡が途絶えたままになっているといいます。職場の私たちも、事の異常性を感じ始めました。

 そして三日目の今日になってもやはり、彼女は現れませんでした。
 ここに至って、私たちの頭の中では、不吉な想像が大きく膨らんできました。二日来ないということならまだあり得ることかも知れないが、三日となるとどうだろう。しかも、家族のほうにも未だに連絡がないとのこと。これは普通ではない、何か尋常ならざる事が起こったと考えるのが自然でしょう。

 とはいえ、何も情報がない以上、闇雲に気ばかり揉んでいてもどうにもならないのも事実。とにかく今は、彼女が月曜日に元気に出勤してきてくれるのを待つばかりです……。


99.10.18

 同僚の女の子は今日も来ず。もはや職場では話題にも上がらなくなってしまいました。というか、あえてその話題を避けているというほうが正しいかな。
 私としては心配が増すばかりなのですが、かといって何も行動できないのが悔しい……。

 また物理的な問題として、仕事のメンツが一人減った、ということで、社内業務に携わる個々の人間の負担もそのぶん単純に増えています。今日などは週始めということでいつもより輪をかけて忙しくて、大げさじゃなく、パニックで頭が破裂しそうになりましたよ。
 とりあえず、職場への復帰はともかくとしても、まずは消息だけでも明らかにしてほしいものです。

 今日は業務の先輩が、仏心か、「残業なしで帰っていいよ」と言って下さったので、せっかくのそのお言葉に甘えさせていただきました。いや、こんなに長い夜の自由時間を体験したのは久しぶりでしたね。


99.10.19

 件の女の子、ようやく連絡が取れました。とりあえず大事なく、両親や兄弟とともに自宅にいるとのこと。業務部のメンバーはみなホッと胸をなで下ろしました。
 頭の中だけで勝手に想像していると、つい悪いほう悪いほうに考えてしまいがちなものですが、それも杞憂に終わって、まずは一安心というところです。

 でも今日はあくまで「連絡があった」というだけで、職場には姿を見せずじまいでした。復帰はいつになることやら……。


99.10.20

 コートが欲しいとさえ思うほどひどく冷えたこの日の朝、私はこごえながら会社に向かいました。
 
 オフィスに入った私は自分のデスクに座り、いそいそと今日の業務の準備を始めます。
 その時ふと私は、自分の横に人の気配を感じました。
 振り向いた私の視線の先には、いったい何日ぶりでしょうか、渦中の女の子本人が立っていたのです。

「おおっ、久しぶりだねー! 心配したよー。大丈夫なの?」
「……うん」

 そう答えた彼女の表情はしかし、今まで見たこともないほどに暗く沈んで、まるきり精彩を欠いていました。
 その後何を訊いても、消え入りそうな声でうんとかああとか応じてくるばかりで、まったく要領を得ません。そしてちょっと目を離した隙に、彼女の姿はオフィスから消えていました。しかもよく見ると、デスク上の彼女の私物までもが全てきれいに片づけられ、持ち去られてしまっています。

「……どういうこと?」「わからないよ。でもさぁ……」業務メンバーは顔を寄せ合い、ことの成り行きについて、それぞれの推理や意見を言い合います。しかし状況的に当然のことながら、悲観的な結論しか出てきません。
 例えば先輩の考えはこんな感じでした。――彼女は以前から、ここで仕事をするということに行き詰まりを感じていた。そこへ、新システム導入の作業のため、有能な派遣社員が何人か雇われてきた。これが引き金となり、彼女はオフィス内での自分の存在意義を見失ってしまい、その結果として、今回のような行動に出たのではないか?
 それなりに説得力のある説ではありますが、やはり推論の域を出ないものです。もしかしたらもっと単純な理由かも知れないし、逆に、会社とはまったく関係ないレベルでの深い理由かも知れない。本当のところは、やはり本人以外にはわからないことかも知れません。

 姿を消したと思えた彼女は実は、会議室で上役たちと話し合っていたのでした。しかしこの話し合いも、具体的な内容こそ外部には伝わってこないものの、始業時から昼休みになるまで延々と続き、その難航ぶりを物語っていました。
 結局彼女はオフィスに再び顔を出すことなく、皆に挨拶もなしに帰ってしまったようです。

 のちに上役の人から聞いた話では、説得の甲斐あってか、彼女は明日からはちゃんと職場に復帰することになっているそうです。
 本来なら、喜ぶべきことなのでしょう。
 でも、矛盾しているようですが、彼女の復帰を素直に喜ぶことができない私もいます。
 仕事に対するやる気とか熱意とか、そういった気持ちがいったん切れてしまうと、それを取り戻すというのは大変なことです。もちろんそれは人にもよりけりですが、彼女は容易に気持ちを切り替えられる器用なタイプではないし、だからこそ今回のような事態に至ってしまったわけです。そういう前向きのベクトルのない状態で仕事を続けていくのは、結局のところ苦痛でしかないだろうし、以前以上のストレスが生まれてしまうことも十分考えられます。それは職場にとって、何より彼女自身にとって良くないことだと思うのです。

 だから辞めて欲しい、と言いたいわけではありません。貴重な戦力である彼女には、むしろぜひとも戻ってきてもらいたいというのが私の本音です。
 でも、不安なのです。今回のような事態になるまで彼女を追い込んだこの職場が、果たして彼女に合っているのか、と考えると、合ってないと言わざるを得ない。そこへ彼女を引き戻すことが、本当に彼女のためを考えたとき、良い事だとはどうしても思えないのです。

 とはいえ、働く働かないという意志の決定権をもっているのはあくまで彼女自身。当然ながらそれに対して口出しする権利は私にはありません。
 彼女が「働く」のだと決めた以上、あとは本人のやる気と頑張り次第です。願わくば、自分の能力を過小評価せず、自信を持ってやっていって欲しいものです。

 ――辛いのはみんな一緒なんだからね、いっしょに頑張ろう。
 ……こんなありきたりの言葉しか言えないけど。


99.10.21

 例の子は今日も来ませんでした。当然のように連絡なしで、です。
 ――それが彼女の答えなら、もはや何も言いますまい……。

 まあ、もっとも。
 たまたまその子が筆頭という形になってしまいましたが、実はうちの会社では今後も次々に、ベテランや実力者が辞めていく予定になってはいたのでした。
 今月末には配送センターの主任が、来月末ごろには業務のもう一人の女の子が、そして来年初頭には営業部の先輩が……という具合に、それぞれのポストに欠かせない存在であった人たちが、一人またひとりと、この会社に見切りを付けて去っていってしまうのです。

 来月から導入される新システムというやつが素人目にも欠陥だらけで、会社運営そのものがめちゃくちゃになってしまうことが容易に想像できてしまう今。私も今後の身の振り方を考えておいた方がいいかもしれません……。


99.10.22

 取引先の会社と親睦を深めるとの名目で、飲み会がありました。
 おっさんばっかりの渋い会だったので特に書くことはありませんねぇ、残念ながら。刺身がおいしかったということくらいかな。

 しかし……最近、私が初対面の人から「ガチャピンに似てる」と言われてしまうのが、どういうわけかすっかりデフォルトになってしまっているようです。だからー、似てないっつーのに〜。いや、ガチャピンの行動力は尊敬に値するものですけど、確かに。
 でもその代わりといっては何だけど、年齢を訊かれたときに「23くらいに見える」と言われたのは、ちょっと嬉しかったです。裏返せば「子供っぽく見える」って事なのかも知れないけど、この際それでもいいです。……ああ、ほんとに23だったらどんなにいいか……。


 家に帰ってきたら、中学時代の古い友人からメールが届いてました。近いうちにみんなで集まって鍋でもつつこうとのお誘いでした。
 そういえば実家の地元の友人たちとは、このところとんとご無沙汰になってしまっていた気がします。都合が合えばぜひ参加したいもんです。

 そのメールには、彼を含めた旧友たちの近況も、いろいろ書かれていました。うーん、また結婚組が増えている模様。このところほんとにラッシュという感じです。年齢的に考えればまあ当たり前なんでしょうけど。
 しかし、まるきり子供(ガキ)だった頃からの友人から『結婚』とかいう話を聞かされると、もちろん「おめでとう」という気持ちも十分あるのですが、それ以上に、何ともいえない違和感というか、奇妙な感慨を覚えますね。

 ……って、人ごとじゃないだろ、俺。


99.10.23

 夜から、SSG氏とK氏が遊びに来ました。先週書いたとおり、SSG氏が珍しく日曜日に休みを取れたからです。

 二人は以前から楽しみにしていたゲーム『パワフルプロ野球』での対戦に熱狂して大盛り上がりでした。もともと互いの実力がかなり高いレベルで拮抗している上、お気に入りのチームもSSG氏はロッテ、K氏は阪神ということで、対戦チームとしての能力的バランスも(ある意味ヒニクなことではありますが)良好。見てるだけの私もしっかり楽しめるほど、白熱した試合の連続でした。

 しかし盛り上がるのは大いに結構なのですが、この二人、夜の1時になっても2時になっても、一向にその熱が冷める気配がありません。さすがに睡魔に勝てなくなった私はひとり、毛布にくるまってお先に眠りはじめてしまいました。

 何時間経ったでしょうか。ふと目を覚ました私が、寝ぼけまなこで時計を見ると、朝の6時。さて野球組の二人はどうしたものかと見てみると……。

 なんと奴らは依然として、試合に没頭していやがったのでした。取り憑かれたかのごとくにコントローラーを握りしめボタンを叩きまくり歓声を上げて。ビョーキか、おまえらはっ!

「いやー、常に集中してプレイしてないといけないからさー」
「眠気なんて吹っ飛んじゃって、完全に目が冴えたね」

 そりゃあよっぽど面白かったんだろうけど、それにしたってねぇ。
 しかしさすがにこの時点でパワプロ大会はお開きとなり、みんなでオヤスミという事になりました。

 でもパワプロ(というか野球ゲーム全般)がまったく出来ない私としては、ちょっと疎外感を覚えたのも事実。この際、接客用と割り切って練習してみようかな。しかし、野球というもの自体にそれほど思い入れがない、という事がちょっと致命的な感じです。こういうゲームって思い入れでなんぼっていう部分も大きいですから。


99.10.26

 夜の12時近く、心身ともにボロ雑巾のようになりながら、西葛西の駅に降り立った私。
 ふらつく足取りも重く家路につく私の耳に、ふと、アコースティックギターの音色が響いてきました。
 あたりを見回してみると、薄暗いガード下に、その彼の姿はありました。どの店もとっくにシャッターを下ろした商店街の前で、名も知らぬ彼はギターの弾き語りをしていたのです。

 座り込んでギターを鳴らし歌に没頭する彼の前に、観客は一人もいません。誰もが彼の歌を聞き流し、その前を通り過ぎてゆきます。
 私も普段なら、他の人々と同様、何ら気に留めることもなくただ彼の前を歩き去っていたでしょう。でもその時は、彼の奏でる旋律と歌声とが、実に心地よく、私の耳に響いたのです。

 思わず足を止め、彼の前で、たった一人の観客として弾き語りに聴き入りました。切なげな、私好みのバラードでした。
 真剣な表情で、私の存在など気づいてないような彼でしたが、曲の終わりに拍手をしたら、顔をくしゃくしゃにして喜んでくれました。

 しばらくの間そのミニコンサートを満喫したあと、家に帰りました。歩調も心なしか軽くなっていたようです。ちょっと得をした気分の夜でした。


99.10.27

 久しぶりに8時頃に帰ってきました。こんなに早い時間に帰れるのも最近では珍しいことです。
 そうしたら不思議なことに、その雰囲気をどうやってか感じ取ったらしく、いろんな人から次々に電話がかかってきました。ふだんはそんなに電話なんてかかってくるわけじゃないのに。そのタイミングの良さにびっくりです。

 最初は妹一号機から。ホームページの作り方についていろいろ聞かれました。どうやら奴のサイトは着々と完成に向かっている様子です。

「ねえ、今度うちに来て、いろいろ教えてよ。次の休みとか、うちに来れない? もうすぐブス二人がいなくなるし」

 このブス二人、というのが誰を指すかといえば……自分の母親と妹のことです。実は近々、アメリカに住む親戚の所へ、2週間ばかり旅立つことになっているのです。
 それにしても、今どき20歳過ぎた娘が、人のこと面と向かって『ブス』とか言うかいな、普通。身もフタもなさすぎるぞ。小学生じゃあるまいし……まったくもう。

 その次、今度はC氏。よもやま話。
 C氏は、私が酷評した『オースティンパワーズ』のファンだそうな。
「いいじゃん、あれはね、あの“寒さ”そのものを笑う映画なんだよ」
 まぁその言いぶんは分からなくもないが……いかんせん、わしには笑いを通り越して、怒りを覚えるほど寒かったものでのう……。

 最後は幼なじみのいとこから。近いうち飲もう、とのお誘いでした。あと、お互いの近況など。
「うちの会社、ひどいぜ〜。だってさあ今だに、『やってみそ』だの、『〜してちょんまげ』だの、『ゲロゲロ〜』だのって平気で言う上司がいるんだぜ。死ぬよ」
 この上司は実在します……私の会社に。


99.10.30

 納得できない。できるわけがない。

「ため息の分だけ、幸せが逃げていく」「頑張るのをやめたら、そこで負けだ」
 そう言って、私をいつも励まして、力をくれたのは誰だった? 他でもない、君だったはずだ。なのに……。

 私より先に行ってしまうなんて。ろくなお礼をさせる余地も与えず、勝手に行ってしまうなんて。
 そんなの、納得できるわけがないだろう……。


99.11.04

 いつぞやの日記に書いた、“発音のいい外人さん”は、しそ氏がバイトとして働くマックにもやはり来襲していたようです。

「あー、来るね、ヤツら。ビッグマックを『ビッ・メァーック』とか平気で言うよ、カッコよく。発音良すぎて聞き取れない時とかあるもん」

 そうかー、全国どこででも発音いいんだなあ、外人さんというのは。

「でもさ、そういう、海外にもあるメニューならまだしも、日本にしかないメニューまでカッコよく言いやがるんだよね、あいつら。『ベィコン・メァック・ブァーグァー』とか。……そんなとき俺は、
ないのに!
って思うんだけどね」

 そんな力入れて思わんでも。――ま、ないんだろうけど。

 それにしても、“スマイル¥0”を掲げ、常に笑顔でマシーンのように働いているかのように見えるマックマン&レディたちも、心の内ではいろんなこと考えてるようです。何しろ、

「スマイル¥0どころじゃないよ。うちの店じゃあ、バイトたちに、『おまえら服脱げ!』とか叫んでる社員までいるもん。何かと思ったら、“ヌード¥0”だって。全員、裸で接客するの」
「それって……意味は?」

ない!

 いちおう全国の善良なるマックの名誉のために付け加えておきますが、彼の店は特におかしい店、だそうです。彼のお店だけ特別なんですね。なるほど。


99.11.08

 事件は現場で起こってるんじゃない、会議室で起こってるんだ!

 というわけで(何がだ)、相も変わらず、今日の会議も不毛なものだったのでした。
 何らかの形で解決の見込みがあるならまだしも、まるで解決の糸口がないということが始めから分かってしまっている議題について話し合うのは、実にムナシイことです。上役の、要約すれば
とにかくなんとかしてくれ
 に終始する言い訳をえんえん聞かされ続けるだけで、結局なーんも発展性がないんだからなー。

 この際、ちょっとクーデターでも起こして、新会社をぶち建てるとしますか。
 社名は『株式会社オレサマ』か『オレサマ屋』か、そこらへんがいいです。とにかく事務の女子社員が電話に出るとき、
「はい、オレサマでございます」
 とかなるのがグー。
 で業務内容は、こないだ女友達が提案していたのを採用するとしましょう。すなわち、まず出社するなり、好きな映画のビデオを2本ほど鑑賞。昼ご飯の後は読書などしつつ優雅にオヤツもしっかり食べて、夕方になったら映画館へとくり出す。そしてそのまま直帰。こんな感じ。ちなみに週休4日です。素晴らしいではありませんか。

 このプランをK氏に話したなら、
「それ、今の俺だよ」
 と言われました。「ちなみにその生活は、一銭もお金になりません」とも。それじゃ致命的じゃないか!
 ……夢の会社作りは、なかなか前途多難のようですなぁ。いいプランなのに。

 でもいつかは! と思ってるんですよ。(←思うな)


99.11.11

 会社帰り、夕食のおかずを求めて某大手スーパーの食品コーナーを物色していた時のこと。
 閉店間際のこの時間帯、たいていの売れ残り商品は半額になっています。そんな中、いっけん串カツの詰め合わせのように見えるもののパックが私の目を引きました。
 半額で150円という安さもさることながら、それ以上に奇異に映ったのが、そのラベルです。そこには、こう書かれていたのです。

「商品名:フライ

 ……え? いや、あの、確かにフライなのは一目瞭然なのですが……普通こういうのって、何のフライか、というのを明記するものじゃないか?
 見ただけでは中身が何かが分からないだけに、そのシンプルすぎるネーミングには、なんともシュールな雰囲気すら感じられました。得体の知れない缶にただ『ジュース』とだけ書いてある、というのに近いものがあります。

 私は好奇心を抑えきれず、近くにいた店員さんに訊いてみてしまいました。
「あの、これ、『フライ』って書いてありますけど……何のフライですか?」
「ああ……それ、豚肉のフライですよ」

 豚肉のフライ……ということは、結局、串カツじゃないか! なんだよー、まったくもう、じゃあ初めからそう書けばいいのに〜。真実というのは、知ってしまえば得てして案外あっけないものですなぁ。
 しかし、けっこうな大きさの串カツが3本入って、それで150円なら安い買い物と言えましょう。うむ、おかず決定〜、とばかりに、私はそのパックを買い物カゴに放り込みました。
 で、家に帰り、さっそくその串カツとやらを食べてみたのです。

 そしたらそれが実は、魚と野菜のフライだったのでした……。
 いや、ラベルの表示には間違いはないよ、ないけども……。くう〜、あなどりがたし、ジャ○コ!


99.11.26

 上司と怒鳴り合いの大ゲンカをしました。さすがにキレました、今日は。
 私はあくまで下っ端の会社員ですから、上司の命令とあれば、それが会社にとってプラスになることなら、理不尽に思えることでも何とかこなしてみせる意志はあります。今までは現にそうしてきました。
 でも、法に触れることだと分かっていて、それを強制するような命令に、おいそれと従うわけにはいきません。

 具体的には、積載量完全オーバーの貨物を、運送会社に無理矢理運ばせようとしたわけです。法律を破ることはすなわち犯罪ですから、言ってしまえば犯罪者の片棒を担ぐのと同じ事です。そんな事は私にはできませんよ、いくらなんでも。まして、何かあったときに被害を被るのはうちの会社じゃなく、その運送会社なんですから。

 それでも一応は、運送会社に交渉はしてみましたよ。でも、
「ドライバーに規制違反を強いることはできませんので……」
と断られてしまっては、それが全くの正論であるだけに、こちらとしては引き下がるほかありません。
 やむなく「やはり無理です」と報告した私に対して、その上司はこう言い放ちました。

「それを何とかするのがオマエの仕事だろが、このアホ!」

 ……あのなあ、おい!
 というわけで、ここに至ってさすがの私もガマンの限界を超え、冒頭に書いたような結果となったわけです。

 この上司は以前から、周囲の事情を省みない、独りよがりで力押しのやり方ばかりが目立ち、特に業務の面々からはひどく反感を買っていました。私も例外ではなく、今回の衝突も、今まで積もりつもったマイナス感情がついに爆発した結果とも言えます。

 そりゃあ営業という仕事には多少の強引さも必要でしょう。でもそれがいつしか単なる「横暴さ」でしかなくなってしまってることに気付かないようじゃあ……営業マンとして以前に、人として終わってます。


99.11.29

『――弱音は吐いてもいいと思う。何をやっているかだよ。頑張ってる人は弱音はいいよ。愚痴はだめだよ。美しくないから』

 今日、携帯に届いたメールです。
 思わず、じぃんとしてしまいました。

 何気ないシンプルな言葉が、今はかえって胸に響きます。……ありがとう。頑張るよ。


99.12.01

 何やら最近、凄まじい忙しさらしいC氏。話を聞くと、その殺人的なスケジュールに驚かされます。

「何日か前なんか、朝の9時から働き始めて、終わったのなんて7時だったからね」
「……? わりと普通じゃない、それ」

「違うよ、朝の7時に終わったんだってば」

「げっ、朝のぉ?! ……おいおい、ホントかよ〜……22時間労働か〜?!」
「そうだよ。それで家に帰ってきて2,3時間寝て、また仕事だからねー。このところ、ずっとそんな感じだよ」
「……きっついなあ……。そりゃ倒れて入院もするよ、あんた……」
「そう、だからね、こないだの入院は心配いらないんだよ。『こういう生活をしてれば、人間、いつかは当然倒れる』というその通りに倒れただけの話だから」

 ……そういう問題じゃない気がするのだが。はあ……。


99.12.8

 実家で夕食をいただいてるとき、妹一号機がまた変な事を言い出しました。

「しょっぱいおかずってご飯がすすむよねー」
「うん」
「……ね、『あましょっぱ』って知ってる?」
「え? 何だそりゃ、甘くてしょっぱい? ……いや、知らないけど」

「知らないの? 『チョコレートとポテトチップを交互に食べること』だよ」(←断定口調で)

「……は、はあ……。いや、確かにその組み合わせはうまいよ。うまいけどさぁ、『あましょっぱ』とかって……」
「言うよ、友達とかとお菓子買うとき。『あましょっぱする?』とかって。だって、甘いものばっかり買ったってしょうがないじゃん」

 で、『あましょっぱ』かいな。……これ、最近の若者の間ではグローバルスタンダードな言葉なのですか? すみませんワタシ、若者情報にはとんと疎いもので……若い読者の皆さん、教えて下さいませ。


99.12.19

 この日、K氏から聞いたお話。

 彼は今、保健所でボランティアとして働いてるんですが、そこで先日、年末のパーティーがあったそうな。
 しかし何しろ低予算の忘年会ですから、とにかく何もかもがチープ。昼間のパーティーで、メインディッシュがサンドイッチ……という有様です。――ただまあ、ごく僅かな予算をやりくりしてやっているわけですから、あえてそのあたりを責めたりはしますまい。

 しかし、ここでミニゲームとしておこなわれたビンゴ。実はこれが曲者だったのです。その内容にはさすがのK氏も、首をひねらずにいられなかったらしいです。
 まず、ビンゴの用紙からして手書きです。しかも線はフリーハンドで、マス目の大きさがてんでバラバラ。別に一枚一枚手書きしてるわけじゃなく、もともとそういう状態のものをコピーしているのです。

「おかげでさ、ナナメのラインがすげーチェックしにくいんだよ〜」

 K氏よ、そういうレベルの問題ぢゃないと思うぞ、それは。
 もう予算うんぬんとは関係なく、単純に企画者のやる気あるなしの問題ですよね。線引くのに定規使うくらい、大した手間でも何でもないんですから。

 そして、ビンゴゲーム後の賞品です。これがまたすごい。何しろその内容の内訳が、こうです。

 ・タマネギ 1個
 ・かつお節 1パック
 ・キャンディ包みしたおせんべい 2個
 ・ポケットティッシュ 1個

 ――以上。

 ……この何の脈絡も一貫性も感じられないアイテムたちのセレクト基準も大いに謎ですけど、それより何より、

「ポケットティッシュだけはさー、“賞品”にするなよ……って感じだよな〜……」
「うん、財産価値、かなり低いからなぁ、今の日本じゃ。何しろ駅前ならタダのものだし」
「むしろ入れとかない方がいい、とか思うもん、これ」

 ちなみにゲームが一通り終わった後でK氏がこっそり訊いてみたら、実は、一位でもビリでも『賞品は同じ』だったそうです。

 ……年末、日本各地で謎のイベントが行われている様子です……。(笑)


99.12.31

 あと1時間もせずに今年も終わり。西暦が2000年という大台に乗る瞬間をリアルタイムで過ごす、というのはなんだか不思議な気分です。ちょっと前まで、SFの中だけの世界に思えていたんですけどね、2000年。
 1999年に起こるはずだった色々なとんでもない事(世界が滅びたりとか)、結局何も起きませんでしたね。ちょっとだけ期待もしてたんだけども。


 さて、この一年を振り返ってみると……

 今年ほど、「孤独」というものの辛さを身に染みて味わった年は、かつてなかったように思います。
 いったん心に空いてしまった穴を埋めるために、とにかく考えなしにデタラメな事を繰り返してばかりいました。そしてそのたびに周囲の人を誰かしら巻き込んで不愉快な思いをさせ、自分自身の傷をもかえって広げてしまうという、最低の悪循環。この無限ループにひたすらはまり込んで、もう何もかも投げ出してしまいたいと思ったことは、一度や二度ではありません。

 でも、いよいよどうにもならないと思いかけた時、救いの手を差し伸べてくれたのは、やはり友人たちでした。孤独の辛さを知る、ということは、同時に、孤独でない時の嬉しさ暖かさを知る、ということでもありました。
 ここでまた改めて感謝の気持ちを述べるのは、いかにも取って付けたようで陳腐な気がしてならないのですが、でも言わずにはいられません。――ほんとにありがとう、みんな。

 2000年という年は、私にとって大きな転機の年になる予感があります。いえ、そうなるよう頑張らなければなりません。どんなカタチでもいい、沈みきってしまった心の浮上のきっかけとなるものを、何か一つでも掴めれば、そう思っています。

 願わくは、これから迎える新しい年が、私にとって、そして何より皆さんにとって、幸多き素晴らしい年でありますように。


 ……それでは、おやすみなさい。



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