Text - Diary - Past - 2000 Selected the 1st Half


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00.01.13

 この日、ししょう氏が結婚式を迎えました。おめでとう!

 私は仕事があったので結婚式そのものに参列はできなかったのですが、夜からの結婚パーティーには何とか間に合うことができました。
 ついにししょう氏の妻となった彼女さんはシンプルで清楚なウェディングドレス姿で、さすがにお姫様のように綺麗でしたよ。表情もいきいきしていて、幸せムードを発散しまくっていました。
 一方のししょう氏は、緊張していたのか照れていたのか、終始言葉少なでした。いつもは常に悠然と構えている雰囲気の彼があんなふうになっているのを見るのは珍しいことで、私にはそれがかえってほほえましいというか、可笑しくてたまりませんでした。

 パーティーはビンゴゲームなどを絡めながら和やかな雰囲気で進み、最後はお約束、新婚さんのキスで締め。この時もししょう氏は大照れで、軽く済まそうとする彼の態度にブーイングが巻き起こり、みんなが納得するまで、結局数度に渡ってキスを繰り返させてしまいました。みんないぢわるなんだからなぁ、まったく。まあ、もちろん私もですが。
 でもほんと、暖かくてハッピーな雰囲気に満ちた、アットホームな楽しいパーティでしたよ。やっぱり幸せだよな〜、衆目の眼前でキスして拍手されちゃう場なんて、他にはそうそうないでしょうし、いいよな〜……などと私は、顔も心も暖かくなりつつ思っていたのでした。

 ところが、私がそんな風に思ってるその一方、パーティー後の談話で、
「あんな恥ずかしい思いするくらいなら、結婚しない方がマシ
 という極論めいた某氏の感想に、
「うん、あれは俺には真似できないな、って思ったよ」
 と某氏が受けたりもしてました。

 まあもちろん、二人とも冗談めかして言ってるのですが、さらしものなのは間違いないからねー、そういう言い分も理解はできます。もともと日本人気質には合わないことなのかも知れないし。
 でもああいう、人生たった一日のハレの場だからこそ許されるノリとして、許容していいと私は思うんですよね。一種の通過儀礼というか洗礼みたいなもので。

 でも実際に私があの立場になったら(いつになるか見当もつかないけど)、……やっぱり腰が引けちゃう、かな?


00.01.18

 仕事のあと会社の近くのラーメン屋で食べたチャーハンが、思わず舌を疑うほどマズく、びっくりしてしまいました。
 別にマズいのは構わないけど、そういうことはちゃんとメニューに書いておいてもらわないと困ります。『コックのおすすめ度・五点』みたいな感じで。あのチャーハンは十点満点で採点すれば二点くらいでしょう、悪いけど。

 いや実際そういう親切な定食屋が、環七沿いの某所にあるらしいのですな。聞いた話ですが、ある人がその定食屋でチキンカツ定食を頼んだところ、

まずいけど、いい?

と、店主に聞き返されたそうです。そういう毅然としたところがあってもいいですよね。もっとも、そう言われてしまうと、かえって食べてみたくなるのも人情ってものかも知れませんが。


00.01.29

 ビデオを観ている途中、電話が鳴りました。
 受話器を取ると、だしぬけに、

どうもー!!!

 耳元で響いたのは、変なダミ声の絶叫です。……どう思います、これ。
 こんなことする奴はすぐ見当がつきます。というか一人しかいません。

「あの……しそさん。何かあったんですか?」
こん、ばん、は――!!

 私は、久しぶりに聞くしそ氏の声が、以前と変わらぬノリであったことに感激を覚え、ふと涙ぐみそうになりました。

 そんなしそ氏と電話で話すこと、二時間以上。主たる話題は、私たちがいつか観たいと夢みている、『最強位決定戦(仮題)』というひたすら熱いバカ映画の企画についてです。

「まず、シュワルツェネッガーとスタローンとブルース・ウィリスとスティーブン・セガールが闘うんだよ」
「シュワちゃんは始めから玄田哲章の吹き替えなんだよね。で、ウィリスは血まみれで傷だらけになっても、セガールは無傷で涼しい顔してる」
「その闘いを観て、ジム・キャリーとウィル・スミスが、ただ驚くだけの役で出てくんの。吹き替えは両方とも山寺宏一で、やつは他にも何役もやってるけど、言われるまで誰も気付かない」
「監督はローランド・エメリッヒで、音楽はハンス・ジマー。なのに、特撮は樋口真嗣」
「ガメラも出てくるんだな、当然。ジム・キャリーとウィル・スミスは、出てきた瞬間、踏みつぶされる」」
「そうやってみんながさんざん闘って、ボロボロになって力尽きた頃、いきなりピアース・ブロスナンがスマートに出てきて、オイシイとこ全部、かっさらって行っちゃう」
「でもそれをさらにショーン・コネリーが持ってっちゃうんだね、『これが年の功というヤツかな』とか何とか、渋いセリフ吐いて」
「最後はコネリーがドラゴンに変身して、ガメラをやっつけてエンド」
「で、脚本はスタパ斉藤
「シュワちゃんが『ズギャァ!』とか『〜なのか〜ッ?!』とか言うのか……」

 ……ちゅ、中学生レベル……。真性のバカモノですね。言い訳しません、ええ。


00.02.26

 作業療法士という資格を目指し、その専門学校へ入学するため、ちょうどその受験シーズン真っ盛りを迎えているK氏。この日も彼は、公立の某校へと、面接試験を受けに向かいました。

 形式は集団面接。とはいっても、複数の受験生が同時に試験官との質疑応答をする、といったタイプではなく、一つの議題について受験生数人で論じ合うという、いわばディスカッション形式のものだったそうです。
 K氏たちのグループに与えられたテーマは『環境保全について』。実にあたりさわりのない議題といえましょう。結論を出すのが目的の議論ではないので、それももっともですが。

 ところでこういったディスカッションでは、自分の論旨を的確に要領よく話す能力が見られるのはもちろんですが、いかに相手の話をよく聞いて理解できるか、といった点も採点の重要なポイントになります。もちろん受験生はみなこの事を知っているのですが、しかし『“聞いている”ということをアピールする』というのは意外に難しい。どうかするとオーバーリアクションになってしまいがちです。

 そして実際、K氏のグループでは、そういう現象が起きていたそうなのですな。しかも、かなりどうでもいい話題に対して。例えば……

「水を守るために、下水に油を流したりしない、というのはよく言われる心がけですよね」
 うんうんと頷く参加者たち。まあ、ここまではいいでしょう。問題はこの次です。

「――でも私はさらに、ラーメンやうどんの汁なども流さないようにしてるんですよ!」

 通常の会話なら「ふぅん、そう」くらいの相づちで終わってしまいそうなこの発言。しかし、この特殊な場ではそうはなりません。参加者ほぼ全員が大きく首を縦に振り、

はぁあ〜、なるほどぉ!
そうですか〜、ラーメンの汁! それは盲点でしたね〜!
いや〜、わたしも今度から気を付けるようにしますよ!

 などなど、演技ギリギリのオーバーな賛同の声が、口々に言われるのです。
 K氏も表面ではそれなりに同調の意を示しつつも、
(いくらなんでも、感心しすぎだろう……)
 と、心の中で静かに突っ込んでいたそうです。ま、無理もないですな。

 さて、論議が熱を帯びてくると、聞く方だけでなく、話す方もその内容がだんだんとオーバーになってゆきます。アピールしたい精神がそうさせるのでしょうが、しかしそれもここに極まれり、といった発言が、まだ二十歳前後とおぼしき女の子から飛び出してしまったのです。
 その前フリとして、議論の流れはまず、
「環境汚染といっても、なかなかそれを実感できる場って少ないですよね」
 という発言に端を発したものとなっていました。そこで、
「そんなことありませんよ!」と、件の女の子の、この発言。

「うちの家の前の道路では、酸性雨が降ると、アスファルトが溶けるんです! ジュージューって!

(バカなぁー!)心の中で叫ぶK氏、いつもの口調で。酸性雨、強えぇー! とか思ったそうです。確かに……。硫酸でも降ってきてるのか、その地域では。

 でもそんな発言に対しても、やはり我が意を得たりとばかりに頷きまくる人たちがいたそうです。
「それがおかしくってさー……。俺、心ん中で、ひとりで大ウケしてたよ」
 だろうなぁ。私もその場にいたら、不謹慎ながら、思わず吹き出しちゃってたかも知れないなー。うーん、私もその場に立ち合ってみたかったぜ。楽しめてよかったね、K氏。

 ……あれ? ところでK氏は、何を発言したんだ……?


00.02.29

 今日の教訓:

 財布をどこかに落とした! と思ったら……埃まみれで床を探し回ったり、大慌てでクレジットカードを止めたり、頭を抱えて落ち込んだりする前に――――

 まず、コートのポケットを調べてみよう。思いがけず見つかったりするかも知れないぞ。

 会社の人間全員をちょっとした騒ぎに巻き込んだあげく、あっけないオチで失笑とブーイングを買いまくったYくんよ。しばらくはこのネタで遊んでもらえるねえ、ふっふっふ。


00.03.01

 うちの会社には、その気性の激しさと粗暴なふるまいから、『台風』とか『嵐』とかと呼称されている部長様がいます。もちろんこの何のひねりもないコードネームは彼には内緒ですが。

 この部長、とにかく「超」が3つか4つ付くほどの猛烈な仕事人間。その立派な体躯に充分見あったバイタリティの持ち主で、部長となった今でも最前線の営業として、誰よりも朝早くから夜遅くまで客先を駆け回り、基本的にほとんどオフィスにはいません。

 しかしいったんデスクに座ると大変です。会社じゅうに響き渡るような大音声の怒鳴り声で、たえず電話で交渉しまくり、部下に命令しまくります。そして少しでも意にそわないことがあると、このバカ、アホウ、などといった言葉が脊髄反射で飛び出し、相手が誰であれ構わず罵倒しまくるのです。その理不尽なまでの迫力たるや、社長を含めた会社の人間全てを、有無を言わさず従わせるほどです。

 こんな彼ですから、当然のように社内では煙たがられています。特に私のようにデスクワーク中心の人間からすれば、出ていったまま帰ってこないで欲しいと思わずにはいられない存在といえましょう。

 しかしそんな淡い期待に反して、今日も彼は大股歩きでドスドスとオフィスを横切り、デスクに戻ってきてしまいました。
(また嵐が来たよ)
 そんな無言のささやきが、職場の人々の目と目で交わされます。

 ところが。
 今日はいつもと様子が違ったのです。
 彼の口調や素振りは、なぜだかいつになく優しく、当たりの柔らかいものでした。普段ならば怒号の1つや2つ飛んできそうな場面になっても、あくまで穏やかに、軽い冗談さえ交えつつ、仕事を進めてゆくのです。電話先の相手とやり取りするのは罵声ではなく、弾けるような笑い声です。

 鬼神のごとき彼の姿の方を見慣れてしまっている私たちにとっては、その優しさがかえって不気味にすら思えるほどでした。みんな口には出さずとも、その異変に対する疑問符が、職場のあちこちに漂ってるのがわかります。
 しまいには彼、いつもなら話しかけて来もしない私にまで、満面の笑顔とともに歩み寄ってきて、

「おっ、どうした、今日はずいぶんサワヤカな色のスーツ着てるじゃないか!」

 などと、私の肩をバシバシ叩きます。痛いのです。いや、どうしたもこうしたも、私、一年中同じようなスーツ着てるんですけど。
 この急激な気候の変化に、もともとアドリブに弱い私が対応できるわけがありません。はぁ、とか、ええまぁ、などと曖昧な返事をしているうちに、

「春らしいなぁ、わはははは!」

 彼はひとり合点して勝手に悦に入り、来たときと同じように大股で、まさに嵐のようにオフィスを去って行ったのでした。
 残されたのは、唖然とした表情で顔を見合わせる職場の人々。
 ――いったい、彼に何があったのだろう……。その疑問に答えられる者など、いるわけもありませんでした。結局、謎は解かれぬまま。
 春の訪れというのはこんなふうにしてやってくるものなんですかねえ。また適当なこと言ってますが。


 それにしても、ついこないだ年が明けたばかりだと思っていたのに、もう3月だなんて、何だか騙されているような気分です。こんな調子で日々が過ぎていったら、2001年なんてあっという間だぞ。2月は特に早かった気がするし。他の月より数日ほど。


00.03.03

 藤原紀香というのはなんともビミョウな顔立ちの人だと思います。確かに整ってはいるけど、それでいてどこか垢抜けない野暮ったさをも感じてしまうような、そんなルックスですな。ギリギリです。とりあえず私にとってはまったく興味の外にある存在ではあります。

 そんな彼女を、Yくんが職場に連れてきました。

 まあもちろん本物ではなく、J−Phone広告用の等身大ポップを、ですが。とはいえ、それでもかなりなインパクトです。どういうツテだか知らないけど、得意先で貰って、そのまま営業車に積んで持って帰ってきたそうな。うーむ。

 でも、貰ってきたはいいけど、これをどうやって持ち帰る気なのだろう……。まさか藤原紀香を小わきに抱えて電車に乗るわけにもいかないだろうしなあ、ぜひやってみてほしいとこだけど。2,000円あげるからやってみて、って頼んだら丁重に断られました。いいじゃん、ファンだろキミは〜。

 というわけで今のところ彼女は、彼の机の横に立ったままでいます。場所柄もわきまえず、ケータイを構えて満面の営業スマイルで。そのうち飽きられたら、マジックでヒゲ書かれたり、目に画鋲刺されたりする運命だとゆーのに。
 そのこと自体もじゅうぶん異常だけど、それを許容してしまうウチの職場というのも、やっぱどっかオカシイのではないか。


00.03.09

 1週間前、鬼部長がいやに上機嫌だった日がありましたが、今日は、その時とは別の部長の機嫌が良かったようです。

 なにしろ、何の脈絡もなく仕事中にアイスクリーム買ってきて、みんなにふるまってくれたのですから。……今までそんな事してくれたこと、一度もないのに。いや、社員と仕事以外のことでまともに口をきいたことすら、ほとんどない人だというのに!

 私はアイスを食べつつも、心中は決して穏やかではありませんでした。
 ……何かあるのか、うちの会社? 気持ち悪いよう……。


00.03.30

「ね、聞いて聞いて。お金、拾っちゃったんだ〜」
 同僚の女の子Kさんが、ほくほく顔で報告してきました。喜色満面です。
「しかも1,000円だよ〜。おっきいでしょう!」
 確かに大きい。そこで私はやっかみ半分、わざとジト目で言ってやりました。「……で、ケーサツには届けるんだよね〜? もちろん」
「うっ、そ、それは〜……」おっ、困ってる困ってる。「で、でも、珍しいよねっ、お金拾うことなんて、今どき」
 ゴマカシで来たか……ま、いいだろ。(←何サマだよ)

 しかしそう言われてみれば、お金を拾うなんてこと、例えビタ一文にせよ、もう10年以上も経験してない気がします。みんなガードが固くなったのか、それとも拾う競争率が昔より上がったってことなのか。
 いろいろ考えたんですけど、たぶん一番の要因は、オトナになって体が大きくなり、物理的な視点が高くなって、地面をあまり見なくなったってことにあるんじゃないかな。だから何かが落ちていても気付きにくい。この点コドモは背が低い分、有利なはずだよね。少年時代のほうがお金をよく拾った感じがするのは、そのせいのような気がする。

 そんなどーでもいいことを考えていたら、この話を横で聞いていたUくんが、口を挟んできました。
「僕なんか、落ちてるお金見付けるために、下向いて歩き続けたことありますよ、1週間も!」
 何だか誇らしげです。でもKさんは素直に感心したらしくて、
「へー、すごーい。でもなんで1週間でやめちゃったの? もっとやってみればよかったのに」
「いや、だって……1週間かかって、合計で250円くらいしか儲からなかったんですよ。で、これは効率悪すぎる〜、と思って」

 うーむ、250円じゃあなあ……。というより、私に言わせれば、1週間頑張っただけでもじゅうぶんスゴイと思うんだけど。はー、楽じゃないね、お金を稼ぐのも(手段がそもそも間違ってる、という指摘はここではタブーなり)。


00.05.30

 よくインスタント食品などに、『牛乳何本分のカルシウム配合』だの、『レモン何個分のビタミンC配合』だのと書かれているのがありますね。

 普通なら「ほー、そんなにたくさん栄養素が入っているのか……」と感心したりするところなのかも知れませんが、私はあの手の表記を見るたびにどうも、全く逆のことを考えてしまうんです。すなわち、牛乳はカルシウムの、レモンはビタミンCの代名詞的扱われ方をしていますが、実際に含まれているそれらの栄養素は、実はそれほどでもないんじゃないか、と。イメージとしてわかりやすいために担ぎ上げられているというだけの話で。

 いや、本当のところはどうなのか、具体的に確かめたわけじゃありませんけどね。でも例えば、コーンフレークの箱の裏に書いてある栄養成分グラフ、あれなどを見ると、どーも眉に唾付けたくなる気持ちが抑えられなくなりまして。だってねえ、一般的な日本の朝食(ごはん・みそ汁・魚・卵・ノリ)などより、フレークに牛乳かけただけものののほうがバランスがいいなんて、にわかに納得できるもんじゃないでしょ。

 こんな疑り深い私でも、それ聞くと反射的に騙されてしまうフレーズがあったりします。

 それは『たっぷり』という言葉です。

 「お肉たっぷり!」とか「季節のお野菜がたっぷり!」なんていうキャッチコピーを聞くと、もうそれだけでダメ。コロッといってしまいます。たいていの場合は「たっぷり」だなんて嘘っぱちなのがほとんどなのだけど……でもつい、かすかな希望に身を委ねてしまいたくなってしまうんですよ。ほら、語感が良すぎるじゃないですか、たっぷりですよ、たっぷり。ねえ。

 こと私に対しては禁句とも呼べるこの『たっぷり』。使用にあたっては、くれぐれも細心の注意を払うようお願いいたします。(←だから、誰に言ってるんだよ)


00.05.31

 ちょっとした用事があって、以前に勤めていた職場に電話をかけてみたのです。出てくれたのは、一緒に働いていた時から気の合ってた同僚の女の子でした。私が名乗るや、開口一番、

「おー、お久しぶりでござるなー」

 どうやら私のことをまだ覚えていてはくれたようです。しかし……『ござる』っつーのはなんなのだろう。確かに封建的な雰囲気の職場ではあったけど、事態はもうそこまで進んでいたのか? とりあえず私は聞いてみました。

「えーと、どう? 相変わらずそっちの職場は忙しいって聞いてるけど」
「そうねえ……まったく、ご殺人的スケジュールでござるよ、ふふ」
「……。なんなんだよ、その“ご殺人的”っていうのは。どういう日本語だよいったい」
「やー、要するに“死にそう”ってことですな〜」

 なるほど、大変なのは以前通りといったところなんだな……。
 ともかく、この人の風変わりな言語感覚は健在なようで、それだけで私は……ホッとしてしまいました。だってこういうノリ大好きなんだもん、仕方あんめえ。


00.06.01

 「祝日が1日もない」ということで、かの野比のび太くんにも酷評されていた6月がやってきてしまいました。
 この際どんな口実でもいいから作ってくれないですかねー、祝日。『梅雨の日』でも『初夏の日』でも、5月の『国民の休日』に対抗して『心の休日』でも、いっそ『6月な日』でもいいですから。それを公約に掲げる政治家さんがいたら、私は文句なく投票させていただくところなのですが。


 そんな6月初日の今日、バス代を浮かすためにわざわざ自転車を使って、新小岩あたりまで行ってきました(……とはいえまったくの一本道ですから、実際にはそう大袈裟なものじゃないんですけど)。
 目的地は区役所です。ちょっとした手続きのためにやってきたのですが、ここで私は、思わぬ事態に感激させられることになってしまったのでした。

 それは、その事務処理の速さに、だったのです。

 手続き自体は簡単なこととはいえ、いわゆるお役所仕事。どーせ30分は平気で待たされるんだろうとタカをくくっていたところ、なんとたった5分かそこらで全てが終了してしまったのです。もともと私が勝手に思い込んでいただけの事なんですけど、これは驚きでした。病院ではしょっちゅう2時間待ちなどを経験させられている私ですから、なおさらです。区役所員さん、変な過小評価してて、ゴメンナサイでした。


00.06.07

 珍しく、妹一号機から電話がかかってきました。何かと思えば、悩みの相談だったのです。いわく、

親父が最近、太り過ぎて困るんだよ

 ……と。んなこと俺に言われても、こっちこそ困ってしまうのですが。
 でも確かに、父の最近の肥満ぶりは、私もちょっと気になっていたことではあったのでした。

「そうだな……俺なんかたまにしか会わないから、毎日見ているおまえたちよりも、変化がよけい如実にわかるよ。会うたび確実に『太ったな〜』って思うくらい」
「もう、スゴイよ」一号機は鼻息荒く言いつのってきます。「だって、次の日になったら、もう太ってるもん

 そんな人間はいないよ、いくらなんでも。

「まあ、俺じゃあどうにもできないから、おまえらが注意してやるしかないよ、食い過ぎるなって」
「言ってるよ! でもあいつ、全然聞かないんだもん〜」
 憮然として、なおもぶつくさ言ってましたが、致し方あるめえ。

「――で、次はいつ(実家に)来るの?」
 一号機が訊いてきました。
「いや、別に行く理由もないし、当分行かないと思うけど」

「じゃ、一生来ないの?

 ……コイツの思考の飛躍っぷりは、やはり天性のもののようです……。


00.06.09

 K氏・ししょう氏と共に、西船橋で飲んでました。
 これは、そんな中で出たお話のひとつ。

 K氏が通ってる学校に、解剖学担当の先生がいるそうです。この先生の授業が、生徒の間で今、かなり評判になってるらしいんですね。

「何しろ、とんでもなく眠くなるんだよ」

 K氏は言います。とにかく、聴講している生徒のうち3分の2は寝ているという状況だそうですから、相当なものです。
 理由としてはまず、板書をしないので、聴講生としてはただ一方的に聴いているしかない、これが第一の理由。
 さらに、これが二時限連続である上に、そもそも生徒が本来学びたいと思ってる知識とは外れた横道的な内容のため、どうにも身が入らない。普通の大学でいう、一般教養の授業みたいなもんです。

 かといって、この先生のしゃべり方に問題があるわけではありません。よく、ボソボソとした話し方で眠気を誘う先生がいますが、この先生はむしろ逆に、声が大きすぎるくらい。眠気防止のため、個人的に勉強をしようとしている生徒の邪魔にすらなるほどに、です。

 しかしそういった諸々のことを考え合わせても、あの眠くなりようは常軌を逸している。というわけで、生徒の間ではいつしか、こんな噂さえ流れるようになってきました。つまり――

「あの先生は、“甘い息を吐いている”か、さもなきゃラリホーマでも使ってるんじゃないか」

 ……と。ドラクエですな。生徒の中にはかなり若い年齢層の人もいるので、ホントにこんな事も言われちゃったりするわけです。
 そしてこれが腹に据えかねた、K氏の同級生は、こんな事まで言い出してしまったのでした。

「あんまり眠すぎるんで、浣腸してやろうかと思いましたよ!」

 ……どういう脈絡があるんだかさっぱりわかりません。彼も年齢的にはK氏よりだいぶ後輩にあたるとはいえ、先生の術にかかって、すっかりトチ狂わせられてしまったようです……。

 まあ、いろいろ大変みたいだけど、頑張って下さいな、K氏。学べるって事は、幸せな事ですからね。 


00.06.18

 昨日渋谷まで来ていたので、そのまま三軒茶屋の実家に帰ったのです。
 
 妹一号機、出迎えてくるなり、私の頭をばしばし叩いてきました。

「な、なんだよ!?」
「叩いたら、痛がるかと思って」

 けらけら笑っていやがります。その上、この兄貴に向かって、

「ヤバイよー、おまえも太った。でぶ軍団!」

などと、吐き捨てるように言いながら、父と私を交互に指差してくる始末。そりゃ確かに最近、私のおなかも出っ張り気味だけど……いやいや、そういう問題じゃないっ。このムスメ、誰かホントになんとかしてくれませんか……。


00.06.24

 千葉駅の駅前というのは、ストリートライブが盛んなところみたいですね。この日も、アコギをかき鳴らしながら自分たちの音世界を奏であげる若者たちが、あちらこちらで輪を作ってました。

 ところで以前にそんな弾き語りを、ししょう氏が何となく立ち聴きしていた時、こんなことがあったそうです。
 思い思いの曲を気持ちよさそうに弾いていたギターのお兄さんに、ふらりとオジサンが近寄ってきました。ろれつも回らず、足元もおぼつかないような様子で、明らかに酩酊状態です。そして、

「なあ、兄ちゃん……ナガブチ弾いてくれよ〜」

 出ました、いきなりリクエストです。いわゆる『流し』の人と混同しているようなのですな。
 ギターの彼は断りました。もちろん弾こうと思えば弾けないこともないのでしょうが、もともとアーティスト気分でやっていたところへ、酔っぱらいに頼まれて長淵剛の曲を弾かされたとあっては、彼のポリシーやプライドは多少なりと傷付いてしまうでしょう。断るのもやむを得ないことです。

 しかしオジサンも簡単には引き下がりません。自分が直接頼んでも埒があかないと悟ったのか、周りで聴いている他の若者を介して頼み直してみることにしたんですね。その時、たまたま彼の横にいたのが、他ならぬししょう氏だったのです。

「なあ、ちょっと頼んでみてくれよ〜……」

 ししょう氏も、無理だと分かっていつつも、いちおうオジサンの顔を立てて、再び頼み直してあげました。しかし答えはやはり「No」。無理なものは無理ですって、そりゃ。
 ただ、これでようやくオジサンも諦めがついたようです。逆に、親切に口添えをしてくれたししょう氏のことを「おまえ、いいヤツだなぁ」とすっかり気に入り、缶ビールまでおごってくれたそうな。

 ところが、この話にはまだ先があります。二人が妙に意気投合して言葉を交わすうち、驚くべき事実が発覚したのです。

 実は、オジサンとししょう氏は、“出身高校が同じ”だったんですよ。

 なんという偶然でしょうか。オジサンはもう大喜びで、最後には校歌の合唱までさせられるハメになってしまったとか。気の毒というか、なんというか……ゴクロウサマでした、ししょう氏。

 むー、人間同士、いったいどういう接点で繋がってるか予想が付きませんなぁ……。


00.06.28

 夜になって、SSG氏とK氏が遊びに来てくれました。
 彼らは野球ゲームや野球中継などを見つつ、その周辺の話題で盛り上がります。私は野球にはあまり詳しくないので、二人の会話にはついていけない事も多いのですが、でもマニアックな話題というのは、ただ聞いているだけでも面白かったりするものです。『何でそんなことまで知ってんだ』的な笑いまで誘われたりするので。

 そんな中、SSG氏がつぶやいた一言。

「打率1割のバッターが2連続でヒット打つ確率なんて、百分の一だからなあ……」

 ……た、確かにそうなんだけど……確率的には。SSG氏が例の冷静な口調でボソッと言うと、これが可笑しくてたまらないのです。K氏と私は二人して、大笑いしてしまいましたよ。『百分の一』とかって思いつかないでしょう、普通……。

 発想がさすがSSG氏だと、我々はまた、彼に対する評価を新たにしたのでした。


00.06.29 〜 00.07.01

 ファイティング越後氏の全面協力のもと、うちのATマシンのパワーアップにかかりきりの三日間でした。
 
 本来は、ハードディスクの容量を少し増やす程度の、ささやかな強化のつもりだったのです。でも、パーツ屋さんでいろいろ見ているうちにだんだんと欲が出てきて、CPUやグラフィックカード、果てはマザーボードまで買ってしまったのでした。

 そうこうしているうちに予算も尽きかけてきたので、もうひとつ欲しかったアイテム『タブレット』は断念しよう……としたのですが、これも結局は誘惑には勝てず、しかもけっこういいタイプの物を購入してしまいました。まったく意思の弱い私です、とほほ。

 というわけで、トータルすると、ささやかどころか、かなりの出費に……。うう、お財布が寒いよぅ。
 でもそんな巨額の投資の甲斐あって、AT様は立派にパワーアップなさって下さいました。特にグラフィック処理速度などは数倍も速くなり、以前のベンチマークテストの結果と見比べて、ニマニマしたりしちゃいましたよ。

 とはいえ、そこに至るまでの道のりは、さまざまな苦難と障害の連続でした。
 配線はどこも間違っていないはずなのに、なぜか起動してくれない。起動するようになったかと思えば、なぜか98がインストールできない。インストールできたかと思えば……といった具合に、どうしても一筋縄では済んでくれないのです。結果として、もともとは一日で済ませるはずだった改造が三日間にも及び、秋葉原にも行ったり来たりする羽目になってしまいました。ウンザリしましたね、さすがに……。

 しかしその間、越後氏は、嫌な顔一つせず、しっかりサポートをし続けてくれたのです。彼が何度もうちのアパートまで足を運んでアドバイスしてくれたおかげで、今は何の問題もなく、快適に動作してくれてます。越後氏の尽力には、感謝の気持ちでいっぱいですよ。ほんとにありがとう、越後氏。

 それにしてもうちのAT様は、ほんとに何人もの人たちの好意と協力の上で成り立ってますね……。まさに自作ならぬ、『他作』ATの名にふさわしいマシンと言えます。映画みたいなスタッフ・ロール作ったら、私の名前なんて、ほんの隅っこにちょこっと載るくらいでしょうなあ……。じ、自分も勉強せねばっ。



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