Text - Diary - Past - May,2002


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02.05.01 モーニング・ボディソニック
 ずずずん、ずずずん、という、重低音のリズムで目が覚めた。
 最初はなんだかわけが分からなかったのだが、その音はどうやら部屋の外から、いや正確には、2階の部屋から響いてくるらしい。んだよ、まじかよ……と、怒りまじりの寝ぼけまなこで時計を確認したら……まだ朝の6時じゃないかっ。

 うちのアパートは安普請なので、防音に関してはお粗末である。実際、最近隣の部屋に越してきた住民もときどき馬鹿デカい音でステレオを鳴らして、それが私の部屋にも筒抜けになって、うんざりさせられる。
 しかしそれだって、こんな朝早くに鳴らしてくることはない。しばらくしたら止まるだろうと思っていたら、10分経っても15分経っても音が止まない。業を煮やした私は、適当に着替えて部屋を出て、2階へ上がっていった。

 音の発生源であるらしいドアの前まで来ると、ドアの外の廊下まで音がはっきり聞こえてくる。いちど自分の部屋で実験したことがあるのだが、いくら防音性が低いとはいえ、歌詞の内容まで聞き取れる音量というのは、これは相当なものだ。
 私は意を決して、その部屋のチャイムを鳴らした。……正直、苦情を言う、というのは気分のいいものではない。逆ギレされたらどうしようという怖さもある。だから私も余程のことがない限り放っておくが、いくら何でもこんな時間に大音量は常識外れだろう。

 しかし、何度押しても、チャイムに返事がない。今度はドアをノックしてみる。これにも返事がない。

 私は、ここもかよ、と溜息を吐いた。
 というのも……以前、私の隣の部屋の住民が、夜中の2時過ぎに大音量でステレオを鳴らした時、同様に抗議に行った際にも、やはりドアの外には出てこなかったという経緯があるのだ。しかしその時は、直接の返事こそなかったものの、ほどなくして音量が小さくなったので、ノック等が聞こえてはいたのだろう。
 今回は、返事もない上に、音楽もそのまま流れ続けている。私はノックを数回繰り返したが、反応がなかったので、憤慨しつつも諦めて部屋に帰った。
 騒音は1時間ほど鳴り続けたのち、ようやく止んだ。もしかしたらタイマーを付けたまま、部屋の主は留守にしていたのかも知れない。何にせよいい迷惑である。普通の音量なら外に聞こえるなんてことはないのだから。

 それにしても、私以外の住民は、他所の音が響き渡っても気にならないんだろうか……? このちっこいアパートでいいところっていったら、静かなことくらいなんだけどなあ。


02.05.04 ムビ漬け
 世間はゴールデンなんとかいう人間的生活愛護週間だというのに、これといってやることもない極度の暇人な私は、木曜の夜にビデオを10本も借りてきてしまった。いくら100円セールだったからといって、ちょっと貧乏性の発露が過ぎるのではないかと我ながらにも思う。しかしとりあえず借りてきてしまったものは仕方ないので、片っ端から処理してゆくことにした。時間のリミットは土曜の朝までである。

 眠くなりそうな時間帯にはアクションもの、などと、見る順番もいろいろと工夫しつつ、結果的には10本中、8本までを見終えることができた。土曜の朝6時までは起きていたので、もう1本くらいは行けたかも知れないが、さすがに押し寄せる睡魔と疲労には勝てなかった。
 後半はもう義務感が先行してしまって、何のために観てるんだか分からなくもなっていたのだけど、今回はそれほど大外れのものはなく、おおむね楽しめたので良しということにしたい。
 以下がその内訳である。

 新作……『処刑人』『小説家を見つけたら』『ロック・ユー!』
 旧作……『恋はデジャ・ブ』『エル・スール-南-』『ストレンジャー・ザン・パラダイス』『現金に体を張れ』『バロン』

 このうち『ストレンジャー……』は再見。ちなみに見損ねた2本も、ともに以前鑑賞済みのものだったので、最低限のノルマは果たしたといえるだろう。……てゆうか「ノルマ」ってなんだよ。やっぱり何か勘違いしてるな、俺。

 一番のヒットは『恋はデジャ・ブ』。気恥ずかしくなってしまうような邦題だが、これは奥の深いテーマの傑作だと思う。タイトルで敬遠しているともったいないぞ。


02.05.05 オフなオフ
 とあるサイトのオフに参加してきた。場所は新宿。
 10人余りの参加者全員がお互いに初顔合わせ。それぞれ気さくな人たちで会話も弾み、その場は確かに楽しかった、のだが……そのオフにはある条件のようなものが課せられており、そのためか、終わった後に徒労感と一抹の空しさばかりが残ってしまった。同様の感想を抱いたのは私だけではなかっただろう。
 そのサイトの特性上仕方ないこととはいえ、そうはない機会だっただけに、残念に感じた。次回はぜひ条件を取り払ってやりたいものだ。どんな条件か書くと、サイトの正体が一撃でバレるので書かないが。
 何しろ、おかげでろくにオフの内容も書けやしないではないか! まったくもう。


02.05.06 サイコロの神(電脳版)
 友人のK氏との間で最近流行っているのが、PSの『カルドセプト』というゲームである。

 ご存じない方に簡単に説明すると、モノポリーをファンタジーRPG風にアレンジしたもの、と言えばいいだろうか。ボード上を1マスずつ進んで周回するのは全く同じだが、モノポリーでは家を建てるのに対し、このゲームではモンスターを置いて、それを育てていく形式になっている。そして、相手のモンスターのいるマスに止まったら、通行料を払うか、そのモンスターと戦うかを選べるわけである。戦う際には、トレーディングカードのようにいろいろある手札が使えたりするのが面白いところ。

 もともとボードゲーム好きの二人なので、このゲームのノリにはすぐに馴染むことが出来た。何より、サイコロの出目がゲームの大きなファクターを占めている部分がいい。何しろ私は自慢ではないが、『確率論を破壊する男』として仲間内では有名な男なのである。
 例えば、戦争物のボードゲームをやっていて、「サイコロの1が出たら逃走に失敗して全滅」という部隊が3部隊あった時に、同時に3つ振ったサイコロが全部1だった、なんてことを平気でやってのける。
 ――それじゃ全然ダメじゃん! と指摘されるだろうが、その通り。このカルドセプトでも、モノポリーで言えば相手のボードウォークみたいなところに、ここぞ、という時になぜか止まってしまう。私の頭上あたりの虚空を指差されて「絶対何かいるよ」としばしば言われる所以である。

 でもそういう、確率を無視した「ばかなっ」ということが起こるからこそ笑えるし、面白いのだ。コンピューターにサイコロ振らせてるのにやっぱり同じ、っていうのもなんだか宿命めいていて楽しい。何だかんだ言って勝率もそんなに悪くないしね。しばらくまったり遊べそうな感じ。

 こういうのがいかにも得意そうなSSG氏と遊んでみたかったものだと、毎回切なくもなってしまうのだが……。


02.05.09 マイ・イングリッシュ・イズ・マッチ・ワース
 見覚えのない名前の相手から先日、英文のメールが届いた。最初、また何か怪しげな宣伝か何かだろうと思ったのだが、冒頭の数行を読んでみると、どうも様子が違う。

『こんにちは! あなたのページを見てメールを書きました。あなた同様、フレミング・パイのファンなのです』

 なにいい? 日本人ですら知る人の少ない、あのバンドのファン? 念のため書いておくが洋楽でなく、日本のバンドだぞ。

 思いも寄らぬ展開に仰天しつつ、私はメールの先を急いだ。

『……彼らの音楽を最初に聴いた時からいっぺんに好きになってしまったのですが、ここはハンガリーなので、彼らのレコードが買えません』

 ハンガリーって……どうしてそんなところで聴けたんだ、日本ですら聴くチャンスは少ないのに(←いい加減失礼だろ)。かなり謎ではある。

『……で、私は学生なので小遣いも乏しく、輸入することも出来ません。どうにかならないでしょうか……。あなただけが最後の頼りなのです!』

 You are my only hope。なんだかスター・ウォーズみたいな結びだな。
 そう言われると悪い気はしないが……いやしかし、どうにかといわれてもなぁ、どうしたらいいんだろ? うちには別にCDが余ってるわけではない。mp3はメールに添付するには大きすぎるし、だいいち違法でもある。どんな形にせよ全曲送ってたら大変な手間だ。何しろ郵送料が払えないってのは痛い。
 とりあえず私は、出来るだけ力になりたいが具体的にどうすればいいかと、たどたどしい英語で返事を書いて送った。あとは相談しながらやっていくしかないだろう。

 そして、ほどなくして返事が来た。私が書いた、「日本人だから英語は下手なのです、ごめんなさい」というヘタレた前置きに対して、こんな暖かいフォローがあった。

『大丈夫、私もハンガリー人だから英語は下手ですよ』

 いや、キミの言う下手さはたぶん、私のそれとは相当基準が違うと思うぞ……。


02.05.10 無限洗濯の住人
 どうでもいいことではあるのだけど、いや、元来どうでもいいことしか書いてないこの日記なんだけども、以前から気になっていたこと。

 うちのアパートの一階、そのちょうど入り口にある1号室。その前に洗濯機が置いてある。――これが問題。
 この洗濯機のフタがなぜかいつも開いていて、そしてなぜかいつも、洗濯液に色々な服が漬かりっぱなしになっているのである。
 ずっと漬かったままなら「忘れてるんだろうな」と納得もするが、まれにこれが空っぽになっていたりすることもあるから余計分からない。ということは漬かっているものをときどき取り替えているということだが、そこに何の意味があるのだろうか。
 洗濯ではなくて、漂白か何かをしているのかとも思ったのだが、そうそうしょっちゅう漂白ばかりしているというのも変だし、時間も長すぎる。かといって、洗濯機としてぐるぐる回しているのも見た覚えがない。

 しげしげ見たわけじゃないから具体的に何を洗っているのかは分からないし、この部屋にどんな人が住んでいるのかも知らない。そもそも本来は詮索するようなことではない。
 しかし、アパートに出入りするたび必ずその前を通るので、嫌でも目に付いてしまう。せめてフタくらいしておけばいいのにと思うんだが……。いったい何をしているのか、相当どうでもいいのに、ああっ、気になるっ。予想がつく人、教えて下さい〜。
 まったく、このアパートの住民は奇妙な人ばっかりなのか? 私を除い(後略)


02.05.11 傀儡
 やっぱり巨人に負けるのが一番気分悪いっす。でもまだ首位だぞ阪神。今年は優勝することになっているとはいえ、あまり気を揉ませないで下さいね。


 第三者から見て、どんなに無茶なことを信じて実行してようが、それがその閉じられた輪の中だけで収まってる分には何も問題はない。まして「家族」というミニマムな輪で、家族のそれぞれが納得しているなら、それはそれで幸せの一つの形だと思う。

 でもそれを、不当な金儲けの手段として利用したり、さらにはそれを公共の電波が、さしたる根拠もなく後押ししたりするとなると話は別だ。社会の中で批判の対象となることは避け得ないだろう。そこに担ぎ出されているのが、自分の意志だけでは行動のままならない障害を持った人間だとすれば、なおのことである。

 以前から話題になっていた、NHKの例の問題について、今日、改めて「釈明」と称するものが放映された。で、まあ、その内容は、予想通りというか、なんの釈明にもなっていないものであった。
 今さら「スタッフが実際に見たから事実です」なんてレベルの話をしてどうなるというんだろうか? あれが奇跡でも何でもないということについては、もはや議論の余地なんてないのに。目で見たものなら手品でもCGでも真実かい。
 とにかく「主役」として、いいように利用されるばかりの彼が気の毒でならない……。


02.05.13 代替物
 大しておなかも空いてなかったし、何よりお金もなかった私は、夕食にペペロンチーノを作ることにした。

 といっても材料はない。スパゲティそのものしかない。
 あとはニンニクと唐辛子さえあれば何とかなると判断した私は、まずニンニクとして、チューブ入りのおろしニンニクを。唐辛子はそのまま、テーブル用の一味唐辛子を使うことにした。

 オリーブ油でおろしニンニクを炒めて、茹でた麺を投入し、一味と塩・黒コショウを振りかける。以上。

 意外にそれらしい味になるもんだなと思った。
 基本的な材料は一緒なんで、当たり前といえば当たり前だが。
 ただ、これを「ペペロンチーノ」なんて大仰な名前で呼んじゃっていいものかどうか、非常に迷うところではある。イタリア在住のアントニオに怒られそうだ。そんな友人いませんけど。


02.05.14 シンパシー
 ハンガリアンな彼とのやり取りはその後も地道に続いていたりする。
 で、アチラの事情をいろいろ訊いてみたところ、意外な事実が次々と判明してきた。
 
 まず、彼がフレミング・パイというバンドを知ったきっかけとなったのは、『musicwhore』という音楽情報サイトだそうな。ここを利用して、日本のポップを片端から聴いていった結果、椎名林檎や相川七瀬、そしてフレパイなどがユニークで大いに気に入った……とのこと。なるほど、なるほど。基本的には女性ボーカルの、それも個性の強い歌声が好きなんだね。

 また彼は、「日本語はとてもリズミカルで、ポップミュージックに合う」とも言う。友人にも聴かせてみたが、英語でなく日本語で歌っている、ということに気がつかなかったらしい。
 この反応は私にはむしろ意外だった。私は、英語と比べると日本語はメロディに乗りにくい言語だと認識していたからである。しかしネイティブが「合う」と言うならそうなのだろう。こんなところでお世辞使っても仕方ないし。

 彼は日本語はまったく解さないのだが、Jポップだけでなく、実はジャパニーズマンガ・アニメにも非常に興味があるらしい。何しろ最初に聴いたのが、いきなり何かと思えば『カウボーイ・ビバップ』のサウンドトラックだというのだ。この時点で、私は再びのけ反った。そりゃまた日本人でも分かる人の少ない、通好みなアニメを……。
 彼に言わせると、「菅野よう子はハリウッド以上の作曲家」だそうな。その点については私ももちろん異論はない。非常にものすごく話が合いそうだ。今後、どさくさに紛れて坂本真綾なども勧めていきたいところである。
 ただ実は、私自身がまだ『ビバップ』を観てなかったりするので(以前から観たいとは思っていたのだけども)、これを契機に私もまとめて鑑賞してみようかと思っている。

 日本の音楽市場でどんな物が流行っているかということ以外にも、普通の生活はどんな感じなのかなどについても、彼は興味津々のご様子。
 うーんそうだねえ、それじゃ私のこの日記を、そのまま英訳して送ってあげたらどうかな。ジェネラルでノーマルなジャパニーズピープルライフが、きっと彼にも伝わることだろう。
 ……いや、なんかほんとにそれでだいじょぶそうな気もするんだよね。基本的にすごーく“類トモ”っぽい感じなので……。


02.05.16 ペペロンらしいの
 先日のペペロンチーノもどきがさすがにあんまりだと思った私は、今度はちゃんとした材料をジャスコで買ってきた。といっても大したものを買ったわけではないけど。

 材料がまともになってもやることは結局変わらない。切ったニンニクと鷹の爪とベーコンを炒めて、茹でたパスタ絡めて塩コショウして、終わり。

 ……結果、私の料理の腕と、舌の感覚じゃ、多少材料が良くなったくらいでは変わらない、ということが判明した。ゼイタクしただけ損であった。

 というかニンニクを切ると、なぜか親指の先っぽがいつまでも(3日くらい)ニンニクくさくて困ります。どうにかなりませんか。


02.05.17 英語ワカリマセン
 その洋服店の店先には、ちょっといい感じのTシャツがいろいろと並べられていた。Tシャツフェアとかなんとか、そういう類のものを開催しているらしい。
 そのうちの一つに目を引かれた私は、シャツを広げて、胸のところにプリントされていた英語の文字列を何気なく読みとってみた。

"The grass is always greener on the other side of the fence."

 えーと……フェンスの反対側の芝生のほうがいつも緑……でいいのか?
 ああ、つまり「隣の芝生は青く見える」ということか。なるほど。これくらいのレベルの英文でも、読めるとなんとなく嬉しい。Tシャツのプリント文字というと、分からないと思って適当な英語が書いてあったりすることがままあるのだが(実際、私もたいていは分からないのだが)、これはまあ一応マトモな部類に入るらしい。
 そんなことを思っていた時、
「どうですかー? そのデザインはいいですよー。サイズも揃えてありますんでー」
 女の子の店員さんが声を掛けてきた。お決まりの言葉である。そこで私は何とはなしに、
「面白いですね、ことわざが書いてあるんですね、これ」と応じてみた。
 すると、

「えっ!? そうなんですか?」
 素で驚く店員さん。「なんて書いてあるんです?」

「いや……『隣の芝生は青く見える』、だと思いますけど」
「へえ〜、そうなんですかあ、知らなかったぁ〜」
 他人事みたいに驚くな、自分の店のオリジナルTシャツだろ。
 しかし、それは別にどうでもいい。この店員さんのすごいのはその先である。ひとしきり感心して見せたその店員さん、小走りで他のTシャツを数枚持ってきたかと思うと、おもむろに、

「じゃ、こっちのはなんて書いてあるか分かります?」

 店員が客に聞くなっ。


02.05.18 歌はちから
 昨日までの雨も無事にやんだ。ただでさえ人が多くて閉口する土曜の渋谷を、傘をさして歩くという最悪の事態にならなくて助かった。もっともこの日同行した友人は、「雨でも傘をささないで歩くのが好き」などと言っていたが。
「だって、傘って嫌じゃない? 面倒で」
 面倒なのは同感だが、濡れる方がもっと嫌な気がする。曇り空は続いている。とりあえずこの一日が終わるまで降らずにいてくれるよう、雲に祈るしかない。

 最初に行ったのはシネマライズ。ここで『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』を観た。
 細かい感想はあとでMovieに書くが、とにかくパワフルな映画だった。基本的にロック・ミュージカルということもあり、観るなら映画館で観た方が絶対にいい。
「さあ、皆さんご一緒に!」のところでは実際歌ってみたくなったのだけど、場内の人々にはその気配がなかったので、ぐっと我慢した。あとで聞いてみたら友人も同じ心境だったらしい。ああいうところ、アメリカなどではきっとノリノリで、場内全員で歌ったりしてるんだろう。ちょっと羨ましい。

 すっかり気持ちが歌モードになったところでカラオケボックスに入った。
 友人の歌の上手さは知っていたが、この日改めてじっくり聴いて、その技量と表現力には圧倒させられるばかりだった。Misiaやらドリカムやらをここまで歌いこなすのを目の前で聴かされたら、そりゃ本気で鳥肌も立とうというもの。なんかもうカラオケとかそういう域じゃなかった。
 私も最初のうちこそ、ささやかながら張り合う気持ちもあったが、2,3曲歌ったあたりであっけなく玉砕。あとはただ友人の繋ぎ役に徹することとなった。でもそれで十分だった。友人の素晴らしい歌声にたっぷり酔えただけで満足。
 ところでこのカラオケ屋には、名物の食べ物として、風変わりなトーストがある。友人は「角材みたい」と形容していたが、正にその通り。一斤丸ごとをそのまんま焼いて、申し訳程度にアイスクリームを乗っけた状態で出てくるというものである。友人との間では「どう考えても薄切りにして焼いた方が美味い」ということで意見が一致している。
「罰ゲームだね、これは」
「罰ゲームならむしろ、店の外に置いてあったでっかい見本サイズ(1メートル立方)に体ごと埋めてもらうとか」
「横一列に並べたら一段消えるかも、テトリスみたいに」
 食べもしないのにこれだけ話題にしてもらえれば、巨大トーストくんもある意味本望だろう。
 実は私、以前にここでこのトーストを食べたことがあるのだが、食べているうちにどんどん崩れてぐずぐずになるうえ、その時は5人がかりだったというのにそれでも持て余した、ということは明記しておきたい。

 その後、ちょっと早かったが飲み屋に。結果的には、早めに入ったのは正解だった。何しろ4時間ばかりずっとそこにいたのである。来た時はほとんど誰もいなかった店内も、帰る頃にはすっかり満員状態になっていた。
 お互い、酒はほとんど飲まなかったのだが、その代わり大量に言葉を交わした。軽い笑い話からシリアスな身の上話まで、延々と話し続けた。会話が得意なわけではないけれど、話すことはいくらでもあった。ときおり訪れる沈黙さえも言葉だった。
 そして一つの結論として出たのは、「飲みの席に酒は必ずしも必要ではない」ということである。……4時間話してそれか、というツッコミは却下する。

 店を出ても、今度はツタヤの上のスターバックスに場所を移して話は続いた。こっちでもまた実りの多い会話は続いた。以下はその一例である。
「薬はお茶で飲んじゃ駄目だよ。他にもカフェイン入りのもの、コーヒーとかコーラ、あと牛乳も駄目」
「えっ、今まで必ずそのどれかで飲んでたんだけど。困った、これからどうやって薬を飲んだらいいんだろう」
「……普通に水で飲めっ」
 すっごい呆れ顔の読者が目に見えるようなので、この件は深く追求しないことにする。


 店を出て歩く。
「月が綺麗だ」と言われて空を見上げ、そしていつの間にかすっかり晴れていた夜空に気付く。
「屋台に『フルーツ』って書いてある」と言われてその屋台を見ると、なぜか古雑誌しか売ってないことに気付く。
 そういうふうに少しずつ違うお互いの視点から新しいものを見出せたことが、なぜだか無性に嬉しかったりする。

 そうして奇跡のように満ちた一日が、ゆっくりと、その幕を閉じてゆく。


02.05.21 とりあえず連打
 私の癖のひとつに「なにか食べ物を気に入ると、飽きるまでしばらくそればっかり食べてしまう」というのがある。冒険するより手堅くおいしいほうを選ぶのか、単に考えるのがめんどくさいのか、自分でもよく分からないが、とにかく同じものばかり食べる。そして、ふと飽きるとぱたりと食べなくなる。
 このごろハマっているのは『ウェル』という飲み物で、要はノンカロリーのカルピスウォーターである。新製品なのに、なぜかあまり売っていないのが困りもの。
 食べる方だと、今はセブンイレブンの『味わい梅むすび』が好きだ。

 最近やたら食べたものを、思いつくだけ列挙してみる。

・カップヌードルのチーズカレー
・ダイエットコーラ
・バンホーテンの紙パックのココア(牛乳で割って飲む)
・スニッカーズのマイルドクリスプ(ノーマルはダメ)
・ごまドレッシング(以前は和風しか使わなかった)
・ラーメンの王様のスタミナラーメン
・C&Cのカレー
・カゴメの野菜生活

 他にもあったような気がするけど、とりあえずこんなところ。この中には、未だに継続中で食べ続けているものもあるし、もう長いこと食べてないものもある。
 それにしても、こうして挙げてみると、なんだか体に悪そうなものばっかしだ……自重せねば。(ダイエットコーラを飲みながら)


02.05.23 安いから
 私のアパートの近くにはレンタルビデオが2店あって、そのどちらも、1〜2週に1回くらいのペースで、貸出料が半額以下になるサービスをやってくれている。
 そのたびにできるだけ利用するようにしているのだが、これに慣れてしまうと逆に、普通の日に通常通りのレンタル料で借りるのがばかばかしくなる。いつもの倍じゃん! という感覚になる。自然と、サービス日以外には行かない、ということになるわけで、同様に感じる人が多いであろうことを考えると、集客の目的としては逆効果になっているような気がする。
 あまりサービスのペースが速いのも、店にとっては考え物かも。もちろん、客の私としては嬉しいので、どんどんやって欲しいのだけど。

 サービスのあった今週も映画を数本観たのに加え、久しぶりにアニメも観た。『カウボーイビバップ』である。ハンガリアンの彼とのこともあるし、私の周囲でも評判は上々ということもあって、以前から気になっていた作品だった。
 第1巻があいにく貸し出し中だったのだが、一話完結の内容らしかったのでまぁいいかと思い、2巻と3巻を借りてきて、観てみた。
 で、その感想だが……。
 ……うーん。残念だけど正直なところ、私の趣味には合わない作品だった。
 ハードボイルドな雰囲気を意識していることは分かるのだけど、それがうわべばかりの模倣に終わっていて、台詞や人間描写の底も浅く、中身が薄い。スタイルだけの作品という印象しか受けなかった。演出自体はスマートだが、絵柄や色づかいなどが、なんというか一昔前のアニメ(『ダーティペア』とか、あのあたり)のセンスなのも違和感がある。渋く決めるならもっとこだわって欲しいところ。
 あと、このアニメに「フェイ」という名の女キャラがレギュラーで出てくるのだが……個人的に、こいつが死ぬほどムカつく! 細かくあげつらうのはやめておくが、とにかくいいところなしの女である。こんなひどいキャラクターは久しぶりに見たよ。
 ただ、声優に関しては、山寺宏一や林原めぐみなど芸達者な人たちを揃えていたので安心して観ていられたし、菅野よう子による音楽もいい。そうした基本的な部分をきっちり押さえている点は素晴らしいと思う。これで脚本が良ければ……。
 結局、3巻の途中あたりで見るのをやめて、そのまま返却した。サービス日の良さを実感するのはこんな時である。通常料金払ってたら、無理しても最後まで観るところだったのだけども。


02.05.25 ヒゲ合戦
 先週に引き続き、この土曜日もまた渋谷へと映画を観に行ってきた。先週と違って初めから青空が広がっていて、汗が出るくらいの陽気である。あまり暑いのも困るが、やはり晴れているのは有り難い。

 昼に友人と待ち合わせたあと、開場まで時間があったので、劇場近くのハンバーガー屋に入った。
 そこで友人に聞かせてもらったのが、ゴールデンウィークを利用して友人の職場で行なわれた、“ヒゲ合戦”ともいうべき奇妙な勝負の話である。ヒゲの濃い者同士である職場の2人が、
「GW中、ヒゲを伸ばしっぱなしにしていたら、より長く伸びるのはどちらか」
 という賭けに出たのだそうだ。負けた方は3千円を相手に払わなければならない。大金というほどではないが失うには惜しい、絶妙な金額設定といえる。
 GW明け、お互いすっかりむさ苦しくなった顔を突き合わせ、いざ勝負――となったのだが、これが一筋縄ではいかなかった。抜いた毛を両面テープに貼り付けて比べてみたところ、ほとんど同じだったため、両者から様々な文句が出てきたのである。
「納得いかない。抜いた場所によって長さが違うから、もっと長いのを探す」
「こっちは少し巻き毛がかってるから、そのぶん短く見えてしまって不利だ」
「毛そのものはほとんど同じだから、あとは毛根の勝負だな……とすると、若い方が有利か」
「職場にある顕微鏡を使ってみようか」
 たかが3千円、されど3千円というべきか。そこまでやるか、という勢いである。結局は若さの勝利ということになったらしいが、それにしても、休み明けのいちばん忙しいであろう職場で、いったい何やってんだか。楽しそうで何よりだが。

 目当てであった『スパイダーマン』は、予想していた以上に劇場が混んでいて、あやうく座れなくなるところだった。うーん、こんなに人気があったのか、クモ男。

 そして映画のあと、飲み。初めて入る店だったが、落ち着いた雰囲気のいい店だった。ちょっと高めなのが玉にキズだが、また来ようと思う。
 しかしそんな店であっても、話す話題はかなりアホなものばかり。やっぱりこうでなくちゃ。


 場所がどこであれ、変わらない空気というものがあって。
 それが何より心地よくて、泣けるほどに嬉しくて。
 夜が終わり、一人に還れば、笑いとばしたくなるほどに寂しい。


02.05.27 ずるずる
 ちょっと汚い話で恐縮だが……日曜の夜くらいからどうも風邪を引いてしまったらしく、今日までずっと鼻水か止まらなかった。ゴミ箱が使用済みのちり紙でいっぱいになるくらい、鼻をかんでもかんでも、いくらでも出てくる。私の身体のどこにこんな大量の体液があったのかと感心するくらいである。
 この日記を書いている今になって、ようやく落ち着いてきた。まあ、明日になれば復調することだろう。

 気がついてみたらもう10日近くも日記更新せずにいたし。アクセスが少ないとか文句たれてる場合じゃない、がんばらねば。


 関係ないけども、何週間か前に、会社の部長から
「歯の銀の詰め物は体に悪い」
 なんて話を聞かされてしまった。その真偽はどうあれ、それ以降、なんだか口の中が気持ち悪くてしょうがない。暗示に弱い私であった。


02.05.28 普通の人
 ガンダムの漫画専門の雑誌をコンビニで見つけたので、何気なくパラパラめくっていたら、最初のほうに「好きなガンダムの機体ベスト10」というのが載っていた。今までのシリーズの色んなガンダムが1ページにずらりと並べられていて、これ、普通の人から見たら、ベスト10も何も、全部同じに見えちゃうだろうなぁ、と思った。
 その一方で私は、「GP03ガンダム」のところに間違って「Vガンダム」の絵が入ってるのを目ざとく発見して、ガンダム専門誌がこれじゃいかんなぁ、などと思ってもいた。いかんのは俺かも。


 ほんとうは今日、やらなきゃならないことが山ほどあったのだけど、何から手を付けていいか分からず、結局大半をぼーっとして過ごしてしまった。――猛省。


02.05.29 最終チーノ
 自作のペペロンチーノの味がどうも腑に落ちなかった私は、これはいちどホンモノを食べてみるしかないと思い立った。駅のそばのカプリチョーザに入り、いつもならイカ墨とかを頼むところで、ペペロンチーノ、と注文する。10分ほど待って届いたそれを、さっそく口に運んでみる。

 ……うーん……。
 どうやらこれは、どう調理を工夫したところで、そう劇的においしくなるようなものではないらしい……。シンプルな食べ物だから当然といえば当然だが。

 しかしそうなると、これが1皿800円、という価格設定が納得いかなくなってくる。具もニンニクが3片ほど入っているに過ぎず、ボリューム感があまりに乏しい。自作なら200円かそこらでできるところだ。チューブのニンニクでいいなら100円でもいける。大して味も変わらないし。
 心なしか麺の量自体も少ないような気がして、あっという間に食べ終わってしまった私は、非常な物足りなさを感じつつ店を出た。ちょうど隣に並んでいたのがトンカツ屋。垂れ幕に書かれた「ロースカツ定食・780円」という文字が、その時の私には、やけにうらめしく見えてしまった。

 仕方ないので無印良品でお菓子買って帰りましたとさ。


02.05.30 ペペロン化計画
 なんだか全然食欲がない。ないのだが、腹は減るので、形式だけでも何か食べようと考える。考えるが、めんどくさいので結局レトルトカレー、といういつものパターンになってしまう。
 これでは栄養バランスがさすがに悪いと思い直した私は、今日の夕食はレトルトカレーの代わりに、レトルトのハヤシライスを食べたのだった。たまに食べると新鮮でおいしいものである。


 ところで昨日スパゲッティの話題を書いたところ、さっそくフォームメールでの反応を2通いただいた。この件に関しての、世間の関心の高さが伺えよう。人々の頭の中がそこまでペペロンチーノに支配されていることには、驚きを禁じ得ない。誰かの陰謀なのだろうか。
 ではその内容を紹介してみよう。まず1通目。

カプリのペペロンチーノは外れると泣くほどまずいんですよ。

 そうなのか……。確かに、店舗によって味にムラがあるとは聞いていたが。でも、他のパスタはちゃんとおいしいんだけどね。シンプルな料理ほど、その差が如実に表れちゃうってことなのかな? ……それにしても、「泣くほど」って。
 とりあえず、今回のことであきらめず、他の店でも食べてみる価値はありそうである。

友人に作ってもらったやつはとてもおいしかった。鮭も入ってた。

 お、それはゼイタク。……と思ったら、

おっと、あれは鮭クリームスパゲッティだった。

 そうか、おいしいペペロンチーノを食べたいと思ったら、「鮭クリーム」って注文すればいいんだね。今度試してみようっと。
 ……って、別モノだよ、それ! (←ベタベタ)

 そしてもう1通のメールがこちら。

ていうかそもそもパスタも牛丼並みのデフレをしれ。

 そうだね。やっぱり800円以上になると割高感があるよな……。せめて600円台で食べさせてもらえたら嬉しいんだけどなあ。


 こうしてメールで反応をもらえるというのは、何とも嬉しい。フォームを付けてみて良かったな。
 今回は匿名で紹介してみたけど、どうだろうか。掲示板のほうと適当に使い分けてもらえれば、と思っています。



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