Text - Diary - Past - April,2002


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02.04.03 夢見心地
・阪神タイガースが強すぎる。これで開幕4連勝。なんでも、球団では46年ぶりの快挙とのこと。
 打線がおそろしく効率よく繋がるし、投手の安定感も抜群で、全ての試合を2点以内に抑えている。去年と同じチームとはまるで思えない。ファンとしては毎日ホクホクである。
 一方の巨人は、4試合目にしてようやく1勝目。序盤からずいぶん明暗が分かれているが、まさかこのままの調子で1シーズン行っちゃったりするのだろうか。すぐその気になりやすい阪神ファンに、どうぞこのまま1日でも長く夢を見させてください。


・つい先日、映画監督のビリー・ワイルダー氏が亡くなられた。享年95歳だったそうだから、天寿を全うなされたと言えるのだろう。が、氏の作品を、わりと最近になってまとめて観たばかりだったので、その死が非常に生々しいものとして感じられた。
 これを機に、ワイルダー監督の6作品の感想を、All Moviesのページにまとめてアップしておいたので、興味のある方はどうぞ。個人的ベスト作品は『情婦』。


・リアルすぎる夢を見ると、それに目が覚めてからの精神状態まで影響されてしまうということがある。
 おとといには、どういう脈絡だかわからないが、ものすごく美味い桜餅を食べる夢を見てしまった。前日の夜に飲んだ酒の影響で、胃が甘いものを求めていたのかもしれない。ともかくも、起床直後から湧き上がった猛烈な食欲を抑えきれず、私は眩しい朝日の中、コンビニへと駆けていくこととなった。念のため言っておくが、私がこんなに極端な行動に走ることは滅多にない。それはもう相当に食いたかったのだと思われる。
 しかし、時間帯が悪かったのか、そもそも和菓子など扱ってなかったのかはわからないが、一番近い店には売ってなかった。意地になって3軒回ったが、やっぱりなかった。結局、やむを得ず代替品として、草まんじゅうなるものを買うことで自分を慰めたのだった。
 何だか大げさに言ってはいるが、実は2軒目の途中あたりでもう夢の余韻からすっかり醒めていて、桜餅である必然性が自分でもよくわからなくなっていたような気がする。でもそれを認めたら敗北のようにも思う。とりあえず草まんじゅうでも十分美味しかったです、ええ。


02.04.06 バラさないで下さい
 ものすごくうらぶれた感じの、木造の洋服店の店先に、エプロンがいっぱい売っていた。千葉県の奥地、とある町でのことである。
 今どきサザエさんでも着ないような前時代的デザインだったが、その値札には思い切り、
『おしゃれエプロン』
 と明言してある。
「なにこれー」
 隣にいた花梨さんが、それを指差して意味ありげに笑った。つられて私も、
「どこがおしゃれなんだよ!」
 と、誰しも思うであろうツッコミを入れた。
 その後、本来の目的である餃子店に入ると、花梨さんは集まった仲間たちの前で突然その時のことを持ち出し、やけに嬉しそうな顔で
「まきひささんってひどいんだよー。店の前で思いっきり『どこがおしゃれだ』とか言ってんの!」
「花梨さんだって笑ってたじゃん!」
「私は口に出しては言わなかったもんねー。まったくまきひささんって、温和そうな顔してて、ときどきものすごい毒を吐くんだから〜」
 ……いや、それは間違っちゃいないけど(しかも、実際はときどきどころじゃないんだけど)……何かハメられた、という気がしてならなかった。むむう、エプロン着せておしゃれにドレスアップしてやれば良かった。

 そう、この日は、ビールオオワダ氏主催による集まりだったのである。
 参加者は前述の花梨さんの他、ななめ氏、もりへー氏、SOTA氏、そして館長&マキさんコンビという面々。ただでさえそれぞれのキャラクターが濃い上に平均年齢が異様に高く、しかも食うモノは餃子とビールとキムチだけという、いろんな意味で奇妙な匂いの会となった。
 でまぁこのメンバーをご存じの方ならだいたい想像はつくかと思うが、話して盛り上がる話題といえばひとつしかない。下ネタである。二次会になって、周りに一般客もいるというのに、平気でデカい声でちんこまんこ言いまくっていた。あっけらかんとしたノリなので卑猥だったりは全くないのだが、そういう小中学生レベルのことを、臆面もなく。花梨&マキさんの女性組も。というかその二人が常に先頭を切っていたと言っていい。
 ふだん品行方正で通している私などからすると、正直言って居心地は……ものすごく、良かったです。こんなに楽な場所は他にないとさえ思った。何を憚ることも遠慮することもなく、好き勝手なことを喋って、誰に咎められることもない。歳をとればとるほど、こういう場というのは得難くなってくるものだから。なんと素晴らしいことだろう。あー、ちんこ。

 二次会もすぐに終わってしまい、名残惜しい気分のまま解散したけれど、ぜひまた近いうち同じような年寄り同士の集まりをしたいな、などと思った。
 だけど、狂乱の宴の最中にビデオを回して
「まきひささんって、こんなお下劣なことも言うんだね〜」
 とか言い出したりするのは反則なのでよろしく。いやほんとに。言うけど。


02.04.07 よくある単位
 そしてその次の日には、千葉県の別な奥地に行ってきたわけである。

 あ、いや、奥地なんて言ったら失礼になるのだろうか。友人である、ししょう氏の家に遊びに行ってきたのだから。
 結婚して千葉に一戸建てを構え、車は2台所有しており、もうすぐ二人目のお子様も誕生予定という相当な暮らしぶり。同級生の中では出世頭と言っていいだろう。あまり意味のないことではあるが、今の私の境遇と比べるとその差は歴然たるもので、ううむと唸りながらしばし考え込みたくなってしまう。
 それはともかく、彼の長男がもうすぐ1歳だということで、実はまだ誕生以来いちども顔を見ていなかった私とK氏は、この機会に会いに行ってみることにした。

 初めて会う長男くんはししょう氏に似ず、可愛かった。最初のうちは怯えていたのだろう、固まった表情のまま口も利いてくれなかったが、打ち解けるにつれて笑顔を見せてくれるようになった。手を変え品を変えた末に、子供の心を掴んだ! と思えた瞬間は非常に嬉しい。
 一人歩きが自由になった頃で、子供が乗れるサイズのミニカーに掴まって、とことこどこまでも歩いていってしまう。車を押して歩くこと自体が楽しくてしょうがないといった感じだった。

 この日のメインは、ししょう氏の家からさらに15分ほど車で行ったところにある、『東京ドイツ村』という、一種のテーマパークだった。
 広大な敷地の中にドイツ風の建造物が点在し、別世界を創り上げているわけである。丘の上からの、自然を生かした眺めはなかなかのもので、ちょっとしたファンタジー映画を思わせる光景だ。具体的にどれくらい広大かというと、手元のパンフレットによれば、「広さは東京ドームの約27倍」だとのこと。桁が大きすぎて、もはやすぐにはピンと来ないような数字になっている。たとえドームと同じ面積であっても、私が一人で暮らすには持て余すことだろう。
 これといって大袈裟なアトラクションなどがあるわけではなく、のどかな自然公園といった趣であった。そんな中でバーベキューをしたリ、ちょっとした動物園のようなところで遊んだりした。さいわい天気も良く、のんびり楽しめた。ソーセージを焼いてビールを飲んだので、まるでドイツ人気分だった。
 長男くんはとにかく《車》と名の付くものが大好きなようで、普段は常にミニカーを押して歩き、そうでないときでも、興味の対象はやはり車に向かっていた。動物園にいるときでさえ、動物より、園内巡回用のキャディーカーの方に引き寄せられていたのだからかなりなものである。なにかそういう素質があるのかも……なんて、自分が親だったら考えてしまうかも知れない。
 
 しかしねえ、どういう脈絡だかよくわからないのだけれども、車で15分のところにドイツがあるって……。やっぱり想像を超えた場所ではあります、千葉。


02.04.16 優しい歌
 友人たちに無性に会いたくなって、突然呼び出して渋谷で飲み。あと、カラオケも。
 急な話だったのに来てくれて嬉しかったし、思い切って呼んで良かった、と思った。


 でも、結果的にはどうだったのかな。
 酒のせいにはしたくないけど、やっぱり気が大きくなっていたのか、自分はあまりに迂闊な行動が多かったし、いろんなところで、悪い意味で年齢差感じちゃって、自己嫌悪を深めることになってしまった。もちろん相手にも嫌な思いをさせただろう。

 女の子の肩を揉むってセクハラだよなーとか。
 そういう発想がすでにオヤジだよなーとか。

 うーん。


 まあ、今回と同じメンツでの飲みはもうないだろうけどね……。


02.04.19 贅沢に入れよう
 今月の頭にいきなりハードディスクが壊れた。
 正確に言うと、不良セクタが出来たせいでウィンドウズが立ち上がらなくなっただけなのであるが、それはフォーマットしても直らないし、不良セクタが出来るのはいつ本格的に壊れてもおかしくない予兆なので、事実上壊れたも同然なのである。
 ――という知識を今回のことで学んだ。ははぁ。
 で、不良セクタって何モノなんでしょうか。

 仕方がないのでマスターとスレーブを切り替えつつ騙し騙しやってきたのだが、いよいよごまかしが利かなくなったので、秋葉原まで出向いて新しいドライブを買ってきた。
 とにかく静かなものということと、それなりに信頼性のあるものということで、付け焼き刃の知識を得て私が選んだのは、Maxtorの流体軸受けタイプ、5400回転のものであった。7200回転でないのは、速いほどうるさいと聞いていたからである。
 そして結果として、静音という面から言えば、かなりベストの選択だったようだ。実際取り付けてみて、以前とは比べものにならないほど静かなことに驚いた。シュイーンという回転音も、カリカリというアクセス音もほとんど聞こえない。起動時など、本当に動いてるんだか不安になるほど。慣れてないと、あの音がないと逆に物足りなかったりして。それにしてもすごいなぁ。

 容量は40メガ。そんなに何を入れるんだと聞かれそうだが、私にもわからない。何しろ、今までは10メガですら持て余していたほどなのだから。しかし店頭ではもう20メガ以上が標準になっていて、あとは20メガ単位で増えていくような感覚。しかも値段がほとんど変わらない。ほんの千円かそこらの上乗せで、容量が何10メガと増えるわけだ。以前とはずいぶん感覚が変わっていて戸惑ってしまった。そのうち、CPUなども同じ調子で数10ギガのがほいほい出たりするんだろうか。あとは数千倍速のCD-ROMとか、キーが数千個あるキーボードとか。
 
 余りまくったハードディスクには、仕方ないので、今までMOに避けていたmp3やら動画やらのデータをハードディスクに持ってこようかと思っている。何というか本末転倒な気もするのだけど。たぶん数年経っても埋まらないと思うけど、それより先にまた壊れちゃうんだろうな。


02.04.21 バキュームカレー
 世の中には、いろんな食べ物を、いろんな食べ方で楽しむ人がいるもので。
 
 駅の商店街にあるカレー屋で、私は昼ご飯を食べていたのである。なんだかんだで週に2回はここで食べているような気がするが、それはまぁいいとして、この日の私はメンチカツカレー・辛口をセレクトしていた。この庶民的な味が非常にいい。
 すると、カウンター席で食べていた私の隣に、おそらく同い年くらいの男性が座り、
「中辛と生卵」
 を注文した。
 生卵、である。ほどなくして男性の前には、割られた生卵がまるまる1個乗せられた状態のカレーライスが差し出された。
 ここで誤解していただきたくないのは、私は別に、卵を生で乗せること自体には抵抗はない。というか、むしろ好きである。自分でもときどきやる。
 ただどちらかというと、黄身だけ乗せる方が好きなんだよねー、白身まで入ると水気が多くなっちゃうからさ……などと、そのカレーを横目で見ながら漠然と思っていた、まさにその時。

 その男性が両手をカウンターの上に突き、カレーの皿に顔を付けるような姿勢を取った。
 そしてそのまま、唇をとがらせ、カレーから白身の部分だけを吸い取ったのである。

 つい横からそれを見てしまっていた私は、ちゅるちゅるっと吸い込まれていく生卵の白身を、思い切り目撃する形となった。
 ……まだ食事中だったんですけど、私……。

 たぶん、根幹にある発想としては彼も私も同じなんだと思う。つまり、生の白身があると、カレーがぐずぐずになるから。
 しかしそこで、「先に白身だけ吸っちゃおう」とまでは発展していかないだろ、フツー。彼なりの試行錯誤の末に生まれた方策なのかも知れないが、せめて人目に付かないところでやってくれ、頼むから……。
 

 その後スタジオへ向かい、4時間練習。いつもの倍。さすがに足柄まであと1週間なので追い込みが大変(泥縄とも言うが)。私は私で、その1週間で英語の歌詞を全暗記して来いとか無茶を言われている。学生時の試験前の心境がよみがえる。そして同様に思うのは、アンキパンが欲しいということだけです。


02.04.22 ソロプレー
 駅前に新しくできたステーキ屋で一番安いセットを食べたら、会計の時に
「次回、これをお使い下さい」
 とサービス券を渡された。なになに、『500円サービス』。期間中にお使い下されば、次回の会計から500円分お引きいたします、と。おおっ、デカい!
 これはどうあっても使わなければ損だと判断した私は、3日と空けずに再び同じ店を訪れた。今回はみみっちいセットなんて食べないぞ、せっかく500円安くなるんだし、この機会にいいモノを食べよう(←この発想がすでに相当みみっちい)。割と豪華な感じのメニューを選び、そして、久しぶりのごちそうを堪能した。ああ、おいしい。
 満腹になった私は、上機嫌で会計に向かう。件のサービス券を差し出して、レジの娘に「キミ、これでお願いするよ」と告げる。あくまで心の中での台詞だが。
 すると――

「……お客様、申し訳ありませんが、これはお使いになれません」
 はいぃ?
 い、いや、だって、これ、500円券でしょ?!

「ですけど、これは、2名様以上の場合のみご使用になれる券ですので……」

 慌てて券を見直すと、確かに隅っこのほうに、小さい字で申し訳程度に、そう明記してあった。

 でも……その制限は反則だぞ、はっきり言って。私がよく読まなかったせいとかそういう問題じゃなく。だいいち、券をくれた時はそんなこと一言も言ってなかったではないかっ。
 きっと他にも続出しているであろう犠牲者たちを募って、何らかの抗議行動を……と途中まで考えたあたりで飽きてやめました。
 たかが500円、されど500円。痛い。ごちそうの味なんて、反動でもう忘れちゃったよ。むむう。


02.04.24 多重ミス
 某スーパー(別名ジャスコ)のレジ前、会計待ちの列。私の前にいたのは、小学1年生くらいの少年とそのお母さんの二人連れであった。混雑するレジ、列はなかなか進まない。そのうちに少年は、レジ前に陳列されていた新商品の菓子を発見した。それには『マンゴーポッキー』と書かれている。

「おかーさーん、マンゴーポッキーだって。どんなんだろ。マンゴージュースなら飲んだことあるけど」
「そうねぇ、マンゴーのポッキーなんでしょ」
 そんな適当すぎるお母さんの返事にもめげず、
「ふーん」と、少年はパッケージに描かれている果物を指差して、こう問い掛けてきた。

「……じゃあ、これがリンゴなの?」

 お母さんは虚を突かれたように、
「ええ? 違うわよ、だからそれがマンゴーなんでしょ」
「えっ、だって、ここにそう書いてあるよ」
 不満そうにパッケージのロゴを一文字ずつ指でなぞった末、少年はようやく、

「あっ、ほんとだ。これはグリコだった!」

 間違えすぎだろ。完全にマンゴーがどっか行っちゃってます。ジュースのほうには何が入ってると思ってたんだ、少年。


02.04.27 花見のあと
 なんだかもう自分のハンドル名を「ガチャピン」に変更してしまおうかと真剣に検討している今日このごろの私。何しろこの日参加したオフには70名もの人々がいて、その多くの方と言葉を交わしたわけだが、その中で「まきひささん」と呼ばれた記憶がほとんどない。あの恐竜だかイモ虫だか分からないような謎めいた生物の名前の方が数段通りがよく、まだほとんど話したこともない人ですら「おい、ガチャピン」と呼びかけてくる。着ぐるみも着てないのに。今日は。

 でも、初対面の、あるいはそれに近い人が大部分であるこうした会において、どんな形であれ覚えやすいポイントを持っていたというのは良かったと思う。ネタにもなるし。もともとコミュニケーション能力の低い私にとっては、些細なきっかけでも有り難い。そういう意味ではガチャ様の存在に感謝したい。

 そうはいっても70人、3つのフロアにまたがった会場、3時間という区切りの中で、どう立ち回っていいか途方に暮れがちだった。せっかくだからなるべくたくさんの人と交流を持ちたいと思い、一ヶ所に定住せずあちこちの人の輪に顔を突っ込んで回ったのだが、もともとそういうことが得意な人間ではないので、アルコール大量摂取による強引なテンション上げは欠かせなかった。
 羽目を外しすぎて顰蹙を買ったりもしたけれど、結果的には色々な人と言葉を交わすことができ、新鮮な喜びと笑いに満ちた会となった。一緒にいて気持ちのいい人たちばかりだったので、できれば間を空けずにまた会いたいと思う。

 会の後に参加者リストを見直したら、名前を見ても顔さえ思い浮かばない人がかなりいたり、また、少し会話したことで興味を引かれて、改めてサイトを見てみたら、もっと話したかったことが色々と浮かんできたりと、残念なこともあるけれど、たった3時間でそれは欲張りすぎというものだろう。70人だから単純計算でひとりあたり3分もない。50時間あっても足りない気がする。

 企画者である真昼さん、スタッフの皆さん、そして私なんぞと遊んでくれた皆さんに、心から感謝の言葉を贈ります。――ありがとうございました。


02.04.28 ネムタミン分泌
 前日の壮大なオフ会のあと、二次会に参加したい気持ちをぐっとこらえて帰宅したら、深夜0時近い時刻になっていた。当たり前のようにPCの電源を入れて、着替えたり布団敷いたりしながらネットをぼんやり巡回していると、もう1時である。そして私はこれからの現実に思いを馳せる。――明日の朝は、5時に起きなければならない。足柄山へ行くのだ。
 正直、だりーなーと思いつつ、しかし寝ないわけにもいかないので、なんだかんだで2時には布団に入った。だが、オフ会の興奮の余韻が残っているのか、それとも明日のことで緊張しているせいか、なかなか寝付かれない。眠らなければと思うほど目がさえる。仕方がないのでいったん起き出して、またネットをだらだら見ながら、眠気がくるのを待った。いっそ徹夜することも考えたが、実際に眠りに就けたのは4時にもなろうかという頃であった。その後、たった1時間で奇跡のように目覚められた自分を褒めてやりたい。

 6時に駅で待ち合わせたバンドのメンバーの車に乗り、一路足柄へ向かう。首都高と東名を乗り継いで2時間半ほどの道中、助手席に座っていた私は、今ごろやってきた睡魔と激闘を繰り広げるハメになった。人に運転してもらってる横で、自分ひとりぐーぐー寝るわけにもいかない。しかし、何もない広い道路を淡々と走り続ける高速道路はそうでなくても眠くなる上に、窓から差し込む春の日差しの穏やかさと相まって、助手席には圧倒的な安眠環境が造り上げられていった。
 ともすればカクンと意識が途切れてしまいそうになるのを、歯を食いしばって必死に耐え、目的地の足柄PAにようやく到着した時は「命拾いした」とさえ思ったものである。

 足柄PAは宿泊施設まであるかなり大規模なパーキングエリアだ。その広大なオープンスペースの一部を借りて、私の参加するバンドが演奏させてもらうことになっていた。
 演奏は午後から始まったが、つとめて客観的に見て、大きなミスもなく、内容は良かったと思う。特に楽器の皆さんは非常に安定した演奏だった。
 ただ、前回同様、観客はほとんどいなかった。PA自体にはかなりのお客さんが来ていたのだけど、私たちの前で足を止めて聴いてくれるのはごくわずかで、まず素通りである。私の歌声なんかはともかく、楽器の演奏は聴くに十分値するものだったはずなので、ちょっと残念。そのぶん緊張しなくて楽だったとも言えるのだが。場所も場所だし、巧拙の問題じゃなく、単純に関心を引かれなかったというのが実際のところだろう。

 あと、しんどかったことが二つ。まずなにより、睡眠不足のために体力がなかったこと。7曲で約20分の演奏を、夕方までに4回行なったため、精神力も消費し、後半はかなりへろへろであった。
 もうひとつは、このPAのオーナーさんからいただいたトレーナーを着て歌わなければならなかったことである。このPAの中央に森永レストランがあることからも分かるように、スポンサーは森永であって、私が受け取った白いトレーナーには、チョコボールのキョロちゃんの絵がでっかくプリントされていたのだった。義理立ての意味もあって着ないわけにもいかず、かなり恥ずかしかった。まあそれも後半になると吹っ切れて、自分から積極的に着て歌ったりもしていたけれど。

 ともかく目的を果たした後、家路に向かう高速道路の車中では、さらに増幅された睡魔大王に襲われることになった。事故渋滞17kmとかとんでもないことになってるし、その眠さたるや筆舌に尽くしがたい。夜の9時ごろ帰り着き、速攻で寝て、そのまま次の日の昼まで死んだように眠り続けた。眠り最高。眠るために生きてます。



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