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03.03.27 | ・ | 相変わらずの僕ら |
大学時代の同級生同士でちょっとした集まりでもやろうということになり、旧友たちと連絡を取り合ったりしている。 この日は静岡に住むSさんと、久しぶりに電話で長話をした。彼女はこの日記にも幾度となく登場しているが、とにかく風変わりな女性である。どう変わっているのか、それは以下の会話を読めばある程度ご察しいただけるかと思う。 「――というわけで」私は言った。「そういう日程で集まろうということになったわけだけど、予定は大丈夫?」 「いいわよー」 「即答だな。4月の週末だっていうのに、予定は全然ないのか」 「まったくないわねー」 静岡から東京まで出てくるというのに、なんだか隣町でも遊びに来るようなお気楽な口調である。いや、この妙に脱力感あふれる喋り方が、Sさんの昔から変わらぬ特徴でもあるのだが。 「……そ、そうか。それはそうと、○○さんの連絡先が知りたいんだが、Sさん、知ってる?」 「んー、分かると思う。確か今年もらった年賀状に書いてあったはず」 「そか、よかった」 「でも……その年賀状がどこにあるかよく分からないのよねー。たぶん、捨ててはいないと思うんだけど」 「今年の年賀状を捨てる奴がいるか! いったいあんたの部屋はどんな状態になってるんだ」 「ものすごいことになってるわよ。手の届く場所にどんどんモノを置いてっちゃうから、いろんなモノが山積み状態。整理整頓とは無縁ね。そもそも私、家事とかには向いてないの。だから結婚する気もない」 「へ? でもちょっと前までは、お見合いしたりとか、やたら結婚願望強かったじゃん」 大学を卒業してから、なんだかんだでもう10年近く経とうとしている。男女問わず結婚を意識しておかしくない年齢なのだ。というより今はむしろ同級生の中でも、結婚してない方が少数派だったりする。 「あーそれは、仕事がしっかり決まってなかった頃のことね。仕事すんのヤだったから結婚しちゃえ、って」 「逃避か」 「そ。でも今は実家に住んでて仕事もお金もあるし、楽で楽で。今さら家庭持つなんて考えられないわ。相手がアラブの大富豪とかなら結婚してあげてもいいんだけどねー」 ……。“してあげてもいい”ってなんなんだ。だいたい今どき『アラブの大富豪』っていう発想も相当どうかと思う。 「あと私、育児にも向いてないの。子供キライだから」 「子供がキライ? ……でも、例えば同級生の女の子が産んだ子供を見たりして、かわいいなーとか思ったりはするだろう」 「んー、そーねー、賢くておとなしい子供だったらいいんだけどねー」 「……まあ、どんな親でも賢い子のほうが嬉しいとは思うが……」 「でも私、出産のつらさに10ヶ月も耐えられないわ。きっと4ヶ月ぐらいで我慢できなくなっちゃう」 一時期あれだけ結婚したがってた人が、いざ話を聞くと仕事もイヤ家事もイヤ育児もイヤか。なんだそれは。さすがに私もだんだんイライラしてきたのだが、ここでSさんがまた突拍子もないことを言い出した。 「――でも、もし私が生まれ変わったらどうだかわからないけどね」 「生まれ変わったらって……性格が?」 「ううん、人間じゃなくて、ヒツジとかに。ヒツジだったら、強制的に子供産まされるから大丈夫でしょ? それならいいかな、と思って」 頭がくらくらした。大丈夫、っていったい何がだよ。目的と手段がごちゃ混ぜになって、もはやわけの分からないことになっている。本人にその自覚があるのやらないのやら。 と、会話だけ書いていくと、なんだかものすごくイイカゲンな女性のように思われるかも知れないが、実際その通りである。大学の時からこんな人だ。お互い住んでいる所が遠いから連絡は滅多に取れないのだが、こうして相変わらずのSさんイズム健在ぶりを確認すると、逆になんだかホッとさせられる。 それに、ボンクラ加減では私だって、自慢じゃないがひけを取らない(普通はそんなこと自慢しない)。贅沢は言わないので、賢くておとなしくて若くて美人なアラブの王女様、私に求婚してきなさい。いつでも応じる用意は出来てるから。 |
03.03.26 | ・ | ヘビーライス |
家賃を振り込みに銀行へ行った帰り道、米の蓄えが尽きていることを思い出し、私は近所の某大手スーパー(別名:ダイエー)に寄った。 とりあえずこまごまとした食料品や飲み物などを先にカゴに入れ、最後に5kg入りの米袋を選び取る。この順番でレジへ向かえば、重い米袋を持ったままいつまでも店内を歩き回らずに済むわけだ。お買い物歴の長い人間が培った叡智による、実にクレバーな戦略と言えよう。 さて無事にレジを通過することに成功した私だったが、ここでまたつまらないことを思い出してしまった。そういえば洗面所で使う雑貨にひとつ、取るに足らないものではあるが買っておきたいものがあったのだ。『歯ブラシ立て』である。だがそれはこの1階にはなく、まず3階の日用品コーナーまで上らなくてはならない。 とはいえいったん思い付いてしまったことでもあるし、ものはついでなので、両手に買い物袋を提げたまま私はエスカレーターを駆け上がった。歯ブラシ立てを求めて。 しかし、この歯ブラシ立て探しが、思いのほか難航する。売り場が分かりにくいことに加えて、スーパーの魔力とでも言うべきか、探しているうちに他の商品にまで目移りしてしまうのだ。そういえばこんな大きさの皿も欲しかった、そういえばMDを整理するケースも欲しかった。そんなふうに本来の目的も忘れかけて売り場をあちらこちらうろついているうち、異常に疲れてきた自分に気付く。原因はもちろん、買い物袋が重いためである。 5kg入りの米袋といえば、どう少なく見積もっても重さ5千グラムは下らないと考えていいだろう。それを持ったまま歩き回ったのだから、消費した体力は大変なものだ。のみならず、気が付いたら歯ブラシ立てだけでなく、皿だのフォークだのといった想定外の商品まで購入してしまっていた。 磨き上げたはずの叡智や戦略は一体どこへ行ったのか。スーパーの恐るべき魔力に人間が打ち勝つには、まだまだ修行が足りないと言えそうである。 |
03.03.25 | ・ | 素人には無理な仕事 |
蛍光灯の光量を調節するために、居間の天井からぶら下がっている紐がある。これが何ヶ月か前に、根元からぷっつりと切れてしまった。紐の状態を見てみるに、どうやら紐そのものがかなり老朽化してしまっていたようだ。 この段階ではまだ、面倒だけど自分で結び直せばいいやくらいに気楽に考えていたのだが、実はそう簡単にはいかなかった。 天井のライトのカバーを外し、紐がたれていたらしい部分を直に確認してみると、これが想像外にややこしいことになっている。マッチ箱ほどの大きさの電源ボックスのようなものがあり、紐はそこに空けられた、ごく小さい穴の奥のほうから垂れてきていたようなのだ。そこから紐を入れて中で結ぶなんてアクロバティックな事はもちろん不可能だし、かといってこの箱を外そうにも、周りにネジの類がどこにも見あたらない。完全にお手上げ状態である。 まあ蛍光灯全体のオン・オフ自体は他の場所にメインスイッチがあるし、光量を変えるなんて事もそうそうするわけではないのだが、ないよりはあった方は便利なのは確かである。紐だけど。そこでいちおう大家さんに相談だけしてみたところ、さっそく工務店の業者の方を派遣して下さるという。 やって来て下さった業者の方は、ベテランならではの慣れた手つきでライトのカバーを外しながら、 「あー、これ、もしかしたら無理かもって答えといたんだけどねえ〜」 呑気な口調でそんなことを言っている。そ、そんなに困難な事業だったのか。紐が切れただけなのに。 脚立に登った姿勢のまま、半ば強引に電源ボックスを分解し、何とか元通り紐を繋ぎ通そうとする。見ているこちらの方がヒヤヒヤする作業だ。いつかバランスを崩して脚立から落ちそうで気が気でならない。 しばらく悪戦苦闘していた業者さんだったが、結局「この体勢では不可能」という結論に達し、なんと蛍光灯の基盤全体を天井から取り外して机の上で作業する、という事にまで至った。繰り返すが紐が切れただけなのに、とんでもなく大袈裟なことになってしまった。 最終的には無事に紐も繋がり、光量の調節も自在に出来るようになった。業者さんには大感謝である。 しかしそれにしても、紐を付けるだけでここまでの大工事になるとは、よもや業者さん自身も思ってはいなかったのではあるまいか。同じ事を私がやろうと思ったら、まず何らかの電気工事の資格を取ることから始めないとならないだろう。私も今後はうかつに紐を切らないよう、用心して生きていこうと思う。 |
03.03.24 | ・ | それが男の生きる道 |
「あ、髪、染めました?」 行きつけの美容院に入った瞬間にそう言われた。ここは比較的料金も安く、夜遅くまで開いているので個人的に重宝している店である。 私が髪を染めたことを見抜いたのは、いつも私の担当をしてくれている男性の美容師さんだった。 「ええ、ちょっとだけ地味に染めてみたんですけど……」 「いやあ、職業柄、やっぱり真っ先にそこ(頭)に目がいきますからね。雰囲気が違うなって分かりますよ」 「でも、さすがですね。染めてからもう2〜3週間くらい経つのに、友人たちは誰一人気付きませんでしたから」 「……そ、そうですか? うーん、でも、これくらい変わってれば、誰か気付いても良さそうなもんだけどなあ……」 ところで私は髪を切られているときにあれこれ話しかけられるのが鬱陶しくて苦手なのだが、この美容師さんは例外で、年齢も近く話題も合うので話が弾む。何しろわりとマニアックな映画やゲームのことに詳しいというのが嬉しい。 前回はゲーム『真三国無双2』の、今回は映画『二つの塔』の面白さについて熱く語り合った。話の方が面白かったので、自分の頭にどんな細工をしてもらったのかよく覚えてないくらいだ。逆に言うと、あれだけ喋りながらハサミも動かせる美容師さんの腕というのはやはり大したものだとも思う。 さてこの美容師さん、今は彼女さんと一緒に暮らしてるそうなのだが、ゲームに熱中しているとどうしても彼女をほったらかすことになる。特にロールプレイングゲームなどは二人一緒に遊ぶというわけにもいかないので尚更である。 「でも、最近『キングダムハーツ』ってRPGをやってるんですけど」美容師さんが言う。「これがけっこう面白いんですよ」 「あー、評判いいみたいですね、あれ」 一応ご存じない方のために解説しておくと、ファイナルファンタジーを作った会社のアクションRPGである。 「で、あれって、ディズニーのキャラクターたちがいっぱい出てくるじゃないですか。だから彼女が横で見てても退屈しないみたいで、こりゃーいい作戦だなと思って」 ほうほう、そりゃまたほのぼのしてて羨ましい限りですのう。……ちぇ。 「でも、前はRPGなんて、やるたんびにケンカしてましたよ、ドラクエとかね。ドラクエなんて、やり出したら止まらなくなるに決まってるじゃないですか。そしたら彼女、 『あたしとドラクエ、どっちが大事なのっ!?』 とかなんとか言い出して」 ……気のせいか? それとそっくりのセリフを、つい最近、別の女性からも聞いた気がするんだが。 「それで自分も負けずに、『男がドラクエやるっていうのはそーゆーもんだっ』って言い返したんですけど、まあドラクエがきっかけで破局、とかなったら困るんで、すぐ引き下がりましたけどねー」 面白すぎる。もうちょっと話を聞いていたかったが、これ以上続くと私の頭髪のほうが先に尽き果ててしまうので、やむなく引き下がった。次からはもっとたっぷり頭髪を蓄えてから臨むことにしたい。 |
03.03.22 | ・ | たったひとつの |
私のアパートのすぐ近くに比較的規模の大きい公園があり、中にはちょっとした動物園まである。リスやプレーリードッグのような小動物から、サル、クマ、ヤギ、ヒツジ、色とりどりの鳥、ペンギン、ワラビーなど、多種多様な生き物たちがにぎやかに暮らしていてなかなか楽しい。しかも無料である。 私のアパートに初めて遊びに来た友人をここへ連れて行くと、元手が全くかからない上、たいていの場合かなり喜ばれるので、自分の手柄でもないのに得した気分になれる。 この日一緒に行った友人も例外ではなく、あちこち嬉しそうに見て回っていた。ただ、時節柄か、レッサーパンダとアナグマが巣穴にこもったきり顔を出してくれなかったのが残念だった。 その後、レストランで食事を摂りながらいろいろ話しているうち、お互いの住みかについての話題になった。友人も1人暮らしで、私はまだそのアパートに行ったことがないのだが、間取りを図に書いて教えてもらったところによると、単純に見ても私のアパートの倍の面積はありそうである。しかもユニットバスなどではなく、きっちり風呂・トイレが別。そのわりに家賃は1万ちょっとしか違わないのだから、探せばあるものである。正直羨ましい。 しかし、私が今のアパートを借りたのはもう4年も前のことだが、今もし同じ条件のアパートをこのあたりで探そうと思っても、たぶん家賃はもっと上がっているだろう。駅前は急激に開発が進んだし、人口そのものも増えている。それを思えば、今の家賃でここに住めていること自体を幸運と考えるべきなのかも知れない。部屋選びなんて結局はタイミングが全てだしね。 そんなことを考えながら、何気なく友人の似顔絵を落書きしていたら、それを見た友人が何故かむやみに感激してくれて、こちらがかえって戸惑ってしまった。紙ナプキンにシャープペンシルで、マンガっぽくデフォルメした、ほんの適当に描いただけの似顔絵なのに。 「そういう即興で描いてくれたものだからこそ大切」って。捨てられないって、そう言ってくれた。 こんな事くらいでそんなに喜んでもらえるなら、それこそ似顔絵くらいいくらでも描いてあげようという気にもなるが、そういうものでもないんだろうなあ。 |
03.03.20 | ・ | 了解済みの事項 |
もっと呑気に、もっと無神経に生きられたら、人生はどんなに楽だろう。 初めから了解済みの事項を改めて確認しただけなのに、どうしてこんなに胸が痛むのか、自分でも分からない。 そして、自分のそんな姿を相手に見せてしまっていることで、相手を傷付けていることがわかっているのに、それをどうすることも出来ない、きっかけを見つけられないもどかしさがまた心を苛む。 「おまえは今のままでも十分無神経だ」 人はきっとそう言って嗤うだろう、だけど。 |
03.03.19 | ・ | ホットしながら |
まあなんだかんだでまた『旅の仲間』を見直して、毎度毎度同じとこで同じように感動したり落涙したりしてる私である。 『二つの塔』を見てから改めて見直すと、やはり『旅の仲間』はあくまで前フリというか、ほんとに序章に過ぎなかったんだなと感じる。もし『旅の仲間』だけ見て「『ロード・オブ・ザ・リング』ってイマイチだなー」と思ってしまった人も、いちおう『二つの塔』までは見てみて欲しいところ。『旅の仲間』で感じたはずのフラストレーションや消化不良感も一気に解消されるはずなので。 ……とか思いつつふと横を見ると、一緒に見ていたはずの友人が寝息を立てている。いやまあ、映画の趣味は人それぞれだから仕方ないけれども、この映画最大の見せ場とも言えるガンダルフとバルログ一騎打ちのシーンに限って寝れちゃうなんてどーゆーことじゃ! その他のシーンではちゃんと起きてたのに。 もともと寝不足ということもあったようだが、やはり最大の原因は、コタツに入りながら見てたという事だろう。まさに最強の催眠兵器、コタツである。軍事利用しようとする科学者が現れなくて本当によかった。おそらく軍事費が無駄になるから。 |
03.03.17 | ・ | 二本立て |
二人目の子供が生まれて以来、ししょう氏はろくに外に遊びに行くこともままならずにいる。何しろ映画一本観に行く時間も作れないというのだから大変である。そんな恐妻家……もとい奥様思いの彼を何とか引っ張り出し、さらにK氏も加えたいつものメンバーで、この日は千葉県の妙典まで『ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔』を観に行った。 詳しい感想は追ってMovieのページに書くことにするが、とにかく壮絶に面白い映画だったということだけは明記しておく。もともと指輪物語をはじめとするファンタジー全般のファンであるししょう氏も、パワフルな映画が好きなK氏も満足している様子だった。 その後、西船橋に移動し、ちょっと高級な感じの串焼き屋に入る。私がウーロン茶ばかり飲む一方で、残りの二人は日本酒ばかりをもの凄い勢いで呑みまくっていた。 しかし私がいつも感心するのは、そのわりにこの二人が酔った気配を一向に見せないところである。いや実際はいつもより饒舌になったりしてはいるのだけど、いわゆる酔っ払い状態になったりはせず、論理的に物事を考え喋る脳がちゃんと活きているのだ。私なんて二合も呑んだらもうへろへろ状態だっていうのに、おまえらいったい何升呑んでんだって時になっても、『自閉症とアスペルガー症候群』だの『心理カウンセリングの現状』だのといったテーマで熱く論じ合ったりしているのである(もっとも裏を返せば、酒の席でなんでそんな話してんだよって気もするのだが)。 それぞれ明日の仕事のことなどもあり、早めの解散となったのだが、一滴も酒を飲まなかったはずの私が、帰りの電車でうっかり寝過ごしてしまいそうになった。 東西線の恐ろしいところはとにかく果てしがないところで、もしうっかり眠り込んだら最後、とんでもない地点まで運び去られてしまう。いつぞやのように、気が付いたら三鷹にいた、なんてことになったら洒落にならないので、歯を食いしばって睡魔と戦いつつ西葛西まで帰り着いたのだった。 とはいえ三鷹まで行ってたらそれはそれでまたネタになるので良かった、かも……(なわけないだろ)。 |
03.03.10 | ・ | not alone |
また例年通り、来なくてもいいのに誕生日がやってきた。ついに30代へと突入してしまった去年の時には相当凹みもしたものだが、それにたかだかプラス1される程度の今回となっては、私もすっかりたくましくなり、もはや大した心的ダメージなど無い。無いと言ったら無いのである。ほんとだってば。 とはいえさすがに、誕生日をひとり暮らしの部屋で過ごすのは侘びしすぎる。丸ごとサイズのケーキを一人で食べるのも風情があっていい、なんてことを言い出す人もいたが、そんなことをしたらかえって侘びしさが増すばかりだろう。それなら私はむしろ焼肉を一人で食べたあげく食い逃げする方を選ぶ。 ネロとパトラッシュにすら同情されかねない誕生日の夜を迎えつつあったその時、しかしその悲愴な空気を感じ取ってくれたのか、一人の友人が私のアパートまで遊びに来てくれた。 特別なイベントがあったわけでもなく、簡単な食事と、小さいケーキをひとつずつ食べるだけのほんのささやかなパーティだったけど、でもすごく嬉しかった。ビデオ見たりしながら夜中までまったり過ごすいつものパターンも、友人がいてくれたおかげでずっと暖かく充実したものに感じられた。 寒風の吹きすさぶ中、わざわざやって来てくれた友人には、ほんとに感謝している。お返しは何がいいだろう。見返りを求めるような人じゃないって事は分かってるけど、でもありがとうって言葉だけじゃとても気持ちを伝えきれない。とりあえず友人の誕生日までに、ケーキでも焼肉でも作れるようになっておこう(普通に美味しい店に連れてった方が喜ばれる気もするが)。 しかし、チーズフォンデュってああいう食べ物だったんだな……31の誕生日にして初めて知りました。 |
03.03.02 | ・ | キミはマシなほう |
思いがけないタイミングで、全く期待していなかった相手からの電話がかかってきた。それは短い電話だったけれど、私が抱えていたわだかまりをすっと溶かしてくれる、優しい電話だった。わだかまりの原因が、例によって私の一方的な思い込みから来ていたことについては、苦笑するしかなかったけれど。 でも自分が誰かから少しでも特別な存在だと思われることは、今の自分にとって十分すぎるほどの力になる。胸に暖かさを与えてくれる。それがたとえ「一番」でなくても。
今日は久しぶりにスタジオでバンドの練習だったわけだけども、反省会を兼ねた練習後の飲み会で、MDに録音していた練習時の音を聞かせてもらうことになった。まだ開拓したての曲などもあり、客観的に自分の歌を聴く機会があまりない自分としても興味津々である。 イントロがはじまり、やがて自分のパートが始まったのだが…… 「…………ッ」 絶句である。悶絶ものである。謙遜でもなんでもなく本当に酷いのだ。自分自身ではそこそこ歌えていたつもりだったということと、実際の音とのギャップがまたどうしようもなく私を凹ませる。 もし自分の部屋でひとりで聴いていたなら 「わかった! もうわかったから許してくれ!」 と泣きながら荷物をまとめて即座に北国へと旅立っていたところだったが、場所は人で賑わう公共の居酒屋だったのでそうするわけにもいかず、私はひたすら音の拷問に耐えながら、唇を噛みしめつつMDの終わりを待ったのだった。 「だめだこりゃ」いかりや長介の私が言う。 「あー、確かに、今日はちょっと声出てなかったかもねー」 と、メンバーの一人がフォローしてくれたが、正直言ってそういうレベルとは思えない。 するとキーボード担当の先輩が、 「いや、キミはまだマシな方だよ。今日はバンド全員ボロボロだったもん」 「はあ……」マシな方、というのも微妙な表現だ。 「自分の音を自分で聴くとビックリするよねぇ。演ってる時は気持ち良くても、あとで聴き直すと、こんなんだったのかよ! って」ギターの先輩が言った。 「ほんとそうですね……。でも、反省材料になるって意味では大切ですよね」 「うん。まあ、でも、俺はもう(そういうギャップに)慣れちゃったけどね、わはははは」 慣れてどうする、慣れて! まあ先輩ぐらい基本的な技量があれば多少のミスは流して済ませられるんだろうけど……。はああ。 しかし新曲もままならぬそんな状況のまま、実は今日また一曲、課題曲が追加されたのだった。しかもメンバーの身内の披露宴で演奏するから、ああとほんの2・3ヶ月のうちに仕上げなければならないという。知らないうちに物凄い話になっている。 ギターの先輩は「俺のパートは大してやることねーから」と、他人事のようにへらへら構えていたが、キーボードの先輩は全く対照的に「こんなもんできるわけねーだろっ」と、半ば憤然とした表情で頭を抱えていた。私は好きな曲だけど、といって歌い切れるとは限らないし、まして今日の自分の録音を聴いて意気消沈している矢先でもあって……どうしたものやら。 とかなんとかぐろぐろ悩んでいたら、いつの間にかドラムの先輩とその奥さんが夫婦げんかを始めていた。けんかと言っても単にじゃれ合っているようなもので、メンバーの間では見慣れた光景。からかい半分のツッコミを横から入れながら笑って見ている。 今回のキッカケは、先輩の趣味の一つであるレコード収集が高じて、置き場所に困っているというのが奥さんの言い分だった。何しろレアものも含めて3千枚以上あるというから凄い。 「いいかげんに何とかしないと、ブックオフに売るか捨てるかしちゃうわよ!」 どこまで本気だか分からないようなことを彼女は言う。まあ確かに部屋の整頓をする身としてはもっともな意見と言えなくもないが、残念ながらバンドのメンバーは全員ドラマーの味方だ。 「無茶な。売るだけでも何十万って値打ちのものだぞ?」 「レコードにはコレクションとしての意味があるんだ。日本人のワビサビってもんを分かってないなぁ」 「売るならブックオフじゃなく、せめてレコファンにしてくれ」 しかし奥さんは納得しない(こんなテキトウな説得では当たり前である)。 ギターの先輩はさらに言った。 「レコード収集の趣味が一つのはけ口になってるんだからさあ、それを取り上げちゃったら、もしかしたら浮気に走るかも知んないぜ?」 「できるもんならやってみなさいっ」 奥さんも負けじと切り返す。そして、とどめの一撃。 「あたしとレコード、どっちが大事なのっ?」 「そーゆー問題じゃないだろっ!」 全員から同時にツッコミが入る。完全にコントである。途中でだんだんアホらしくなってきた私は、キーボードの先輩にこっそり、 「帰ってもいいですか」「いや、終電まであと2時間ある、付き合え」「ぎゃー」 しかし、こんな話を結局30分近くも続けたというのに、解散時には夫婦仲良くにこやかに帰っていったのであった。なんだかんだでああいうやり取りを楽しんでるんだろうなあ。 |
03.03.01 | ・ | どっちがノイズ? |
自分の気に入った曲を自分なりに編集するのは楽しい作業である。曲の順番まであれこれ考えて、試行錯誤の末に「会心の出来」と思えるようなCDやMDが出来た時は、ひとり悦に入ってえんえんヘビーローテーションで聴き続けてたりする。もっとも「会心の出来」も何も、所詮は私個人の趣味のカタマリでしかないのが残念なのだが。 今日は雨が降っていたということもあって、部屋の中でお気に入りの音楽を鳴らしつつ自分も合わせてずっと歌い続けることで雨音のノイズに対抗していた。どっちがノイズだかわかりゃしないが、明日は久しぶりのスタジオ練習があるので喉を作っておく必要があったのである。としておく。 ちなみに曲目は以下の通り。 1.クリスタル・ゲージ / Garnet Crow 2.ババロア / Spitz 3.スノースマイル / Bump of Chicken 4.My Gift to You / Chemistry 5.HERO / Mr.Children 6.Search the Best Way / Porno Graffiti 7.朝焼けの歌 / 川村結花 with 堂珍嘉邦(Chemistry) 8.Birthday / スガシカオ 9.ホリデイ / Bump of Chicken 10.ブランコ / Siam Shade 11.世界に一つだけの花 / SMAP 12.ヘミソフィア / 坂本真綾 13.All of … / 池田綾子 14.いつか来た道 / 川村結花 15.Sha la la / Skoop on Somebody 所々に妙に古い曲が混じっていたりして、我ながらものすごい節奏のなさ&ミーハーぶりである。でも通して聴くと統一感があって個人的には気に入っている。 ケミストリー自体は正直嫌いなのだが川村結花やS.O.Sと組んだ楽曲だったので結果的に2曲も入ってしまった。同じようなことがSMAPの曲にも言える。槇原敬之がセルフカバーしてくれないだろうか……。 ガーネットクロウの新譜(とはいってもけっこう前だが)は久しぶりにいい曲だと思った。 でもほんとにお気に入りの曲を流しているとつい聞き入ってしまうので、何か作業をしている手がいつの間にか止まってる事が多いのが難といえば難。音楽聞く時は音楽だけに集中するようにしている。
「傘をささずに歩くのが好きなの」と言った そんなきみの顔を、こんな雨の日には思い出す ふと立ち止まり、傘を降ろし、空を見上げ 冷たい雨粒が顔を、躯を弾くのを感じてみる 夜の雨空に、何も見えたわけではなかったけれど 胸の中の何かが洗われていくような気がした このまま傘をささずに部屋まで帰ろう きみの好きだった歌を口ずさみながら |
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