THE MAKING OF STAR WARS SAGA

 『スター・ウオーズ/新たなる希望』のオープニングはとてもショッキングだった。 21世紀フォックスのお決まりのファンファーレの後、ブラックアウトしたスクリーンに、昔話やお伽話にありそうな始まりの言葉、"A long time ago in a galaxy far, far away"の文字が映る。そして、静まり返った暗闇からいきなり金管楽器のメインテーマ曲の大音響が響き渡り、それと同時に"STAR WARS"のロゴが画面を覆い、素早く背景の宇宙の闇の奥にフェイド・アウトして行く。この瞬間背筋がゾクゾクし、鳥肌が立ち、毛が逆立ち、涙が眼底に滲む思いを何度したことか・・・

 スイッチ・オン。始まりから一気に興奮状態に入ったままプロローグの黄色い文字がまた宇宙の深淵に消えて行く。それが過ぎたあと、音楽も穏やかになり、スター・ウォーズの物語りの世界にぐんぐんと引き込まれて行く。クラシッカルなシンフォニーのリズムが壮大な宇宙とその物語りに深みを与える。 スター・ウォーズ素晴らしさはジョン・ウイリアムズとロンドン交響楽団なくしては語れない。

 ジョン・ウイリアムズは、スティーブ・マックイーン主演の映画『華麗なる週末』(1969)でジェリー・ゴールドスミスの代理を務めてから、『チップス先生さようなら』(1970)の音楽を手掛け、『屋根裏のバイオリン弾き』(1972)で初のアカデミー賞を受賞。その後、『ポセイドン・アドベンチャー』(1973)、『タワーリング・インフェルノ』(1974)と活躍を続け、スティーヴン・スピルバーグ監督の『ジョーズ』(1976)で2度目のアカデミー賞を獲得した。

 『スター・ウォーズ』の音楽担当を探していたルーカスは友人のスピルバーグからジョン・ウイリアムズを紹介され、彼と映画音楽での共感を得る。ルーカスは1970年代当時の映画音楽のトレンドであったエレキ・ギターやシンセサイザーを使ったいわゆる電子音楽を全て排除したかった。そして、当世代にとっては親しみがあり心に語りかけて来るようなクラシック音楽がこの映画には不可欠だと考えていた。それはハリウッド全盛期だった頃の大迫力で壮大なスケールのシンフォニック・スコアの復興という意味もあった。宇宙や未知の惑星を舞台とするスペース・オペラにはクラシック音楽を使用することがより良い選択だと言う事は、スタンリー・キューブリック監督の『2001年宇宙の旅』が実証していた。ジョン・ウイリアムズは言う。「画面 でどんな異様な世界を見ていても、耳なれた感じの音楽が聞こえてくれば、そこに温もりと、人間的な要素が加わる」。

  ルーカスは最初は『スター・ウォーズ』のスコアにリストやドボルザークの様なクラシック音楽を使おうと考えたいた。しかし、ウイリアムズの提案でオリジナル音楽をクラシック専門のオーケストラをが演奏する事になった。そこで、ウイリアムズは彼の親友でありロンドン交響楽団の音楽監督であるアンドレ・プレヴィンにこの話しをし、ロンドン交響楽団の起用となった。

  1975年、ウイリアムズが最初に作った曲は有名な『酒場のバンド』"Cantina Band"だった。この曲は試作であったが、ルーカスがとても気に入ったので、タトゥイーンのモス・アイズリーにある異様なエイリアン達で賑わう酒場のシーンでエイリアン・バンドの演奏に使われた。

  1977年、映画の撮影が終了してから本格的な作曲活動が始まった。ルーカスとの話し合いによりイメージを膨らませたウイリアムズは、出来上がったフィルムを見ながら作曲をし、なんと2ヶ月という短期間でこの映画にぴったりの音楽を完成させた。

 ウイリアムズが手掛けた映画音楽は次々とヒットした。サルキンド兄弟が映画で復活させたマーベル・コミックスのヒーローをクリストファー・リーブが演じた『スーパーマン』シリーズ、宇宙人と人間の交流を描いたスピルバーグ監督の『未知のと遭遇』や、ルーカス製作総指揮をしたハリソン・フォード主演の人気シリーズ3部作『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』、『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』、『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』と冒険活劇的要素を持った映画にウイリアムズのダイナミックな音楽は必要不可欠なものとなった。特にスティーヴン・スピルバーグの映画はほとんどジョン・ウイリアムズが音楽を担当した。そしてスピルバーグ監督の少年と地球外生命体の友情を描いた不朽の名作『E.T.』の音楽でウイリアムズは4度目のオスカーを受賞した。

  彼の作曲スタイルはワグネリアン。つまりワーグナー派であり、登場するそれぞれのキャラクターやプロットに固有のテーマ曲的リズムを割り当てる手法を用いた。『スター・ウォーズ/新たなる希望』のサントラには曲名には無いが、ルークのテーマの旋律がいたる所で用いられている。

 『帝国の逆襲』でウイリアムズは大きく違った二つの新しいテーマ曲を作った。それは『帝国軍のマーチ』(ダース・ヴェイダーのテーマ)"The Emperial March(Darth Vader's Theme)"と『ヨーダのテーマ』"Yoda's Theme"だ。『帝国軍のマーチ』は圧倒的な権力を持つ邪悪なダークサイドを象徴する音楽だ。それと対極の『ヨーダのテーマ』は穏やかで明るい正義のジェダイを象徴している。

 シリーズ3部作を締めくくる『ジェダイの復讐』の音楽でも、ウイリアムズは新しい試みを行った。クライマックスのルークとヴェイダーの親子の運命の戦いのシーンで男声コーラスによる神秘的な感じを上手く表現している。また皇帝の邪悪で悪魔的で暗く思いイメージも男声コーラスが非常に効果 的に使われている。

 ジョン・ウイリアムズの作曲した音楽はジョージ・ルーカスのイメージ以上の効果 を作品に与えている。ジョン・ウイリアムズはスター・ウォーズ・シリーズの製作において、正にジェダイマスター・ヨーダの様に無くてはならない絶対的な存在かもしれない。