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2021年7月 

 

 

 

 

 

 

「豚舎・設備のお悩み解決!」(97)「新衛生管理基準に合わせた豚舎の改良」

  
 豚熱陽性イノシシがどんどん北上しています。
西日本への広がりは少ないようですが、油断はできません。
今年度になってワクチン接種農場でも豚熱発生がありました。

感染経路は確定できませんが、感染イノシシが直接農場内の豚と接触したとは考えられません。
もし、イノシシが感染源だとすれば、イノシシの糞または唾液の付いた土を小動物または人間の靴に付着して持ち込まれた、と推測されます。

農場周りのイノシシ防護柵は国などの補助があるので、ほとんどの農場で設置済みになりました。
しかし、スズメやカラス、ネズミや猫などの小動物侵入防止対策はまだまだの農場が多く見受けられます。
 防疫のことを考えるとき、私はDREAMS COME TRUEの「何度でも」という歌が頭をよぎります。
その歌詞の中に『10000回ダメでへとへとになっても、10001回目は何か変わるかもしれない』『明日がその10001回目まもしれない』防疫の場合はこの真逆です。
病原体は『何度でも』襲いかかってきます。
今までの対策で10000回節出来たかもしれないけど、10001回目で侵入を許してしまうかもしれません。
それが明日かもしれません。

防疫レベルをステップアップすることで、感染の明日を1年後または数年後に伸ばす努力を日々積み重ねて行くことで感染リスクをどんどん少なくできるのです。
新しい衛生管理基準を見て、「うちでは到底達成出来ない」と諦めているかたもいますが、今すぐ完璧を目指さなくて良いのです。
出来るところから1歩ずつ罪積み重ねていくことが必要です。
 話は変わりますが、先月私の父が新型コロナ肺炎で亡くなりました。
私はウイルスを貰ってこないようにと細心の注意を払ってコンサル活動を続けていましたが、デイサービスの利用者から感染してしまいました。
デイサービスでは利用者の熱を測って熱が無い事を確認した上で迎えの車に乗せます。
しかし、発症前にも感染力を持つ新型コロナウイルスは防ぎきれませんでした。
私と妻も濃厚接触者として14日間の健康観察を受けましたが、感染は免れました。
妻は看護師、私は防疫のスペシャリストですから、感染防止対策意識は高い方だと思いますので、家庭内感染は防ぐことが出来ました。

 さて、本題に移ります。暑くなると豚舎の出入口の扉を開けたままにしておく農場があります。
また、カーテン状にネットをぶら下げて開閉しているところもありますが、隙間が出来るので、スズメや猫は入ってきます。
このケースには入口扉の内側又は外側に網戸を作って取り付けて下さい。



写真1が新築豚舎の入口に網戸を設置した例です。これですと人が出入りするときも開閉しやすいですし、小動物の侵入防止にもなります。
既存の豚舎であっても、現状に合わせた形で製作すれば良いです。


 図2は豚舎間が連絡通路で繋がっている農場の例です。連絡通路は屋根も壁も有り、床はコンクリートで野生動物は入れない構造です。
そこで、連絡通路の入口に長靴の履き替え所を設置して、分娩舎以外は豚舎間を原則履き替え無しで出入りしています。
異なるステージ間での病原菌持込を少なくするために各豚舎の入口には踏込み消毒槽を設置しています。
分娩舎だけは子豚下痢防止の観点から、長靴履き替えをさらにプラスしています。


 図3は豚舎間の連絡通路がコンクリート舗装ではありけども屋外となっているため、各豚舎で長靴履き替えを実施しています。
農場事務所は外来者も入るのでレッドゾーンの位置づけです。
そこで農場事務所から消毒機のところ(衛生管理区域入口)まではサンダル履きで行き、そこで場内グレーゾーン用長靴に履き替えをしています。
仔豚舎と肥育舎1肥育舎2は新しい豚舎なので連絡通路で繋いで、長靴履き替え無しにしています。
この農場では、日本人スタッフ3人+海外研修制4人体制です。去年からこのような長靴履き替えを実施していますが皆さん抵抗もなくまじめに実践しています。
 このような衛生管理のレベルアップはすぐに効果が出るわけではありませんが、今回ご紹介した2農場とも年々少しずつ事故率と薬品費が減ってきています。
衛生管理のレベルアップは豚熱だけではなく、さまざまな病気侵入のリスクを軽減できます。
ある意味保険を掛けているという意識でワクチン抗菌剤費用を防疫費用へシフトしていくことをお薦めします。
これ以上殺処分の豚が出ないことを願っています。

 

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最終更新日 : 2022/01/23