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2021年6月 

 

 

 

 

 

 

「特集:ネスミが入らない豚舎」
 

皆さんは、「豚舎にはネズミが入るもの」と諦めていませんか。
既存豚舎でネズミが住み着いている豚舎からネズミを完全に排除する事はほぼ不可能です。

しかし、諦めるのはまだ早いです。
一旦豚舎を空にしてリフォームする場合や豚舎を新築する場合は、ネズミが入らない構造にする事が可能です。

ネズミは病気も媒介しますし、壁に穴を開けて隙間風の原因を作ったり、電線を囓って漏電や火災を引き起こします。ネズミは豚舎にとって百害あって一利無しですから、ネズミのいない豚舎づくりに挑戦してみませんか。
今回はその一助にして頂けるように、私がクライアント様と一緒に取り組んでいるノウハウをご紹介したいと思います。

 まずネズミ防止のし易さで豚舎のタイプを分けますと、一番やりやすいのがウインドレスで糞尿混合溜ピット豚舎です。
その次がウインドレスでスクレーパー豚舎、その次がカーテン豚舎になります。
いずれの豚舎でも基本スタイルとして、豚舎の床面の高さは地面よりも高くすることです。

 

写真1はカーテン豚舎の外観、写真2はウインドレス豚舎の外観です。
床面を高くすることによりネズミがはい上がるアプローチを長くするとともに、人間は靴を履き替えて出入りするという意識を与えやすいですから、防疫的にも有利な豚舎となります。
また、豚舎の周りは砕石を敷くか、舗装にするとネズミが近寄りがたくなります。
写真1の豚舎は外周全て砕石を敷いてあります。
写真2の豚舎は右側がまだ土のままですが、工事終了間際の写真ですのでこの後砕石をしきました。
ネズミは草に隠れて豚舎に近づくので、ただ砕石を敷いただけではダメで、草が生えないように長期間効果が続くタイプの除草剤を散布することをお薦めします。



写真3は古いカーテン豚舎です。豚舎の外周は土のままで草も生えています。
カーテンの下はブロックなので、ネズミは簡単によじ登って豚舎には入れます。
また、手前の溝はスクレーパーで掻きだした糞の横送りクスリューピットです。
屋根は掛かっていますが、土間からはスクリューが見える状態なので、ネズミはここからも侵入することが出来ます。写真1や写真2の説明でコンクリート外壁はネズミがはい上がりにくいと書きましたが、新しく表面がつるつるな状態なら良いですが、古くなると表面がザラザラになってネズミが上れるようになります。



それを防ぐには写真4の様にコンクリート外壁とカーテンの下端の間がガルバ外壁になっていることが重要です。
ガルバリウム鋼板は錆びない限りネズミがはい上がることは出来ません。
この豚舎の立地は岩手県北部なので、カーテンの取付位置が豚房柵より上になっています。
温暖な地方ではカーテンを2段にして開閉面積を多く取りたい事もあるでしょう。
写真5

その場合は、写真5の○印ようにネズミ返しを付ける事が有効です。
写真4の豚舎もガルバ外壁の下端はネズミ返しのようになっています。

写真6

 写真5は工事途中の写真ですがここにも問題がありました。
写真6が同じ豚舎のものですが、断熱ガルバ外壁材の下端とネズミ返しの間に3cm位の隙間があります。
下から覗くと断熱材が見えます。
断熱ガルバ外壁材の高さぐらいまでに雑草が生えていたり、物が置かれていた場合などは、それを伝って来たネズミが、この隙間から断熱材を囓りながら豚舎内に侵入するかもしれません。

写真7 写真8

写真56の豚舎は私が指摘して写真7のようにLSUS板を打ち付けて仕上げていただきました。
写真8の様に隙間無く施工するのが良い例です。

写真9 写真10

 次に豚舎の出入口扉です。写真9が気密性の良い断熱ドアです。
開放豚舎であっても、気密ドアを採用することをお薦めします。
写真1のカーテン豚舎でも気密ドアを採用しています。
既存豚舎で、外の地盤と豚舎床が同じ高さであっても、リフォームの際は気密断熱ドアが有効です。
開けっぱなしにしなければ、ネズミをはじめ、猫や野生動物の侵入を防ぐことが出来ます。
引戸でも隙間が無いように施工すれば鼠の侵入を防ぐことが出来ます。
ハンガードア(吊り扉)は開閉が軽くて使いやすいですが、ネズミ侵入には気を配る必要があります。
写真10は完成間近な豚舎のハンガードアの下部拡大です。
まだ隙間が有り、ネズミや隙間風が入るので、隙間埋めを要請したところです。

 次のポイントはスクレーパー豚舎での糞排出口です。
敷地の高低差を利用して横送り集合スクレーパーで豚舎外へ排出している農場も多いかと思います。
この方式ですと複数の豚舎の糞も1本の横送りスクレーパーで処理できるので、建築コストは安く出来ます。
しかしネズミ侵入防止の観点で見ると、集糞所の排出口から簡単に侵入されてしまいます。
そこで、スクリューコンベアを使った方がネズミ侵入防止を簡単にできます。

写真11
 写真12 

写真13

写真111213がその例です。
写真1112は肥育豚舎1棟から横送りスクリューと立ち上がりスクリューを介してバケットローダーで受ける方式です。
写真11ではスクリューの連結部分にはチェッカープレート製の蓋を掛けて、ネズミの侵入を防いでいます。
写真12は横送りスクリューと立ち上がりスクリューの連結部分を集糞所と一体化した小屋に納めた物です。
集糞所の外壁材は断熱材無しの波板1枚なので、コンクリート壁戸の隙間はコーキング剤で埋めてあります。
写真13は複数の豚舎から立ち上がりスクリューで出して来た糞を、中央集合スクリューで集糞所まで送る構成にしたものです。
まだ工事完成前の写真ですので、豚舎からのスクリュー出口と中央集合スクリューの連結部分の加工は終わっていませんが、ネズミや雨水が入らない様に加工します。

 次は尿配管です。スクレーパー豚舎では汚水配管を伝ってネズミが侵入するリスクがあります。



写真14は豚舎内に尿を集合させる枡を設置して、そこから水中オートポンプで浄化槽まで送っています。
平坦な敷地の農場ではこの方法がお薦めです。
自然流下で浄化槽まで流す場合は、配管途中の枡の蓋に注意して下さい。
手を入れる空洞がある場合は、そこからネズミが入る可能性がありますので、鉄板などを載せておくなどの対策をしましょう。
また、尿配管途中に集尿枡を設けて、ここに水中ポンプを入れて中継する場合は、豚舎から尿が流れ出てくる配管を枡の内壁よりも10cm以上突き出すように施工しましょう(写真15の○印内)。

写真15

枡の壁面ぴったりですと、ネズミが枡の壁を伝い降りて、配管に入ることが出来てしまいます。

 最後に糞尿混合豚舎のピット抜き口の加工です。排出口の上にボール(アポロボールなど)を載せて栓をする形式であればネズミは入れません。
排出口に塩ビ管を立てて、その上端からオーバーフローさせるタイプの場合は、新しいうちは問題ありませんが、塩ビ管の内側にスカムや尿石が付着した状態になりますと、ネズミが登ってくる可能性があります。
この場合も豚舎外の集尿枡の加工を写真15の説明のようにネズミが入れないような構造にしておけば大丈夫です。

写真16はウインドレス陰圧換気の糞尿混合離乳舎で、汚水配管から空気を吸い上げないように工夫した例です。
豚舎の外側に抜き口を作っています。

写真16   写真17

写真17がその内部ですが、中央の排出口に塩ビ管を差し込んで使います。
この排出口の下部には豚舎のピットへ繋がる開口部が有り、そこを通ってきた汚水が写真17の中央にセットした塩ビ管の上端からオーバーフローして排出されます。
この方式ですと豚舎内で水漏れ事故が起こっても豚房の床面まで浸水する心配がありませんし、豚舎のピットへ繋がる開口部は水面の下に隠れますので、換気制御の乱れも起こりません。

 今回ご紹介しました、カーテン肥育舎(写真1411)は築3年が経ちましたが、ネズミの侵入は許していません。
すぐ隣には築30年以上の子豚舎があり、ネズミの巣になっていますが、この肥育舎には入って来られないようです。

また、写真913,14のウインドレス肥育舎は、まだ築1年ですが、こちらも隣にあるのが写真3の古くてネズミのいる肥育舎ですが、ネズミの侵入は許していません。
この農場では築10年のストール豚舎がありますが、同様のネズミ防止施工をしているので、そこにもネズミは入っていません。

 今回ご紹介したノウハウが少しでも皆さんのお役に立てれば幸いです。

 

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最終更新日 : 2022/01/23