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2020年10月 

 

 

 

 

 

 

「豚舎の換気特集」〜カーテン豚舎、四季の換気管理
 

【はじめに】

カーテン豚舎にもいろいろなパターンがあります。巻上げカーテン(下の方から開いてくる)のみの豚舎、巻下げカーテン(上の方から開いてくる)のみの豚舎、カーテンを上下2段に分けて設置している豚舎、二重カーテン(外側が巻下げ、内側が巻上げ)豚舎、断熱カーテン豚舎などです。また、天井の無い豚舎ではモニターにもカーテンが付いている豚舎もあります。

いずれにしても、基本は自然の風に任せて換気をする方法です。
一部の温度制御型自動カーテン以外は人間がカーテンを開け閉めするわけですから、管理者の能力が豚の発育成績に直結します。
特に春と秋のように日中と夜の気温差の大きい季節は特に注意が必要です。

図表1は豚の快適温度を体重別に表したものです。
これはあくまでも豚の生活部分での温度です。
例えば、室温計が人の目の高さの位置に付いていれば豚の背の高さの位置の温度とは差があります。
特に冬場はその温度差が
2~3℃になることが多いですから、注意を払わないといけません。

また、子豚の保温箱がある場合は保温箱の中が豚の快適温度になっていることが必要です。
ですから、豚舎には
1室に1箇所以上、最高最低温度計を設置しましょう。
温度はあくまでも目安です。一番重要なのは豚の寝床が快適かどうかを、管理者が目視で確認する事です。

子豚でも肉豚でも同じですが、豚同士が重なり合って寝ていれば寒い証拠です。
口を開けて呼吸が速くなっていれば暑い証拠です。
同じ室温でも風があれば寒く(夏は涼しく)感じるのは人間も豚も一緒です。

豚の寝姿を見てカーテンの開閉を行いましょう。
お薦めは@朝一番、A
11時頃、B午後3時頃、C仕事終わり時の14回豚の様子を見てカーテンの開閉を調節する事です。

中でも最も注意を払うべきはC仕事終わり時のカーテン調節です。
翌朝まで誰も調節をしませんから、夜間の天気や翌朝の最低気温を考えた上で開閉具合を調節しておく必要があります。

お薦めは午後の休憩時間に天気予報をチェックすることです。
従業員みんなで休憩室に集まって休憩を取る農場も多いことでしょう。
場長やリーダーの人は、率先して天気予報をチェックしてみんなに声がけするのが良いです。
経験の浅い社員や研修生がカーテン調節を担当している農場では、担当者が忘れないように声がけすることが重要です。

春や秋のように日中と夜の気温差の大きい季節にカーテンを空けすぎていて、翌朝に冷え込んだ場合などは、尾かじりや肺炎、下痢、母豚では流産の原因になります。

 

【夏の換気】

熱帯夜が続くような夏は、夜もカーテンを全開にしておくことでしょう。
皆さんの豚舎では暑さ対策をどのようにしているでしょうか。
順送ファンをフルに回しているだけでは足りないのであれば、クーリングパドを追加する事も良い事です。

2はカーテン豚舎+クーリングバドの模式図です。
一方の妻側にはクーリングパドを設置し、反対側の妻側には排気ファンを設置します。

両サイドのカーテンは閉めて、トンネル換気を実施します。
カーテンを全閉にしたときの気密性が悪いと冷房効果が薄れますので、カーテンが接する豚舎壁にはゴム板を張るなどの工夫が必要です。

3はクーリングパドの代わりに細霧システムを採用した例です。
こちらの豚舎は夏の暑さがそれほどひどくない立地向けです。
順送ファンで風を回しながら細霧をタイマー運転して豚舎を冷却する方法です。

 

【春と秋の換気】

4は巻き上げカーテン2段式です。

気温が下がった時に下側のカーテンを開けておくと、冷たい風が豚に直接当たるので、
上側カーテンの開閉で換気量を調節するのが良いです。

5は二重カーテン豚舎です。春秋は外側のカーテンを開けて置き、内側の巻下げカーテンの開閉で換気量を調節しましょう。
これも理由は冷たい風を豚に直接当てないようにするためです。

モニター付きの豚舎ではモニターのカーテンも朝と夕方の2回は開閉して調節した方が良いです。
面倒だからと言って春から秋までは開けっ放しの農場もありますが、夜になると冷たい空気が降りてくるものです。
試しに早朝
4時ごろに豚舎へ行ってみてください。
そうすれば実感できるはずです。

「百聞は一見に如かず」です。
「勤務時間外だ」などと言い訳せずに、良い管理を目指すならば体験は必要です。

 

【冬の換気】

冬にカーテンを完全に閉め切ったままにしておく農場を見かけることがあります。
たいていそんな豚舎に入ってみると、アンモニア臭がきつく、結露だらけだったりします。

そんな豚舎に10分も入っていたら息が苦しくなるはずです。
豚はそこに
24時間いるわけですから、そんな豚舎環境にしたら豚に拷問を与えているのと同じです。
最低限の寒気は必要です。
しかし、「ちょっとでもカーテンを開けすぎると寒さで豚の調子悪くなるから」と言い訳をする方もいます。

図表1には最低換気量も表示しています。
この数字をもとにして
1室の最低換気量を求め、それに見合った換気扇を取り付けることをお勧めします。

例えば500頭収容の肥育豚舎でしたら1頭当たり0.284/分✕500頭で142/分です。
これに見合う換気扇は羽径
40cmの100ワットファンが2台です。

ピット下がスクレーパー式の場合は、壁に排気ファンを取り付けるとスノコから冷たい空気が上がってくる場合が多いものです。
このようなケースでは、壁排気ではなく、別の方法を取ります。

ピットルームがある豚舎ではそこに排気ファンを取り付ければ室内の空気をスノコ下に吸い込んでピットルームから排出できます。
天井がある豚舎では天井入気ファンがベストです。

6の写真は家庭用換気扇を天井に取り付け、風が真下へ当たらないように導風板を取り付けたものです。
私の勧めでクライアント様が自作したものです。

また、トイレファンを図7のように設置している農場もあります。

この場合使うトイレファンは一般家庭用では風力が弱いので、業務用のパワーファンを使うことをお勧めします。

また、冬場は豚舎内で温度むらが出やすいものです。
ここで活躍するのが順送ファンです。

8のように順送ファンの片側の回転を逆にし、なおかつインバーター制御でゆっくり回します。
片側ずつを別々のインバーターで制御する場合は、インバーターの設定で簡単に逆回転できます。
1台のインバーターで全ての順送ファンを制御する場合は、片側の配線に切替え器を取り付ければ反転できます。

 

【異常気象や災害に備える】

近年は地球温暖化の影響で、夏の猛暑とゲリラ豪雨、そして台風による風害が深刻化しています。
猛暑の対策としては、【夏場の換気】の欄で書きましたように、クーリングパドまたはミストや細霧による冷房を追加することです。

それと同時に換気扇の台数を増やしたり、増やす場所がなければ大風量型に交換することをお勧めします。
羽径1mの換気扇にもいろんなタイプがあります。
出力が同じ
0.4kwでも順送用を排気ファンとして使うと規定通りの風量が得られません。
大風量型は俗にトンネル換気用と呼ばれるもので、定格出力が
0.75kwや1.1kwのものがあります。

クーリングパドを設置する場合は少々のコストアップは気にせずに妻側の壁面いっぱいに設置することをお勧めします。
パド
1枚の長辺寸法が2mぐらいですから、床面から2mの高さまで全面をパドにするのです。

パドの面積が大きいほど通過する風速が遅くなりますので、冷却効果が増し、空気抵抗も減りますから換気量の減少率も少なくなります。
また、豚舎の南側には木を植えて防風林を形成すると日よけ効果と強風対策になります。
また、ゲリラ豪雨や台風では停電することがあります。

カーテン豚舎では停電しても豚が窒息死することはありませんが、台風で停電したまま翌日に猛暑になった場合などに備えて、発電機は必ず備えておきましょう。農場にある給水ポンプと給餌ラインそして換気扇の半分の台数を回せるくらいの発電機を備えましょう。
モーターは始動時に定格電流の2〜3倍の電気が必要です。
ですから発電機を選ぶ際は回したい電気設備のモーターに書いてある定格電流を合計した値の
1.5倍流せる発電機を選んでください。
加えて、単相100
Vと三相200Vを同時出力できるものを選ぶことです。
また、自然の力には勝てませんから、自然災害でも保険金がおりるタイプの保険をかけておきましょう。
この機会に豚舎にかけている保険を見直ししてみてはいかがでしょうか。備えあれな憂い無し。

 

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最終更新日 : 2022/01/23