2020年3月

「豚舎・設備のお悩み解決！」（82）「隙間風対策」

今年の冬は暖冬でしたね。

桜も咲き始めているこの季節に、何を今さら隙間風対策？とお思いの方もいらっしゃるでしょう。

しかし、5月ぐらいまでは日中とよるの気温差が大きい日があります。

朝方の冷たい隙間風によって豚が体調を崩すことは良くあることです。

死んだり寝込んだりする豚が出ない限り、気に留めない農場の方も多いようです。

しかし、母豚では流産の引き金になりますし、肥育豚では脱肛や尾かじりの一因にもなります。

また、PRRSやマイコプラズマが陽性の農場では換気や温度調節の乱れが発育遅延や飼料要求率の悪化に繋がります。

それは適切に管理されているウインドレス豚舎での発育の良さと比較すればよくわかることです。

また、こんな例もありました。

分娩豚舎でスクレーパーの書き出し口の近くだけ寒くて子豚が具合が悪くなるのです。

その原因は冬場の最低換気用の換気扇で排気している時にスクレーパーの掻きだし口から外気が吸い込まれ、
すのこ床から吹き上がって来ていたからでした（図1）。

私がアドバイスした解決法は図2のように陽圧換気への変更です。

まず妻側から天井裏へ換気扇で外気を押し込みます。

天井には直径1ｃｍ位の小さな穴を空けておき、そこから室内へゆっくりと入気します。

そして窓の隙間やスクレーパーの掻きだし口（スクリューコンベアーの出口）から排気されます。

これで冷たい外気が直接豚に吹きかかることは無くなります。

外気は天井裏で一旦温められて、豚舎全体に柔らかく入ってきます。

入気ファンには温度によって換気量を制御出来るコントローラーを取り付ければ、より快適な環境を作ることが出来ます。

天井穴の数は子豚の寝場所の上を避けて１豚房当り数カ所開けます。

少なめにトライして、不足だったら増やすようにすると失敗が無いです。

夏場は天井裏が暑くなりますので、天井裏へ入気するファンを逆回転に切り替えて使います。

室内は窓やカーテンを開けて順送ファンを回すか、あるいはクーリングパドを使ったトンネル換気に切替えると快適になります。

　天井の無い豚舎では、図３のようにダクトファンを取り付けます。

ダクトの穴は水平方向へ風が出るようにします。

送風機本体の取付は壁から約１０ｃｍ離します。

そして壁にはダクトファンの直径と同じ縦横のスライド扉を取り付けます。

スライド扉の開閉度合いに応じて外気と内気をミックスして送風する事が出来ます。

このファンにもインバーターを介して風速の調節が出来るようにして下さい。

ダクトがしぼむとネズミに囓られますので、寒いときでもダクトがしぼまない程度の回転数に調節して２４時間運転にして下さい。

　次に豚舎のサイドカーテンの開閉調節です。

手動開閉の豚舎では、この調節が難しく、その調節不備による豚の体調不良が起こりやすいものです。

是非とも電動式の自動カーテンにする事をお薦めします。

カーテン自体がまだ新しいのであれば、駆動部だけを電動式に交換することが出来ます。

ここで自動式と言っても、２４時間タイマーで開閉するだけのものはNGです。

温度に応じて開く度合いが可変出来るものにしましょう。

既にタイマー式や手動NO-OFFの電動式を導入済みのところでは、コントローラーだけを温度感応式に交換して下さい。

中にはメーカーに相談しても、改造は出来ないから全て新品に買換えて下さいと言われることもあります。

そこまでの出費はしたくないので改造したいと言う場合は、筆者にご相談下さい。

私はそのような改造も実際に行っております。

図４のような２重カーテンの場合は両方を自動にする必要は無く、内側のみを自動にすれば十分です。

外側は季節や気候に応じて、朝晩に開閉してください。

次に糞尿混合豚舎で、汚水の流出口から外気が進入するケースの対策です（図5～7）。

一般的には排出口に塩ビ管を差し込んであるだけですので、

①その管の先にU字形にエルボを取り付ける方法と、

②塩ビ管をアポロボールに交換する方法があります。

①のデメリットは表面に溜ったスカムが流れないので、時々管を抜いて流してやる必要があります。

②のデメリットは自然には流れないので、水道管破裂などで漏水があると、床上まで汚水が溜る危険があることです。

以上、おもな隙間風対策を紹介しましたが、壁などの破損やネズミ穴の補修も忘れずに行ってください。

また、これから豚舎を新築する場合も本稿でご紹介した隙間風対策をあらかじめ組み込むようにお薦めします。