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| 「豚舎・設備のお悩み解決!」(75)「給水機の種類とチェックポイント」 豚も水が十分に飲めないと熱中症になります。 死亡事故や発育遅延を防止するためにも給水器のチェックは欠かせません。 今回は、給水器の種類とその特徴やメンテナンス上のチェックポイントをご紹介します。 【ストール豚舎】 ストールの母豚用給水器は大きく分けて、半割土管型飼槽に水を溜める方式とピッカーがあります。 写真1はポリマーコンクリート製トラフのタイプです。
全面スノコ豚舎の場合はステンレス板を折り曲げて制作したものが使われることが多いです。 普段のチェックポイントは、水漏れしている箇所が無いかどうかです。 欠けている部分や、地震で出来たひび割れ、ステンレストラフでは継ぎ目の溶接ハガレやボルトの緩みなどを毎日よく観察しましょう。 溜める水の適量は季節に応じて異なります。 次回の給餌までに若干(水深2〜3cm)残っているぐらいがベストです。 次回の給餌時に空になっているようでは、十分な水を飲めていない母豚がいるはずです。 また、たっぷり残っているようでは水が無駄になりますし、そのまま餌を落とせば餌が流れて十分に食べられない母豚が出てしまいます。 ピッカーの場合は取付け位置が農場によって異なります。 餌箱の中、または餌箱の脇の上部から斜め下向きの取付け。 豚の顔の高さに水平取り付け、下部から斜め上向きに取付け。 などのパターンがあります。 水が漏れているのは見回れば直ぐに気づきますが、問題は出てないまたは出が悪いピッカーを発見することが難しく、 特に夏場は発見が遅れると母豚の体調への影響が大きいです。 毎日ピッカーを1個ずつ全部指で押して吐水量をチェックするのがベストですが、なかなかその時間がもったいないと思うことでしょう。
そこで見分け方のコツですが、ピッカーの下の床(餌箱取付型では飼槽の底)を見ていくのです。 たいていは呑みこぼし水で濡れています。 濡れていないまたは、濡れ方が少ないピッカーだけを指で押してチェックして下さい。 全部押してチェックするよりもずっと早いです。 また、ピッカーを豚がイタズラして、横向きや下向きになっていないかどうかもよく見て下さい。 向きが悪いと十分な水量を飲めなかったり、こぼし水が多くなったりします。 【分娩舎の母豚用】 分娩舎でも母豚のピッカータイプのチェックポイントはストール舎と同じです。 ただ、分娩舎では母豚が1日に飲む水量が多いですから、特にピッカーの吐水量には気を配って下さい。
一般に1分間に2リットル以上の吐水量が必要と言われています。 分娩舎を洗浄して次の母豚を入れる前には必ず吐水量をチェックしましょう。 簡単なチェック方法は、まず、2リットルのペットボトルを半分に切ったものを用意します。
時計で30秒測りながらピッカーを押して出た水をその容器に溜めます。
30秒で1リットルが満タンになればOKです。少ない場合はピッカーを外して掃除しましょう。 ピッカーの後の網の部分に水垢や錆が付着していたならばきれいに落として下さい。 それでも吐水量が少ない場合は、網を外した内側に水が通る小さな穴が空いていますので、それを少し広げてやります。 この時の注意としては、ドリルでいきなり穴を広げると、吐水量が極端に多くなってしまうことがありますので、 千枚通しなどで少しずつ広げると良いでしょう。 また、最近は写真2と3のようなサイフォンバルブを飼槽内に取り付けているところが多くなりました。 ボールフィーダーとの組み合わせがベストと私は思います。 母豚が鼻で押して餌を落とし、それが水と混ざって食べやすくなるからです。 しかし、水が溜る量が多すぎると母豚は逆に食べづらくなりますし、 餌で濁った水が常に溜っている状態になると、夏場は水が腐敗してしまいます。 ですから、サイフォンバルブの取付け位置は、溜る水の水深が2〜3cmになるように調整して下さい。 分娩舎を手給餌やストックホッパーによる自動給餌にしている農場では、餌の食べ残しに十分注意して下さい。 サイフォンバルブの先が餌に埋もれたままですと母豚が水を飲めません。 このような農場ではサイフォンバルブと給餌器の外に取り付けるピッカーの併用にすると母豚の水不足を防止できます。 【分娩舎の子豚用】 哺乳豚用は、ピッカータイプと写真4のようなカップ式に大別できます。 ピッカーの場合、水量は少なくて良いので、手で押してチョロチョロと出るぐらいがちょうど良いです。 水勢が強いと子豚が驚いて飲めません。 しかし、水勢が弱いが故に子豚のミルク餌の食べカスが詰まりやすいのが難点です。 毎日目視して水が出ているかどうかチェックして下さい。 一方写真4のようなカップ式の場合は、カップに溜っている水の汚れに注意して下さい。 糞尿で汚れている場合は直ぐに掃除して下さい。 【離乳舎・肥育舎】 離乳舎や肥育舎ではピッカータイプが主流ですが、写真5のようなカップ式も使われております。 離乳舎や肥育舎の場合は毎日手で押してチェックするのは難しいでしょうから、普段は目視チェックになります。 出ているか詰まっているかは、その下の床の濡れ加減で判断します。また、高さや向きもチェックして下さい。 写真6のように高さ調整ブラケットが付いている物では、ピッカーの先端が豚の頭の高さになるようにすると、 豚は上を向いて飲むので呑みこぼしが少なくなります。 また、写真7のように壁や柵と平行な向きになっては飲みづらいですから、正常な向きに直して下さい。 出荷や移動などの後の豚舎洗浄時にピッカーも外して内部を洗浄することをお薦めします。 配管の固定ボルトもこの時に増し締めするなど、緩み防止に努めましょう。 写真5のようなカップ式では吐水量とカップ内の汚れに注意しましょう。 いくら掃除しても糞で汚される場合は、取付け位置が間違っているかもしれません。 取付け位置を変えてみて下さい。 【まとめ】 餌の出具合は気にとめていても水の出具合までは気が回らなかった。 という農場担当者に出くわすことがあります。水も発育に直結しますから、毎日注意して見回るようにしましょう。 また、水質も忘れはいけません。 受水槽が汚れていないかどうかも3ヶ月に1度はチェックしましょう。 井戸水の場合は最低でも年1回は水質検査をしましょう。 きれいな水、十分な給水で今年も夏を乗り切りましょう。 。 |
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