「豚舎・設備のお悩み解決!」(72)「肉豚体重測定の実践と機材
 

 

昨年までの3年間は肉豚相場が高値でしたので、枝重がばらついていてもある程度の利益が出ました。
しかし、今年からはあのような高値は期待できませんので、体重を揃えることが利益アップの必須条件となってきます。
直接的な利益アップのみならず、相対取引での価格交渉にも好材料となります。
体重の揃った肉豚を出荷していれば、枝重82kgとか84kgまで上物と同じ単価で買って貰うことも可能になります。
実際にこのような条件で販売している農場も多くなってきました。
 
ただ、現場では、「理屈ではわかるけど、人手が足りない。通路が狭い。オガ床の広い豚舎だから。」
などの理由で実践されていないところが多いのも事実です。
しかし、人を1人多く雇ってでも肉豚体重測定する価値があるものです。
まずは、費用対効果を、ある農場の事例を使ってご説明します。
 
表1が私の枝肉集計ソフトMeatMaxを使って集計した物です。
枝重のランク別に頭数と売上が出ています。
例えば枝重65-70kgで出荷された豚1363頭の売上は4591万円でしたが、
70-75kgになるまで7日育てて売れば70-75kgの単価36,118円で売れると仮定して計算すると、
売上が4922万円になります。
餌代が108万円多く掛かりますので、差益は222万円。
同様に65kg未満の豚は14日多く飼育して70-75kgで出荷、
枝重85kg超の豚は7日早く出荷して80-85kgで出荷したものと仮定して計算すると、
差益の合計が約1,530万円にもなります。
体重測定をしてこの8割を達成したとしても1,224万円です。
一人多く雇っても完全に得です。
どうしても求人に応募が無いのでしたら、海外研修生2名採用しても十分採算が取れます。
 
では次に体重測定の実践の工夫です。
肥育豚舎の通路が狭くて体重計が通れない農場向きには、輸入物ですが内幅が35cmのアナログ体重計があります。
私も使ったことがありますが、アナログ体重計は針が振れるので体重を読みづらいのが難点です。
ですから、図表2のようなデジタル式の体重計をお勧めします。
この機種の旧タイプは豚が動くと表示が止まらず、アナログよりも体重が読みづらかったですが、
現行モデルでは豚を入れると約1秒で表示が固定されますので、効率よく体重測定が出来ます。
移動する時は立てて押していけるので、通路の角が狭くても通れます。
 
オガ床豚舎では図表3のように一旦通路に出して、測定してマーキングしながら戻す方法や、
売る豚は別豚房へ移し、売らない豚はものと豚房に戻す方法が良いでしょう。
 
通路が狭くてデジタル豚衡機が通れない豚舎では、図表4のように、
一番端の豚房に柵を組んでその中に豚衡機を据え付けておきます。
子豚を肥育舎に入れる時に、この豚房には受入れるロットの中で一番大きな子豚を集めて入れます。
やがて出荷時期になるとこの豚房から先に出荷されていきます。
そしたらここを体重測定ペンとして使うのです。
 
さらに体重測定を効率化するためにはやはり、オートソーティングを導入する事です。
ただ、豚舎を新築する場合はオートソーティングに適したレイアウトで作れますが、
既存の豚舎でオートソーティングを導入することは、かなり難しいものです。
そこで、豚舎間通路にソーターを装備した体重測定スペースを作成している農場もあります。
図表5がそうです。豚房から豚を出して来てAスペースに入れる。
ソーターに豚を追い込むと、設定した出荷体重を超える豚はスペースBに出され、
出荷体重に達しない豚はスペースCに出されます。
出荷豚は出荷デポに運ぶか、または、出荷豚専用ペンへ集めます。
この方法では設定した出荷体重に達した豚が出荷予定頭数未満だった場合は、
残った豚で、次回出荷用に自動マーキングされた豚の中から追加します。
しかし、逆に出荷体重以上の豚が多かった場合は戻す豚を選ぶのに少し手間が掛かります。
 
以上、いくつかの事例を交えてご紹介しました。
まだ体重測定を実施していない農場さんは、是非とも知恵を絞って体重測定に挑戦してみて下さい。
考えているよりも実践しながら工夫を重ねていくことが成功の秘訣です。

 

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最終更新日 : 2022/01/23