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「豚舎・設備のお悩み解決!」(71)「農場のICT普及と課題」
最近は養豚管理ソフトのクラウド化(データをインターネット上に保存)が進んできて、 豚舎でスマートフォンやハンディー端末を使って現場のデータを入力できる様になってきました。 しかしその普及度合いは、まだまだ僅かです。 そこで今回は、農場現場のICT(インフォメーション/コミュニケーションテクノロジー)を進める上でのメリットや課題を整理してみました。
農場のICTといえば現場での生産データ入力だけではありません。
豚舎の温度や湿度、換気状態などを農場事務所または外部から確認できる仕組みや、 農場の電気の使用量をリアルタイムでモニターして節電に役立てるなどが現時点で一般化している技術です。 さらに今後はIoT(物のインターネット)が普及し、
電化製品全てがインターネットを通じてコントロール出来るよう、
技術開発が進んでいます。
それはさておき、農場現場のICTの普及に欠かせないことは、
そのメリットは何かと言うことを養豚に係わる人たちが正しく理解することです。
まず、現場の作業担当者と経営者のどちらにメリットがあるでしょうか。 直接的には、経営者です。 経営者の仕事は、取引業者との交渉や自社の収支状態の監視、経営者間での情報交換ですから、 農場現場から離れた場所で農場の生産成績を確認するニーズがあります。 そんな時に必要な最新データが手元のノートパコンで確認できれば早く有利な交渉が可能となるわけです。 データをクラウド上に保管するタイプの養豚ソフトを使えば、それが簡単に実現できます。 また、豚舎の温度や湿度のリアルタイムデータや過去の記録が残っていれば、 設定が正しかったかどうか、設備に不具合が無いかどうかの検証に役立ちます。 そしてそれが現場担当者の管理技術向上にも役立ちます。 次に繁殖成績等のデータ入力のシーンで考えて見ましょう。 交配や分娩、離乳などの日次記録を入力する際に記録台帳への母豚番号記入ミスが時々起こります。 そうすると豚舎へ行って番号を確認する作業が発生します。 現場の作業担当者がデータ入力も行っている場合でしたら、間違いに気づきやすいですが、 データ入力を農場以外の場所で行っている場合は、さらに複雑です。 字が薄かったり、クセのある字だったりすると読み間違いも加わり、 農場現場への問い合わせも多くなります。 問い合わせに対応する時間も多く取られますので、現場の負担が多くなります。 では、現場の担当者が直接豚舎で入力すれば楽になるでしょうか。 タブレットやノートPCの操作に慣れている人であれば苦にならないでしょうが、
慣れていない人は、紙に書いた方が早いし、
データを確認するのも、紙のノートや台帳をめくった方がわかりやすい。と言います。
このような農場では、PCの入力が出来る担当者が農場事務所でデータ入力をおこない、
そのデータをネット上で経営者が確認できるシステムから始めるのが良いでしょう(詳しくは後述)。
特に、発情待ちの候補豚の日令管理や離乳母豚、空胎母豚の空胎日数管理、 妊娠鑑定実施の確認はタイミングが重要ですから、 遅滞なく農場で入力する事が繁殖成績向上に役立ちます。 例えば、たいていの養豚管理ソフトでは、未交配母豚リストに未交配候補豚の生後日令や、 離乳母豚の離乳後日数、流産や空胎母豚の空胎日数が表示されます。 これを毎週チェックすることで、発情管理や廃豚の判断を遅滞なくする事が出来ます。 これは現場にとっても経営者にとっても良い事です。 では次に、現場担当者がタブレットやPC操作に慣れている場合の現場入力体制の構築について考えて見ましょう。
最優先事項は入力のし易さと持ち歩きのし易さです。 入力のし易さは、実際にソフトの体験版やデモンストレーションを見て決めるのが良いでしょう。 また、ディスプレーの大きさも重要です。 データ入力だけならスマホぐらいの大きさでも出来るでしょうが、 作業予定表や分娩台帳を見るにはある程度画面が広くて一覧表示が出来ないと不便です。 持ち歩きのし易さも加味して考えると7〜10インチのタブレットがベストだと思います。 母豚番号の入力ミスを防ぐには、母豚カードにバーコードまたはQRコードを印刷しておき、
それをバーコードリーダーで読み取るようにしましょう。
図1のようなBluetooth接続の小型バーコードリーダーを用意すれば便利です。 スマホやタブレットにはQRコードリーダーアプリもありますが、私は外付けリーダーの方が使い勝手が良いと思います。
もう一つ大事な事としては、豚舎のネット環境です。 豚舎内まで携帯電話の電波が届く場所でしたら、SIMフリー型のタブレットを用意して、 データ専用の格安SIMを契約するとランニングコストを抑えられます。 3月4日現在、「格安SIM データ専用」というキーワードで検索すると月額1,000円前後の通信会社が複数ヒットします。 価格ドットコムなどで比較されたサイトを見ると選びやすいでしょう。 次に豚舎では携帯の電波が通じない場合です。 まず、農場事務所には光回線などのインターネット回線が繋がっているところが多いと思いますので、 Wi−Fi親機を各豚舎に1台ずつ設置し、事務所の光ルーターとの間をLANケーブルで繋ぎます。 LANケーブルの屋外配線が必要な場合は電気工事店に依頼して屋外型データケーブルを張って貰いましょう。
ここで注意点は、それぞれのWi−Fi親機をルーターモードではなく、アクセスポイントモードに設定することです。 これで豚舎内でもWi−Fi接続でタブレットが使えるようになります。 最後に、養豚管理ソフトだけではなく、
農場オリジナル様式の集計などのエクセルファイルなどもリアルタイムで共有したい場合の設定方法を紹介します(図2のようなイメージ)。
パソコンの台数が少なく、ユーザー数も3人以下のような小規模の場合は、グーグルドライブがお勧めです。
共有専用のアカウントを1つ作り、全てのパソコンでそのアカウントを使う方法です。15GBまで無料で使えます。 作業をする人数が3人以上で、使うパソコンも5台以上の場合はDropbox Businessがお勧めです。 こちらは1ユーザーあたり月額1,250円で利用可能です。 ユーザーごとに個別の利用権限設定やファイルの暗号化などのセキュリティーも高いです。 |
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