「豚舎・設備のお悩み解決!」(70)「野鳥の防疫対策
 

先月は豚コレラ感染防止対策としてイノシシやネズミについて書きましたが、野鳥については1行程度しか触れませんでした。
野鳥が媒介する疾病としてはPED(豚流行性下痢症)や、TGE(豚伝染性胃腸炎)、豚インフルエンザなどもありますので、今回は野鳥対策について詳しく触れてみたいと思います。
PEDTGEは冬から春にかけて多く発生しやすい病気です。
平成26年から流行したPEDは春から夏にかけて大流行しましたが、平成8年に流行したTGEは、九州で初発が見られ、渡り鳥の北帰に合せるかのように日本列島を北上して伝染していきました。
鳥インフルエンザが野鳥を介して伝搬するのではないかと言われたこともありますし、豚インフルエンザが流行して社会問題になった年もありました。
伝搬の主因を野鳥と決めつける事はできませんが、養豚家としては疑わしい感染経路はシャットアウトしなければいけません。
野鳥の中でも雑食性で、豚舎の中まで侵入するものとしては、カラスと雀が代表格ですね。
対策の1番目は防鳥ネットです。窓や豚舎の出入口に防鳥ネットを張ることが基本です。
カラスはこれで侵入できませんが、雀は小さな隙間から入ってきます。軒下の隙間や壁に空いた鼠の穴や、壁材が古くなって剥がれている隙間や、金属外壁が錆びて出来た隙間などを注意深く観察して隙間を埋めることが必要です。
 
写真1は天井のない豚舎で、屋根と壁との間に隙間がある例です。
壁材や発泡ウレタン等で隙間を埋めましょう。
 
写真2は給餌ラインを通すために開けた穴が大きすぎて隙間ができている例。
 
写真3は給餌ラインの配管を変更したときに古い穴をそのままにしている例。
 
いずれも壁材や発泡ウレタン等で隙間を塞ぎましょう。
 
写真4は換気扇の外側シャッターが変形して締りが悪くなって隙間ができている例です。
 
写真5は換気扇のシャッターが破損している例です。
いずれも補修すべきです。雀の侵入だけでなく、冬の寒気侵入によるストレスの原因にもなります。
 
写真6は外壁が錆びてめくれ上がり、隙間ができている例です。これではネズミも入ってきますから補修が必要です。
また、豚の入出荷台の管理も非常に重要です。
例えば出荷台に病原ウイルスを含んだ鳥の糞が落ちていて、それを踏んだ長靴で豚舎、豚房に入れば感染の危険が非常に高いです。
出荷台はまず、使用前に鳥の糞が落ちていないかチェックしてから使いましょう。
使用後には洗浄消毒し、鳥や野生動物が侵入しないように、ネットを張る(写真7)または扉や板で塞ぐ(写真8)ようにしましょう。
 
 
写真9は屋根のモニターカーテンの内側に防鳥ネットが張ってある良い例です。
しかし、劣化や破損により鳥が侵入できる隙間ができている場合があります。
普段は目が届きにくい場所ですから、定期的に観察チェックする必要があります。
さて、野帳対策は豚舎の中への侵入防止だけでは片手落ちです。
豚舎の周りに近づかないようにすることも重要です、豚舎の周りに鳥の糞がたくさん落ちているようでは、農場スタッフの靴についたり、ネズミや猫の足についたりして豚舎内に持ち込まれる危険があるからです。
まず、注意しなければいけない場所は餌タンクの下や、給餌ラインの下です。
写真10のようにエサこぼれがあると、野鳥の餌場となってしまいます。
もう一点は胎盤や死んだ豚の仮置き場です。
豚舎脇に野ざらしにしておくのはもってのほか。
カラスに見つからないようにとコンパネなどを被せておいても、野良犬などに引き出されれば元も子もありません。
胎盤や死んだ豚は豚舎から出したなら直ちに冷凍庫に入れる、または、蓋の付いた水が漏れない容器に一時保管することが必要です。

 野鳥対策は施設の改修を伴う場合もあるでしょうから、すぐに完ぺきにできるとは限らないと思いますが、伝染病に対する保険という意味でもできる限り早く対策をすべきことと思います。

 

 

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最終更新日 : 2022/01/23