「豚舎・設備のお悩み解決!」(67)「肉豚出荷デポの設置と運用方法」
 
岐阜県で発生した豚コレラは、イノシシの感染が広がっているものの、豚への伝搬は今のところ無い様です。
しかし、お隣の国、中国ではアフリカトンコレラが拡散中で、我が国の養豚家も十分な注意が必要と思います。
豚の伝染病の主な感染ルートは、@豚の導入や出荷、A人が媒介、B餌や資材の搬入、C野生動物の媒介、です。
ウイルスの場合は空気感染もあります。中でも@とAは危険度が高いので、バイオセキュリティーをしっかりと気づき上げるべきです。
人による媒介を防ぐには着替えや靴の履き替え、ダウンタイム(他の養豚場や屠場に行ってからの待機時間)の設定をすることです。
これを実施している農場は多くなってきました。しかし、1番危険度の高い肉豚出荷時の防疫が甘い農場がまだまだ多いのが現状です。
ベストの選択は、肉豚出荷デポ(中継所)を設置し、防疫ルールにのっとった運用をすることです。
 
 【設置場所の選定】
ではまず、デポの設置場所から検討しましょう。
一番良いのは農場外に設置することです(図1)。
その次は農場敷地内で豚舎から離れた場所です(2)
肥育豚舎と通路でつながった場所に設置している農場(図3
もありますが、その場合は厳重な運用ルールを設けることが必要です。
農場外に設置するのが防疫上最良ですが、場内トラックは公道も走るようになるので、車検を取る事が必要です。
また、大型車を使う場合は、大型運転免許所持者が従業員に必要です。
ですから、図2のように農場敷地内で豚舎から一番離れた場所、または風下になる場所に設置する方が経済的です。
 
 【サイズの選定】
次にデポの大きさ(収容頭数)の決め方です。
1回の出荷頭数がすべて収容できる大きさが必要です。
例えば大型平ボディーで屠場へ運ぶのなら、60頭でしょうし、大型2段積みなら100頭収容可能なスペースが必要です。
 
また、出荷頻度によっても必要数か異なります。
GP農場なら、デポは1日おきの使用が安全です。
毎日の連続使用や、1日に2回転の使用は避けるべきです。
 
コマーシャル農場でも、11回使用に留めてください。
連日使用する場合でも、使用後の洗浄・消毒・乾燥は必要です。翌日までに完全に乾燥するようにして下さい。
乾燥させることで病原体の死滅率が格段にアップする事が既知の事実です。
次回使用時までに十分乾燥できないと予想される場合(寒冷地の冬季間など)はデポを2組作り、交互に使うのがベストです。
 
具体的に説明しますと、屠場へ運ぶトラックと同じかそれ以上の大きさのデポが必要です。
大型平ボディーで運ぶのなら、デポは大型平ボディーの荷台または中古の海上保冷コンテナを使うのが経済的です。
基礎工事は不要で、ドラム缶やコンクリート桝に載せるだけで良いので、建築確認不要で、雑種地にも置けます。
デポ屋根ですが、短時間に積み下ろしが終わるなら屋根無しでも行けるでしょうが、屋根はあった方が、悪天候時も暑熱時でも安心できます。
 
【内部構造と運用方法】
 図4にデポの略図を示しました。設置する場所は道路からの出入口を2箇所設けられる場所にして下さい。
屠場へ行く車両と場内車両が干渉しないようにするためです。デポの勾配は屠場側が低くなるようにして、そちら側に汚水槽を設けます。
デポの内部には可動柵を何カ所か取付けて区切られるようにすると出荷作業が楽になります。
 
 運用方法ですが、1日の出荷頭数全てをデポに下ろし終えるまでは、屠場行きのトラックをデポに接触させてはいけません。
屠場行きのドライバーは全部の肉豚がデポに入れ終わるまでは、手伝わずに待っているだけです。
豚舎からデポへ野肉豚搬入は大型のローダーやリフトに籠を付けて運ぶ農場もあるでしょうが、一番良いのはトラックで一方通行で運ぶことです。
ピストン輸送をすれば病気侵入のリスクが少し高くなります。
例えば、1回の出荷が60頭で、豚舎間通路が狭くて大型車が入れない場合は、4t車2台で運ぶのが理想です。
 
 農場側が全ての肉豚を下ろし終わり、場内トラックがデポを離れたら屠場行きトラックがデポに付けて豚を積み込みます。
この時は農場側の人間は豚積みを手伝ってはいけません。
屠場行きドライバーだけで積み込みをして下さい。
その間に農場側ドライバーは、場内車を洗浄消毒します。
 
デポの洗浄は、直ぐに行いたいところですが、防疫を重視するのであれば、農場の豚舎外作業担当者が夕方にやるのがベストです。
デポ洗浄後にそのまま帰宅して貰うのです。
夏場や春秋の晴天の日ならば翌日まで乾くでしょうが、デポをなるべく早く洗浄したい場合は次の様にして下さい。
 
場内トラックドライバーが、場内車に続いてデポを洗浄する場合は、デポ専用の長靴、つなぎ服、ゴム手袋、帽子、エプロンまたは雨合羽を用意しておき、それに着替えてデポ洗浄をします。
洗浄後は使用した作業服等をデポに備え付けの洗濯機で洗うようにして下さい。
そして、手洗い、顔洗いしてから場内用の服と靴に履き替えて農場内に戻る。
 
【豚舎と通路続きのデポの場合の運用ルール】
1.出荷トラックはデポに付ける前に入念に消毒を掛ける。特にデポに接触する部分は十分に。
2.屠場に行くドライバーは農場が用意した作業服と長靴を着用してトラックの荷台に上がる。
3.トラックドライバーはデポに入らないでトラック荷台に入ってきた肉豚がデポに逆戻りしないように扉の操作をするのみ。
4.農場従業員はトラックには入らないでデポの中だけで豚をトラックへ追い込む。長靴はデポ専用を準備しておき、それを履いて作業する
5.デポで出荷トラックに豚積みをした従業員はそのまま豚舎には戻らず、長靴を履き替えて事務所に戻り、作業服を着替えて手洗い顔洗いをしてから豚舎に戻る。

 

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最終更新日 : 2022/01/23