「豚舎・設備のお悩み解決!」(66)「繁殖成績の向上と肥育スペース確保」
 
ここ数年でトピッグスやダンブレッド、ケンボロー、ハイポーなどの多産系母豚を導入する農場が増えてきて、多くの農場で繁殖成績が向上してきております。
中には種豚会社から直接購入せずに、これらの種豚を購入している農場からPSを分けてもらっている農場もありますが、それでも繁殖成績はアップしてきています。
子豚の生産頭数が増えれば当然ながら肥育スペースが足りなくなってきます。子豚が増えたことを喜ぶだけで何も対策しないと、たちまち肥育豚舎が密飼い状態になってしまいます。
すると、豚舎を空けるために、小さな枝重で出荷することになります。
豚舎洗浄の期間も取れなくなり、出荷したら洗わずに次の豚を導入する。
すると、豚舎の衛生状態が悪くなり、病気が出やすくなります。病気を抑えるために抗生剤の使用が多くなり、衛生費が多くなります。
「そんなバカな。」と思う方も多いでしょうが、このような悪循環に陥る農場が実際に結構あるのです。
 
子豚の生産頭数が多くなっても、事故率が増え枝重が小さくなり販売金額が減ったうえ、衛生費が上がって、結局儲からない。
これでは繁殖成績を上げても無意味です。
 
多産系母豚の導入を始めた時点から子豚が増えたあとの対策を考えておく必要があります。
その方法を大きく分けると、
@  母豚を減らし、年間販売頭数は現状維持。
A  子豚出荷または肥育預託に出す。
B  離乳舎、肥育舎を増築する。
 
最も簡単なのは@ですね。
資金もいらないですから。
しかし、たいていの経営者の方は、この選択をしません。
「出荷頭数を増やしたい」と言います。
 
Aの子豚出荷も定期的に受けてくれる農場を見つけるのに苦労するものです。
 
 では、Bの豚舎増築の悩み解決に入っていきます。
まず、豚舎用敷地が十分にある場合は、オールインオールアウトができる離乳舎を新築することです。
最も病気によるダメージが大きいステージですから、最も良い飼育環境を作ってやることで、事故率の低下、出荷日令の短縮、資料要求率の改善が期待できるからです。
また、肥育豚舎よりも1頭当たりの建築単価が安いので、投資額の費用対効果が高いことです。
新しい豚舎を立てる場所としては、本場から離れた場所がベストです。
一貫農場の敷地内に作る場合は、次のチェック項目が最も多く該当する場所を選んでください。
 
・農場入り口から遠いところ
・他養豚場から遠い場所
・公道から離れている場所
・自農場の繁殖豚舎や肥育豚舎の風下になりにくい場所
 
現在の豚舎敷地に余裕がなく、ほかの場所を購入出来る当てもない場合は、現存する豚舎を改築または建て替えするしかありません。
この場合のお勧めは、種付けをオールAIにして、種付け豚舎を離乳舎に建て替えすることです。
多くの農場では、群飼豚房や雄豚房として広いスペースを取っていると思います。
一時的に母豚数を減らして、種付け豚舎を空けます。
時期的には3月から7月にかけて行うことがベストです。
この時期に交配して生まれた子豚は相場の安い時期に肉豚出荷になる豚だからです。
 
 次に肥育豚舎の収容頭数アップ対策です。
これも建て替えできればベストなのですが、昔建てた豚舎を建て替えする場合、現在の建築基準法に合わないため、現在の場所で建て替えができないケースがよくあります。
建物の柱自体がまだしっかりしている場合は、建築確認は取らずに全面改装という手段があります。
私のクライアント様でも、柱構造や建物の床面積は変えずに外壁や内部設備を改装している例があります。
屋根はカバールーフを施工で対応できます。
しかし、床やピットが同じでは収容頭数は増えません。
部分スノコを全面スノコに変える事で1割から2割収容頭数が増えます。豚房も10頭〜15頭収容のところならば、2ペンを1ペンに合わせて20〜30頭にすることで1頭当たりの床面積を少なくできます。
具体的には、全面スノコで1豚房30頭であれば、豚房面積は24u(1頭当り0.8u)でOKです。ただし、開放豚舎のままにするのであれば、順送ファンと冬場の最低換気要の排気ファンは必要です。
 
 全面スノコにするためのピットの改造方法には大き分けて2つの方法があります。
 
まず、糞尿分離のままで行く場合はコンクリート床をはがして、スクレーパーピットを掘る方法です(図1)。
糞尿混合で行く場合は、同じくピットを掘ることも良いですが、もっと安く上げたい場合は床を30cm上げて、平スクレーパーで糞尿混合掻き出す方式(図2)もできます。
繁殖成績が上がってきて豚舎が混んできてから対策を考えるのでは手遅れになります。
早めに対策をしましょう。

 

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最終更新日 : 2022/01/23