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「特集・洗浄消毒の見落としがちなポイント」 【はじめに】 衛生管理の基本は洗浄・消毒ですが、中でも洗浄が占めるウエイトがほとんどです。 その根拠は獣医諸先生方の研究結果が発表されていますので、ここでは割愛させて頂きます。 まずは、洗浄を手抜かり無くしっかりと行うことが重要です。 そこでまず考えて頂きたいのが洗浄機の選定です。
洗浄作業にかかる時間は温水タイプの方が短時間にできますから有利です。 また、高温で病原菌やウイルスを死滅させる点においても温水タイプが優れています。 しかし、温水タイプは本体価格が高額な上、灯油などの燃料費がかかるからと言う理由で敬遠されることがあります。 私は衛生管理を特に重要視するステージとして、分娩舎と離乳舎は必ず温水タイプを使う事をおすすめします。 温水洗浄機は大きくて重いので取り回しが不変だと言うことで、ボイラーからのお湯を豚舎に配管して、それを冷水タイプの洗浄機に供給して使っている農場もあるそうです。 ここで注意が必要なのは、冷水タイプの洗浄機の給水系統には高温に耐えられない部品も使われていることと、ケルヒャーのモーターは給水を回す水冷式なので、温水を給水すると、モーターが過熱して危険になる場合があります。 ですから私はこの使用法はお勧めしません。
【天井や壁の洗浄ポイント】
豚舎の床や餌箱はちゃんと洗っているのに、腰から上の部分が洗浄されていない豚舎を見かけることがあります(写真2)。 ほこりまみれになっていたり蜘蛛の巣が垂れ下がっていたりすると、そこが病原菌の巣になってしまいますので、忘れずに洗浄しましょう。
腰から上を洗っていない農場の方に理由を尋ねると、たいていの場合は、『電気器具が漏電するから』という答えが返ってきます。 たしかに漏電箇所を特定するのは難しかったり費用がかかるので、どうしても後回しにされがちです。 しかし、長い目で見れば、洗浄消毒をしっかり行うことで、疾病が減ったり、発育が改善されて収益が増えますから、漏電箇所の修繕費はすぐに元が取れるはずです。
また、給餌ラインの配管も洗っていないところが結構あるようです。
餌を落としたり止めたりするシャッターが剥き出しタイプの落とし口ですと、洗浄の際に内部まで水が入って餌が固まって落ちなくなる事があります。 それを嫌って洗浄しないところもあるようです。
できればカバー付で、水を掛けても内部に水が浸入しないタイプの落とし口に交換した方が安心です。 また、照明器具も防水タイプでは無いものが取り付けてある場合は洗浄すると漏電しやすいものです。だから洗浄しない。 そしてハエの糞だらけになって、室内が暗くなっている。 というような悪循環に陥っている農場では、すみやかに防水タイプの照明器具に交換することをお勧めします。 LED照明を初期費用無しでリースしている会社もありますから、初期投資を抑えたい向きには最適かと思います。
【スノコや鉄柵の洗浄ポイント】
コンクリートスノコはスリットの間に糞がこびりついて塞がっていたり、スリット内部の壁面にこびりついていたりします(図1)。 ですから、洗浄機水をスノコの真上から噴射しただけでは完全に落としきれません(図1の×印)。◎印の様に両方向の斜めから噴射して落としてください。
次に豚房が鉄柵でできている場合の洗浄です。
ですから、 図2の右のようにの洗浄のズルを斜め45度から噴射しながら豚房を1周して洗い、反対向き45度でもう1周すると洗い残しが無く綺麗になります。 横方向の鉄筋や分娩舎の母豚柵など、横向きの場合も4方向から洗います。 ですから、背伸びしたりしゃがんだりして洗浄する必要があります。
こんな単純なことですが、初めて洗浄を担当する人に教えるときは、念を押しておかないと手抜きされることになりかねません。 特に言葉がうまく通じない海外研修生に教える場合は丁寧に見本を見せてあげることが重要です。
【餌箱の洗浄】 豚柵や床に固定されている餌箱は、餌箱と床や壁の隙間に洗い残しが起こりやすいものです。
箱形の給餌器では、洗い水とカスがどうしても少し残ってしまいます。
洗浄も雑で、洗浄時に飛び散った汚れが給餌器に付着したままになっています。
これが洗浄の手本ですね。
洗浄の仕上げが悪い理由には人手不足で洗浄時間の確保が難しいとか、水不足で十分に洗えないなどの理由が挙げられます。 これは現場担当者のレベルでは解決できない問題ですので、経営者が労務管理の見直しや、設備の補強などでしっかりと対応して頂きたいものです。
【母豚給餌器の洗浄】 ストール豚舎や分娩豚舎のストックホッパーや餌のドロップパイプ回りが洗浄をおろそかにされやすいところです。
カビが多くなれば、カビ毒中毒で母豚が体調を壊したり流産が発生したりします。 ストールが空になる度に毎回洗浄することが理想ですが、少なくとも5月〜9月にかけて空いたときに洗浄するようにすれば、年に1度カビの発生をリセットできます。
【豚舎洗浄後の消毒】 洗浄後は一旦乾燥させてから消毒することが基本ですが、洗浄作業に引き続いて消毒しているところもあります。 それは洗浄機を別ステージで使う都合だったり、作業時間の確保の問題だったりします。 しかし、乾燥させることで死滅する病原菌があるので、菌自体が少なくなります。 また、ぬれた状態で消毒を掛ければ消毒液が薄められて、菌に作用する希釈倍率が実質的に薄くなってしまします。 ですから、洗浄後に乾燥させてから消毒した方が消毒効果も高くなりますし、結果的に薬剤費も少なくてすみます。 また、発泡消毒以外では洗浄直後に消毒液を散布しても散布済みの箇所と未散布の箇所の見分けが付かなくなり、消毒ムラの発生にも繋がります。 是非とも洗浄→乾燥→消毒の手順を励行してください。
また、消毒は薬剤の希釈倍率も重要です。 高圧洗浄機本体の薬剤添加口に消毒剤を入れて使う場合は、通常使用する目盛りのところへ油性ペンで印を付けておくことをお勧めします。 また、市販の洗浄機は薬剤の原液を直接入れて1000倍や2000倍希釈ができない機械がほとんどですから、原液を10倍ぐらいに薄めて洗浄機の投薬口へ注ぐことが多いと思います。 その場合は希釈に使う容器には、薬品原液を入れる量と水を注ぐ量の目盛に油性ペンでマークしておくことをお勧めします。
【分娩舎受け入れ時の母豚の洗浄消毒】 分娩舎での子豚の下痢や寄生虫が問題になっている農場では、母豚を分娩舎へ受け入れるときに、洗ってあげることをお勧めします。 もし、そのための設備が無いのであれば、ストール舎にある群飼ペンを2つ使って改造します。 改造といっても水道とガスを配管してガス瞬間湯沸かし器とシャワーを設置するだけです。 群飼ペン1つに母豚を何頭か入れて40℃のシャワーを浴びせて汚れを潤化します。その後、隣の群飼ペンに1頭だけ移して、40℃のお湯をかけながらブラシでこすって汚れを落とします。 ただし、乳房部分はブラシを使わずに軍手をはめた手で洗ってください。 そして洗い終わった母豚から分娩舎に移動し、ジョウロで消毒液を掛けてやります。
【入場車両や場内持ち込み物の消毒】 PEDが猛威を振るった頃は、どの農場でも入口に石灰を散布していたこととおもいます。 今でも継続されているでしょうか。 また、入口に消毒機を置いて入場車両の下回り消毒を行っているところもあると思います。 しかし、消毒ポイントが舗装されていない土の上でしたら、効果が落ちます。それは、タイヤの地面との接触面には消毒液がかからないからです。 是非とも消毒ポイントはコンクリート舗装にして、細かな溝を付けてください。 細かな溝からタイヤの接地面にまで消毒液が行き渡るようにするためです。
しかし車両が通過する度にタイヤから泥が落ちますから、汚れの度合いに応じて毎日あるいは2〜3日に1度交換する必要があります。
場内に持ち込む弁当や携帯電話等を消毒するために殺菌灯棚を設置している農場があると思います。 効果を上げるためにはまんべんなく紫外線が当たる必要がありますから、内側全面にステンレス板を張り付けて紫外線を反射するように作ってください。 また、上と下2段にする場合は、強化ガラスの棚にするか、網カゴを吊す構造にすることがお勧めです。 また、殺菌灯の照射時間も重要です。タイマーを使って、スイッチをON後一定時間(10分ぐらい)経過したら自動でOFFになるように作ると確実かつ便利です。 |
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