「豚舎・設備のお悩み解決!」(50)「 豚舎の暑熱対策


 

今年の夏は猛暑になるのでしょうか?
地球温暖化が叫ばれて久しいですが、年々真夏日や猛暑日が増えているようですね。
皆さんの豚舎では十分な暑熱対策はとられていますでしょうか。
今回は暑熱対策のポイントを、旧来からある技術の確認を含めておさらいし、
みなさんの豚舎でまだやっていない対策があるかどうかの確認にお役立ていただければ幸いです。
 
加えて少し設備費はかかりますが、災害時の備えの意味も含めて
太陽光発電やエンジン自家発電の暑熱対策としての上手な利用法までご紹介します。
 
 まず、ウインドレス豚舎でも開放豚舎でも共通することが、天井や壁の断熱です。
天井の無いカーテン豚舎では屋根裏からの輻射熱(赤外線)が豚に直接降り注ぎますから、
これを処断することが肝心です。
 
断熱を強化すれば冬の暖房費節減にも効果大です。
屋根断熱の施工法は大きく分けて2つ。
 
@  断熱材付きの屋根パネルに葺き替えする。
A  現在の屋根の上にカバールーフを被せて施工する。
 
  写真1                      写真2
 
写真12はカバールーフ施工例です。
 
 
 次はクーリングパドを付けてトンネルベンチレーションにすることです。
 
繁殖豚舎や肥育豚舎のように長方形で長い豚舎の場合は、
片側の妻面にクーリングパドを設置して反対側の妻側に排気ファンを取り付けます。
 
これはウイドレス豚舎でもカーテン豚舎でも利用出来ます(図3)。
カーテン豚舎の場合は両サイドのカーテンを閉めた状態で運転すれば良いです。
寒冷地ではパドの外側にカーテンを設置して、天井入気口も取り付けます。
冬にはパドからの入気を遮断し、天井入気にすると保温性が良くなります。
 
 
 次に太陽光発電を使った暑熱対策への応用編です。
基本的には、クーリングパドや、順送ファン、ダクトファンなどを使って送風量を多くすることですが、
その電力を自家発電でまかなって、電気料金の節約につなげるものです。
 
また、豚舎の屋根にソーラーパネルを設置することで、
屋根が熱せられることを防げますので、屋根から豚舎内に入る輻射熱も低減できます。
 
ソーラーパネルの発電能力はメーカーによって20年〜25年の保証があります。
ですから、いまから20年〜25年以上耐えられるような豚舎に施工することがポイントになります。
 
たとえ築20年ぐらいの豚舎豚舎でも、骨組みさえしっかりしていれば、
内部改造で今後20年以上使えるようにすることも可能だと思います。
 
もう一つ注意点は、屋根の耐荷重です。
ソーラーパネルの重さは1uあたり1216kgです。
耐荷重が心配な場合は豚舎内部に柱や支柱を追加する必要があるかどうかの検討も必要です。
 
また、南向きの屋根ならば発電効率が良く、採算がとれますが、
東西向きの屋根ですと、その傾斜角にもよりますが発電効率が落ちますので、詳しく検討が必要になります。
 
ではどのようなシステム構成にするかの説明に移ります。
太陽光(ソーラー)発電システムは売電型ではなく、自家使用型として電力会社との契約を結びます。
同時に契約種別も日中の電気料金単価が高くて、夜間の単価が安い契約にします。
 
太陽光パネルの容量の選択は、夏場だけ使う設備の消費電力とほぼ同じくらいの容量にすることです。
例えば豚舎の消費電力が夏のピーク時には250kwで、春と秋は150kw使う農場の例で説明します。
 
この場合豚舎で使う電力の最盛期と閑散期の差が250150100kwですので、
設置するソーラーパネルの容量は100kw120kwぐらいがベストです。
 
閑散期でも常に150kw使っているわけではありませんが、
糞尿処理の方で常時100kw使っているはずですから、
100kw120kwぐらいを太陽光発電から供給すれば、発電の電力を無駄にすることがありません。
 
もっとも太陽光発電も天候や日射角度によって発電量が変化しますので、常に最大出力が出ているわけではありません。
 
 では太陽光発電でどれくらい電気料金が節約できるかを計算してみます。
まず施工費ですが、1kwあたりの設備費が1820万円ですから
100kw設備ですと、およそ2000万円です。
 
自家使用型太陽光発電設備には13補助金が出ますので、
負担額は2000×0.661,320万円になります。・・・1
 
一方、節約額は日射量と設置角度のよって変わりますので、
南向き15度、宮城県南部沿岸地方での試算をお示しします。
関東以西の太平洋側ではこれ以上になります。
 
年間発電量が111,207kwhで、日中の電気料金単価は、
ピーク時間帯が20.41円、夏期18.89円その他季節17.55円ですから、
19円で試算しますと、年間節約金額は、
111,207kwh×19円=2,112,933円・・・2
 
さらにピーク時間帯の電力を太陽光でまかなうため、デマンドが下がります。
デマンドは基本料金の算定基準になっていますから、基本料金も下がります。
 
どれくらいかといいますと、これも気候によって変わりますので、
およそ太陽光発電設備最大出力の3550%です。40%で計算しますと、
100kw×40%×1,296円×12ヶ月=622,080円・・・3
 
2)と3)を足して年間節約金額が2,735,013円です。
 
1)の設備費を年間節約金額で割り算すると4.8年で元がとれる計算です。
 
 
1/3補助は『再生可能エネルギーの導入促進のための設備導入支援事業費補助金』という名称で環境省が管轄するものです。
詳しくは下記リンクを参照してください。
 
https://pps-net.org/subsidy/solar29
 
例年、募集期間が5月から9月までで、予算に達し次第締め切りとなりますので、早い者勝ちです。
 
 また、エンジン自家発電機は災害時の停電のために備えておくべきです。
せっかく備えておくので、これを有効利用するには、
夏場に回るファンやクーリングパドを自家発電から給電できるように配線を変更すれば良いわけです。
系統別の切替え器なども必要ですが、今回の記事では省略させて頂きます。

 その他の暑熱対策として、「木陰を作る」ことが省エネ効果が高いです。
農場の景観作りや臭気対策にも役立ちますので、植栽は長い目で実施されることをおすすめします。

 

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最終更新日 : 2022/01/23