「豚舎・設備のお悩み解決!」(49)「 ロータリー式コンポの消臭対策


 

今回は読者さんから頂いた質問をテーマにしました。
私が20年間勤務した養豚場でもロータリー式コンポを使っていましたので、臭い対策には苦労しました。
結論から申しますと、全く臭いが出ない様にすることはまず不可能ですから、
どのくらい臭いを抑えれば苦情が来ないレベルになるかを考えるしかありません。
そのためには臭いの発生自体を少なくする対策と、発生した臭いを脱臭する対策の両面からのアプローチが必要です。
 
 まず、臭いの発生自体を少なくする対策ですが、悪臭を発生するのは嫌気性菌が活動して、
たんぱく質やアミノ酸を分解してアンモニアを生成するからであり、悪臭発生を抑えるには嫌気性発酵をさせないことが重要です。
つまり、豚舎は糞尿分離式の方が良いわけです。
そして糞は豚舎に長時間ためておくと嫌気性発酵が始まるので、1日2回ぐらいの間隔でスクレーパーを動かして除糞することも大切です。
 
もうひとつは、生菌剤を飼料に添加したり、飲水添加したりして与えることも有効です。
悪臭を発生する菌は俗に悪玉菌と呼ばれるものが多いので、豚の腸内からも善玉菌を優性の状態にしてやることが、
豚の健康にも糞からの悪臭低減にも役立つわけです。
消臭効果がある生菌剤は多種類発売されていますから、どれが良いとは一口には言い切れませんが、
私の経験上ではEM菌が最も費用対効果がありました。
それは原液のまま使用するのではなく、自家培養して100倍に増やして使えるからです。
培養の方法は今回の紙面の都合上、割愛させていただきます。
飲水添加器を使えば培養液を補充するだけなので労力も少なくて済みます。
飼料添加するタイプの生菌剤は、バルク車に投入して混ぜれば労力は省けますが、コストは高くなる場合が多いです。
 
 
 次に、コンポストから発生した臭いを脱臭する対策です。
設備投資をせずにできる方法としては、堆積している堆肥の上から消臭剤や生菌剤を散布する方法もありますが、
労力がかかる割に効果の面では今ひとつです。
コンポが止まっているときは臭いが抑えられますが、コンポが作動して攪拌中には、かなりの臭いが出てしまいます。
 
その次に低予算でできる消臭方法が、攪拌機に小型脱臭装置を取り付ける方法です。
図1がその模式図です。攪拌機のメーカーによっては、オプションとしてこのような脱臭装置をラインナップしているところもあります。
このタイプの脱臭装置もメーカーによって脱臭方式に差異があります。
図1に示した方式はスクラバー方式と言います。
プラスチックのドラム缶のような容器の中で消臭液をシャワーリングして、そこに攪拌機から吸い込んだ臭気を通すことで消臭します。
消臭液は真水でもアンモニアはある程度吸着できますが、酢酸やギ酸など、酸性の水溶液を使用すると脱臭効果が高まります。
この方式の欠点は、攪拌によって発生した臭気を100%吸い込むことはできないことです。
攪拌機が通過した後でもしばらくは堆肥から臭気が湧き上がるからです。
 
もう一つ、攪拌機が乾燥した堆肥の部分を通過するとホコリが舞い上がり、
それが脱臭装置の吸気フィルターに詰まったり、消臭液散布のズルが詰まったりすることです。
 
また、消臭液も毎日〜数日ごとに交換しないと消臭効果が落ちます。
 
 さらなる消臭効果と労力軽減を求めるならば、コンポストの建物全体を密閉して、脱臭装置に吸い込んで消臭する方式にします。
(図2参照)
この方式では、脱臭装置の入り口にファンやブロワーを設置して臭気を吸い込みますが、それだけではうまく臭気が集まりません。
図2の矢印のように順送ファンを取り付けて空気の流れを作ってやることが必要です。
オガコ式脱臭槽を使う場合は、空調用のファンでは圧力が足りませんので、リングブロワーを使う必要があります。
この方式ではコストは安く済みますが、風量を多くすることが難しいので、比較的容積の小さい発酵ハウス向きです。
 
700800平方メートル以上の大型発酵ハウスの場合はバイオフィルター方式にしたほうが十分な脱臭効果が得られます。
ただし、バイオフィルター方式でもホコリによる目詰まりは発生します。
定期的にフィルターを高圧洗浄機で洗浄する必要があります。
その間隔はホコリの発生状況にもよりますが1〜3週間に1度は必要です。

 なんでもそうですが投資額と労力は反比例します。
労力をかけたくなければ大きな設備投資が必要になりますし、投資額を抑えれば労力をかけていくことが必要になります。

いずれにせよ、まったく手間のかからない方法はありませんので、
投資額と両動力のバランスを十分な検討のうえで採用する方式を決定するようにしましょう。

 

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最終更新日 : 2022/01/23