「豚舎・設備のお悩み解決!」(45)「豚舎を新築する際に見逃しがちなこと、
質を下げずに低コスト化するポイント」


今年も残すところあと僅かになりました。

枝肉相場は昨年より少し下がりましたが、餌単価も下がったので、十分な利益を確保出来た農場が多いようです。

それ故に、豚舎の新築や増改築の引き合いも多いようです。

しかし設計を良く吟味せずに建ててしまうと、後で思わぬ不便を感じることも良くあることです。

そこで今回は豚舎設計上で見逃しがちな細かなポイントをいくつかご紹介します。


【交配舎】

まず餌箱を半割土管型にするか1頭ごとの飼槽にするか選択に迷うところです。

半割土管型はイニシャルコストが安いのがメリットですが、ボディコン調節がやりにくいのと水やりに時間が掛かるのが欠点です。

また、井戸水に鉄分が多い地域ではピッカーが詰まりやすいので、半割土管型の方をお勧めします。


1頭ごとの飼槽では、ピッカーを飼槽の外に付けるか、中に付けるかも悩みどころです。

写真1の例では飼槽の外に付いていますが、床が全面スノコで無ければ呑みこぼし水で床が濡れることで、冬場に母豚が腹冷えを起こします。

餌のドロップパイプが真ん中に付いているので餌箱のピッカー用穴にピッカーの取付が困難になっています。

こういう場合は餌のストックホッパーとドロップパイプを飼槽の片側に寄せて取り付けるように設計すれば解決します。

ストックホッパーとドロップパイプは前扉の軸側に寄せた方が扉の開け閉めが楽です。


次に母豚の尻側のスノコですが肥育舎用と同じような、隙間幅の均等な物ですとフン落ちが悪いので、
肥育舎を改造してストールにする場合はスノコまで交換するのがベターです。

写真2は母豚用スノコですが、フン落ち用の穴の開いたスノコがストール柵の下に来るように、1枚おきに敷くのがベターです。

1見フン落ちが悪いのではないかと思いますが、母豚移動の時に足を落とす事が少なくなりますし、流産の発見もしやすいです。

どっちみち糞は掻き落とさなければ綺麗には落ちませんから。


【分娩舎】

まず、保温箱は必須アイテムです(写真3)。

九州などの暖かい地方では必要が無いと思われがちですが、私は必要と考えます。

分娩直後は強い子豚を保温箱に閉じ込めて弱い子豚に十分な初乳を与えるための『分割授乳』がやりやすいからです。

近年は1腹の産子数が増えたのでなおさら分割授乳は必要です。

また、夏は母豚を涼しくするために換気量を増やしますから、分娩舎内は強い風が吹いている状態です。

それが子豚にとっては風邪引きや腹冷え下痢の原因になりますから、風よけ避難場所として保温箱が機能します。

また、去勢やワクチン接種の時に子豚を閉じ込めて作業すれば作業性が上がります。

分娩柵のメーカーによっては保温箱の子豚出入口に扉(板)が付いていない場合がありますので注意が必要です


【離乳舎】

離乳舎はウインドレス豚舎で全面スノコ。オールインオールアウトで回すスタイルが主流です。

ピットは糞尿混合の溜ピットが主流ですが、糞が流れなくて困っている農場が多いのが現状です。

主な原因は、ピット底面の勾配が無いことです。

私がかつて勤務した農場では、部分スノコの肥育豚舎を改造した離乳舎が床に水勾配が付いていたので、栓を抜くと糞尿は残らず流れました。


また、壁材はプラスチックボードが主流ですが、天井材は是非とも断熱材付のガルバリウム鋼板をお勧めします。

理由はネズミに穴を開けられないからです。

理想は両面ガルバですが、コスト削減で片面ガルバを使う場合は、ガルバ面を室内側(下側)にすべきです(写真4)。


【肥育舎】

発育が良く、手間の掛からない豚舎にするのであれば、全面スノコで豚房の真ん中に円形のウェットフィーダーを置くレイアウトをお勧めします。

部分スノコですと、必ず平床を汚す豚がいます。

汚れた床を放置すると、悪臭やハエの発生、発育遅延を招きます。

また、豚は豚房の端に向けて糞尿をする習性があるので、真ん中に餌箱を置けば、糞尿で汚されることがほとんどありません(写真5)。

写真6は柵兼用型の円形フィーダーです。

豚の水遊びや糞尿をされるので餌箱の水を止め、給餌器とは別の位置にピッカーを取り付けたケースです。

結果的に豚は餌を食べづらいので餌を多く出してこぼしてしまいます。

建設費は部分スノコにして柵兼用給餌器を採用した方が安くなります。

しかし、全面スノコならば単位面積当りの飼養頭数が1割増えますし、
豚房中央に餌と水こぼしの少ないタイプの給餌器を置くことにより、日増体重、飼料要求率友に良くなります。

長い目で見ればこちらの方が収益が多くなります。


次に順送ファン。肥育舎やストール舎では直径が80cm〜100cmの三相200Vファンを使う事が多いですが、
ファン1台ごとにモーターブレーカーを付けて下さい。

1台が故障した時の切り分けがしやすいからです。

また、速度調節はただインバーターを付けるだけではなく、温度調節器による自動制御にして下さい。

また、離乳舎も含めて、順送ファンとしての単相モータータイプは不向きです。

輸入品を主に使う豚舎メーカーでは単相モータータイプを採用することが多いですが、
速度調節器が安く済む反面、速度調節幅が狭くて使い物になりません。事前に協議して三相タイプを設置して下さい。

ダクトファンを付ける場合も是非インバーター制御にして下さい。

秋、冬、春も回転を落として風向きを水平か斜め上にすれば、ミックスファンとして使えます。

ダクトファンの取付位置は豚舎妻側の壁から約10cm離します。

壁にはスライド扉を付けて、夏は全開にして外気を吸い込む。

冬は少しだけ開けて外気を少しと室内空気を混ぜて吸い込む形にすると換気不良を解消出来ます。

 まだまだ留意点はありますが紙面の関係で割愛させて頂きます。
 

 

この Web サイトに関するご質問やご感想などについては、お問い合わせフォームからお送りください。
Copyright (C) 2016 (株)「マックプラニング
最終更新日 : 2022/01/23