「豚舎・設備のお悩み解決!」(43)間に合ってますか給餌器数
近年、産子数の多い系統の母豚が普及してきて生産頭数が伸びているという農場の情報を良く耳にします。
そこで問題になってくるのが密飼いです。
写真1.
写真2.
写真1と2は離乳舎の密飼いの例ですが、1ペン25頭で1頭当り床面積0.33uで設計した豚舎に1ペン35頭入れた状態です。
日令は65日ぐらいでなので重なって寝ている様な状態です。
このような状態ですと出荷日令は1週間から2週間伸びてしまいます。
対策としましては、豚舎を増築して1頭当りの床面積を増やしてやることがベストなのですが、
資金の問題や敷地に余裕がないなどの理由で、密飼い状態が放置されている農場が良くあります。
ではここで、豚舎を増築した場合のコスト比較をシミュレーションしてみましょう。
母豚500頭一貫規模で年間1母豚当り離乳頭数が23頭だったところが28頭に成績アップした場合を例に計算してみます。
旧成績では年間離乳頭数が500×23=11,500頭。新成績では500×28=14,000頭。
年間3,500頭の生産頭数増加です。1週間当りでは67頭です。
出荷日令が10日伸びたとすれば1頭当り飼料コストは約400円(40円×10日)アップします。
年間で約560万円。では豚舎を新築した場合のコストアップは
離乳舎の建築費が67頭×8週分×4万円=2,144万円。
肥育舎の建築費が67頭×16週分×8万円=8,576万円、合計10,720万円。
この建築費を20年償却にした場合、1年分は536万円となります。
豚舎の建築費をここでは単純に1頭当りの建築単価で計算しましたが、
実際は豚舎の規模や仕様によって、1頭当りの建築単価は変わってきます。
また、密飼いによる発育遅延や飼料要求率の悪化によるコストアップ額も、
豚舎の形態や気候、疾病の浸潤状況によっても変わります。
ですから、今回の試算と同じ考え方で皆さんの農場の状況に合わせて計算してみて下さい。
また、密飼いによる事故率アップも起こりますから豚舎の増築が賢明な策ではないかと私は考えます。
しかし、金額の大きな設備投資は出来ないという場合は、給餌器と給水器を追加することによりある程度発育遅延を防ぐことが出来ます。
給餌器や給水器の1豚房当りの必要数は、離乳舎でも肥育舎でも共通して給水器は10頭に対して1個以上です。
餌箱はドライフィーダーなら2〜3頭に対して1口以上、ウェットファーダーなら10〜12頭に対して1口以上必要です。
別の言い方をすれば、1ペンに25頭収容するのならば5頭口ドライフィーダーを2台、
あるいは2頭口のウェットファーダーを1台設置する必要があります。
給水器は10頭に対して1個以上必要です。1ペン25頭収容ならピッカーは3個付けるのがベストです。
では実際の例で説明しましょう

写真3.写真4.離乳舎での餌争い
この離乳舎は子豚35頭に対してダブルチューブタイプの給餌器なので給餌器不足です。

写真5.子豚育成舎での餌争い
この子豚育成舎(前期肥育舎)では17頭に対して1頭口のウェットファーダー1台なので、餌争いが起こっています。
(写真左側のドライフィーダーは未だ使っていない)
写真6.肥育舎での餌争い
この肥育舎では15頭に対して1頭口のウェットファーダー1台なので、餌争いが起こっています。
これらの事例に対して私が給餌器を追加するように指導した結果が
写真7
これは30頭収容の離乳舎に2頭口ウェット1台だったとろへドライ5頭口1台を追加した例です。
写真8
写真9
これは15頭収容の子豚育成舎に1頭口ウェットフィーダー1台だったものを、1台外してそれを隣の豚房へ追加設置し、
外した跡には2頭口ウェットフィーダー1台を設置したものです。
写真10
これは写真6の肥育舎(15頭収容)で同様に古いフィーダーを1ペン2台に移し替えて、
外した跡には2頭口ウェットフィーダー1台を設置したものです。
写真7〜10は同一農場での例ですが、ここでは対策前の出荷日令が平均188日でしたが、対策後は165日になりました。
さらにAPPワクチンを実施するようになってからは現在157日で平均枝重76kgという成績です。
肥育飼料要求率も3.13から2.70へと改善されました。購入した給餌器代金は500万円以上になりましたが半年で元を取りました。