「豚舎・設備のお悩み解決!」(37)豚舎のピットは糞尿混合か糞尿分離か

近年の高豚価を反映して、豚舎の建て替えや改修も全国各地で行われています。
ここで大きな選択枝になるのが、ピットを糞尿混合にするか、糞尿分離にするかです。
今後の豚価予想を鑑みると、いかに低コスト生産できるシステムを組むかが重要ですから、豚舎の建築コストのみならず、糞尿処理コストも合わせたトータルコストで考えなければいけません。
また、豚舎の立地条件として敷地の高低差があるか無いかでも、自然落差で流せるかどうかが変わってきます。
総合的な判断をするための指標として、糞尿混合と分離のコスト比較検討リストを作ってみました(表
1)。

私の主観もある程度入っていますが、出来るだけ客観的にまとめてみましたので、ご参考にして頂ければ幸いです。

では表1の上から順に解説を加えていきます。
前提条件として年間肉豚出荷頭数は
1万頭、枝重75kg。コンポストは同じものとし、汚水処理施設も糞尿混合では、前処理でBODSSを除去し、糞尿分離方式と同等の汚水を曝気槽へ投入するものとして計算してみました。

まずピットの建設費は、Vピット加工とOパイプ施工費を1u1万円と見て、それを20年償却、1平米当り肉豚飼養頭数1.1頭、肥育舎が年3回転すると、枝肉1kg当りのコスト差は2円。糞尿混合方式ではこの分がかからないので-2.0円となります。

次に汚水配管は糞尿混合の場合は太い物を使う必要があります。
配管1m当り
200円増で20年償却、年間1万頭で計算すると、0.1円以下の差になります。

除糞機械は、全面スノコ豚舎800頭収容、ピット8列で2列を1台のドライブユニットで駆動する前提です。
2列分の施工費(機材代含み)を70万円で7年償却とします。
2
列分の収容頭数200頭が年3回転だとすると、枝1kg当りコストは2.2円となります。

スクレーパーのメンテナンス費用は、スクレーパーや、Oパイプ掃除片、プーリーやワイヤーなどの交換修理費用です。
私の経験値から概算すると枝当りコストは
0.4円になりました。

糞搬送機械費用とは、糞尿分離豚舎で各豚舎からコンポストまでの搬送設備費用です。
バケットローダーを使う農場もあれば、スクリューコンベアや集合スクレーパーで搬送する農場もあります。
ですからこの設備費用を見積もるのは難しいところですが、今回は
300万円のバケットローダーを10年償却で計算しました。

糞搬送労務費は、時給千円×11時間×365日÷1万頭÷75kgで0.5円となりました。

次の悪臭防止費用ですが、糞尿混合豚舎はピット内に糞尿が長時間溜っており、分離豚舎よりも悪臭が発生しやすいものです。
そこで生菌資材を飼料添加して悪臭低減に努めることを前提に積算しました。
肉豚1頭当りの子豚用と肥育用の給餌量を計
250kgとし、1kg単価が40円の生菌資材を1%添加すると枝コストは1.3円になります。

原水槽の容積は糞尿混合では分離式よりも大きな容積が必要です。
コンクリート槽の建設コストが
200万円アップすると仮定して20年償却で計算すると0.1円になります。

シサ取り機械は糞尿分離豚舎から出た尿汚水からゴミや粒度の大きいSS分を取り除くものです。
500
万円を7年償却で計算し、枝当りコストは1.0円となりました。
糞尿混合豚舎ではこの施設は設置しないものとしたマイナス
1円にしました。
その代わりに必要なのが脱水処理施設です。
曝気槽の前処理施設として設置します。
この設備費が
1500万円で、7年償却にすると枝コストは2.9円になります。
そのランニングコストとして、凝集剤費、電気料金、労務費が枝コストで
3.6円かかります。

糞尿分離豚舎でも余剰汚泥を脱水処理する設備が必要です。
こちらは小さい脱水機込みで設備費
800万円を7年焼却で計算しましたところ、枝コストは1円です。
糞尿混合豚舎の場合は余剰汚泥を原水に戻して前処理脱水設備に掛けますので、余剰汚泥専用の脱水設備は不要になります。

合計のコスト差は糞尿混合方式の方が枝当り0.5円高い、という結果になりました。
しかし、冒頭にも書きましたが変動要素は随所に見られます。
みなさんの農場では、それぞれの立地条件や環境条件を考慮して、どの項目を優先しなければならないかを考えてピットの方式選択して頂ければ良いと思います。


 

 

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最終更新日 : 2022/01/23