「豚舎・設備のお悩み解決!」(33)冬場の換気の注意点

寒くなるとどうしても豚舎内の温度だけに気を取られがちですが、換気のことも忘れてはいけません。
咳をしている豚を見つけると、寒いのではないかと思って窓やカーテンをすっかり締めてしまって、臭気がこもっている豚舎に良く出くわします。
みなさんのところではどうでしょうか。


ウインドレス豚舎でも古くなって自動制御が効かなくなり、調整を誤っているところもありますし、
新しいウインドレス豚舎でも、担当者が換気の基本を理解していないために環境が悪くなっているところもあります。
換気不良でも豚は肺炎を発症します。
また、湿気がこもって結露している豚舎ではカビが発生しやすくなり、カビ毒による食下量減少や発育不良が起こることもあります。
母豚の食欲減退は、餌残しによってすぐに解りますが、肥育豚のカビ毒による食欲減退はなかなか気がつかないものです。
換気を改善するだけで発育改善に繋がる豚舎も珍しくはありません。
特にウインドレス豚舎や衛生レベルの高い農場ほど換気の善し悪しによる発育の差が大きく出るものです。
今月号では、換気の基本を再確認すると共に、冬場の換気の注意点をいくつかご紹介します。

豚舎の中では豚が生活していますから、呼吸によって空気中の酸素が消費され、二酸化炭素と水蒸気が排出されます。
また、溜った糞尿からアンモニアをはじめとした健康に悪影響を及ぼすガスが発生します。
これらの二酸化炭素、水蒸気(湿気)、悪性ガスを排出して新鮮な空気を取り入れることが換気の役目です。
夏は窓やカーテンを開けておけば自然に換気が行われますし、ウインドレスなら換気扇がガンガン回るので部屋全体の空気が入れ替わります。しかし、冬場はそういうわけにはいきません。

自然換気豚舎では窓やカーテンの開け閉め割合を調節して換気を行うことになります。
しかし外気の温度変化や風の強弱は予想外に変化することが多く、寒くなりすぎないようにとの思いから窓やカーテンを閉めすぎてしまうことが多くなります。

冬場の換気のキモは豚舎室内の空気を、淀み無く動かすことです。
もう一つは冷たい外気を室内の空気とうまくミックスしてやり、冷たい空気を豚に直接当てないことです。
冷たい空気と暖かい空気はなかなか混じり合わないものです。
みなさんも、暖房がついている部屋でも足元へ冷たい空気が流れ込んで寒い思いをしたことはありませんか。

図1のように窓やカーテンを少し開けておいた状態では寒気が床の方に流れ込んできます。
このように冷気が直接豚に当たると、母豚では流産になったり、肥育豚ではさまざまな慢性疾病の発症の引き金になります。

図2は理想的な冬場の入気です。天井付近から水平方向に向かって風速を早くして入れてやることです。

そのためには、空気の入口と出口をハッキリさせること。
窓やカーテンを閉めても隙間風が入ってくる穴だらけでは空気の流れをコントロールが効きませんから。
断熱材に開けられたネズミの穴はこまめに塞いでください。

その上で天井のある豚舎では、天井入気口又は壁の高い位置に入気口を取り付けて、換気扇で排気する事です。
ウインドレス豚舎以外でも冬場の最低換気量を確保するだけの換気扇は取り付けるべきです。
そうすれば、窓やカーテンは閉め切ったままでも最低限の換気量を確保する事が出来ます。
天井の無い豚舎では、ダクトファンの吹き出し口を水平方向に向け直して、回転数はインバーターで適度に調節して使うとうまく行きます。

天井はあるがどうしても隙間風が入ってくる豚舎では、換気扇付きの天井入気口を自作してみて下さい。

写真1は家庭用の台所ファンの下に風向盤を取り付けて、水平方向に吹き出すようにした、手作り天井入気ファンです。
最低換気量を計算して、必要台数を取り付ければ、豚舎環境はかなり良くなります。
ウインドレス豚舎で入気口が手動開閉式の場合は、開けすぎると入気速度が遅くなって、入気口近くに冷気がそのまま落ちてきます。
このような豚舎では写真2のような、入気口を風圧で自動開閉するタイプに交換することがベストです。

最後に自然換気豚舎でもウインドレス豚舎でも共通ですが、速度を付けて入気しても、室内にはどうしても空気の淀みが出来るものです。
その対策は順送ファンを取り付けることです。

写真3は順送ファンの取付例です。ここでは50cmファンを取り付けています。
回転数はインバーターで調整できるように配線して下さい。
既にメーターファンとかが設置してあり、夏だけ使っているとすれば、もったいないのでそこにインバーターを追加して、順送ファンとしても使えるようにしましょう。
どれくらい空気を動かせば良いか。という基準は、空気は動いているが風を肌で感じない程度です。
簡単に判断するには、点火した蚊取り線香または普通の線香を持って豚舎に入ります。
煙が斜めになびいていればOKです。煙が真横にたなびいたり煙が見えないくらい強い風ではNGです。
是非お試し下さい。
なお、火事にはご注意下さいね。
寒気を制するものは豚舎を制す。

 

 

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最終更新日 : 2022/01/23