「豚舎・設備のお悩み解決!」(32) 農場内の情報共有(連絡)

企業のスムーズな運営には『ホウ・レン・ソウ』(報告・連絡・相談)がじゅうようであると言われていますが、これは、養豚場内にもあてはまることです。
もちろん、企業経営でも個人経営でも例外なく言えることです。
特に個人経営農場では、「家族だから言わなくても解るだろう」という気持ちから、この『ホウ・レン・ソウ』がおろそかにされやすいのではないでしょうか。
今回は、上司と部下、場員同士、業務引継に分けてまとめてみました。


まず、経営者や場長、部長など、部下へ指示をする立場の方へ質問です。
部下の理解レベルに合せた指示の仕方をしていますか?
例えば朝礼などで今日の予定などの指示を出す時は、全員に向けて予定をひととおり話しただけで終わりにしていませんか。
場員全員が熟練者で、定型的な業務のみでしたばこれでOKでしょう。
しかし、イレギュラーな対応や失敗が許されない重要な業務の時は、これだけでは不十分です。
全体に向けての指示が終わってから、熟練度の低い従業員には個別に段取りを説明することが重要です。
もし、従業員がメモ帳を常に持参していて、指示されたことを忘れないようにメモするタイプの人間ならば、上司はしゃべるだけでも十分でしょう。
しかし、理解ミスでメモしている可能性もあります。
一番良いのは、上司が自ら指示書(メモ書き程度で良い)を書いてそれを見せながら説明することです。
上に立つ人間としては、忙しい業務がたくさんある中で指示書を書くのは面倒なことかもしれません。
しかし、たいていの人間は耳から1回聞いただけでは、完璧に覚えられないものです。

『見て』、『聞いて』理解し、作業時に再び見て確認することでミスを防ぐことが出来るのです。
離れた現場間では、メールしてさらに電話するようにしましょう。
このような責任者がいる職場では、たいがい業務がうまく行っているものです。

ただ、メモ書きだけを渡して「この通りに仕事をしろ」でもいけません。
メモの内容を部下が理解したかどうかを確認しなければ片手落ちです。

次に部下から上司への業務報告や相談についてはどうでしょうか。
作業日報がある農場ではまず、それにしたがって欠かさずに報告することです。
定型的な業務をやったかどうかをチェックするだけの日報もありますが、これですと従業員からすれば記入が楽で良いのですが、従業員のためにはなりません。
重要なのは、異常やトラブルなど、イレギュラーな状態を発見した時にそれを遅滞なく上司へ報告できる体制になっているかどうかです。
「報告したいけど上司が不在だったからしなかった」場合はトラブルの責任はその従業員が負わなければいけません。

きちんと報告、相談していれば、トラブルの責任は上司が持つことになります。
だから、私は従業員さん方へいつも言うのですが、「自分で責任を負いたくなかったら、異変をいち早く発見して上司へ報告、相談して下さいね」と。
私も20年間場長をしていたから解りますが、上司としてもトラブルの責任は負いたくないのがホンネです。
しかし、このように『遅滞なく報告すれば責任は上司が取る』体制にした方がトラブルを未然に防ぐことができるものです。

次に場員同士の情報共有(連絡)についてです。
たいていの農場では業務や豚舎ごとに担当者が分かれている事と思います。
よくトラブルになりがちなのが、離乳当日に母豚の調子が悪いからと言って離乳母豚数を急遽変更すると、交配担当者は交配予定が狂うと文句を付けます。
離乳舎の担当者も離乳子豚頭数が予定と違うと収容スペースの予定が狂うと文句を言います。
また、離乳舎が溜ピット式の農場では、ピットの汚水を流す時に浄化槽の担当者と連携が取れていないケースがよくあります。
原水槽に余裕が無ければオーバーフローしますし、凝集剤の添加率が合わなくなって浄化槽の負荷が増えたり、などのトラブルをよく目にします。
汚水処理でトラブルを起こすと、農場の存続危機にかかわる問題に発展することもありますので、トラブルが発生しないように担当者同士できちんと連絡を取り合うようにしましょう。

まれなケースですが、他の従業員を困らせようとして、わざと連絡せずにトラブルを起こさせる従業員がいます。
このようなケースを改善するためには、場長なり経営者が普段から従業員の性格をよく理解して仲立ちをしてあげることが肝腎です。
場合によっては担当替えも必要でしょう。

最後は業務引継ぎについてです。
メインの担当者が休みの日にサブ担当者が作業をする事になりますが、ここでも口頭で伝えることとメモ書きのダブルで引き継ぎすることをお勧めします。
図1〜図3は豚舎チェック表の一例です。A4盤1枚で1週間分記録する様式ですが、引継事項がある時は、ここに簡単に書き込み、詳しい説明は現場にメモ書きまたは、チョークで書いておくのです。
例えば、継続治療が必要な母豚がいるならば、チェック表の母豚の健康状態欄に「継続治療1頭」などと書き込みます。
例えば空調機器が故障中の部屋があるならば、「●●室の換気扇は手動調節」などと書き込んでおきます。
前の日に口頭で引継をしても、一晩寝ると忘れてしまう。
と言うことはよくあることですので、メモ書きを併用することで、伝達ミスを防ぐことが出来ます。

次に担当者の変更や社員の入れ替りなど、担当者の引継では作業マニュアルがあるとスムーズに行きます。
新しい担当者が覚えるまで、何度も同じ事を教える事は、大事なことですが効率は悪いことです。
経営者または場長はこのようなケースに備えて作業マニュアルを作っておくべきです。
私が現場で場長をしていた頃は、エクセルの様式に文章を書き、デジカメで写真を撮った写真を貼付けて作っていましたが、今はもっと簡単にできますね。
ケイタイで作業風景の動画を撮りながら説明のアナウンスを入れればいいのですから。

SDカードも大容量が安く買える時代ですから、マニュアル動画をマイクロSDに入れて新しい担当者に渡せばOKです。
そうすれば何度も同じ事を説明する手間が省けますし、担当者側としても、忙しい上司に遠慮しながら教わりに行くような気兼ねをせずに覚えられますからね。


これらの方法を駆使してみなさんの農場でもスムーズな『ホウ・レン・ソウ』を実践してみて下さい。
 

 

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最終更新日 : 2022/01/23