「豚舎・設備のお悩み解決!」(3)効率的な防寒対策

 

9月後半になって朝夕の寒さが感じられる季節になりました。
豚価も400円台に下がってきましたね。枝肉相場も冬の時代に突入すると思われます。
そんな時代を養豚経営で生き抜くために、少しでもランニングコストのかからない寒さ対策をしておくラストタイミングが今であると言えます。

 まず、暖房費を抑えるために最初に検討すべき事は豚舎の気密性と断熱材です。
豚舎の老朽化やネズミの穴で隙間風が入るようになっていませんか。

写真1:天井断熱材が剥がれ落ち、屋根のトタン板が剥きだし



写真2

写真1、写真2は天井と壁断熱剤がネズミの食害と老朽化で剥がれ落ちた子豚舎です。
体重25kg〜50kgの子豚を入れる豚舎なので、室温20度は確保しなければいけないのですが、外気温が氷点下の時は各ペンにパンヒーターを付けても10℃以下になってしまいました。
昨年9月に天井と壁の断熱材を全面張り替え工事を実施してもらいました。
ネズミ対策のために、片面ガルバのものをお勧めしたのですが、予算の都合で30ミリ厚スタイロフォームと3ミリベニヤ張りを選択されました。
それでも今年の1月、2月は18℃以上を確保出来ました。
また、当該子豚舎の暖房用ガスの使用料は改修前の70%にまで減りました。


写真3:朽ちたガルバ波板の上から透明波板を被せた補修

 写真3は、屋根材と外壁に10ミリ断熱材付きガルバリウム波板を張っていた肥育豚舎で、ガルバが朽ちて落ちたので、屋根全体に透明波板を張って被せたところです。
雨風だけは防げても、夏は温室状態、冬は冷蔵庫状態になってしまいました。
当然のことながら肥育豚の発育遅延がおこっています。このようなケースでは屋根材の張り替えが基本となります。
もし、構造的に耐荷重が許せば、古い屋根材の上から断熱材付ガルバを重ね張りする事も可能でしょう。
また、古い豚舎で、屋根材がスレート1枚のみというところでは、スレートの上に被せ張りできる断熱材付きガルバリウム波板の施工をお勧めします。
西日本の温暖な地域の種豚舎や肥育豚舎なら、これだけの施工で間に合い、天井まで張らなくとも十分な効果を上げているようです。

 分娩舎や離乳舎ではウインドレス豚舎とガス温風ヒーターの組み合わせが主流となっています。
このように部屋全体を暖める方式は、アメリカのような燃料の安い国で考えられたものです。
日本に於いて暖房費を節約するには、『こたつ』の文化に回帰すべきと考えます。
それは、分娩舎においては保温箱の利用。
保温箱には蓋をかけ、熱源はコルツヒーターを用います(写真4参照)。

写真4:蓋を掛けた保温箱

そうすれば、室温は母豚の適温である18℃に保てば良いので暖房費の節約にもなります。
また、子豚が母乳を飲み終えると保温箱に入るため、圧死の減少にも効果が有ります。
離乳舎においても保温箱の利用やケンネル方式(図1参照)にすれば、室温を低く設定することが出来るので、暖房費の節約になります。

 次にエネルギー効率に優れた暖房として今後注目すべきはヒートポンプ方式です。
本誌今年2月号でも紹介いたしましたが、原理的にはエアコンの暖房やエコキュートと同じです。
熱量(カロリー)ベースで見たランニングコストは灯油やガスの1/3で澄みます。
とは言っても住居用エアコンの様に部屋全体を暖める使用方法は豚舎には向きません。
それは、イニシャルコストが高く付きすぎるためです。
エコキュートのようにお湯を沸かすタイプのヒートポンプユニットを使って、保温箱や離乳舎の床暖房として使用することをお勧めします。

熱源(集熱元)は外気、地熱、水熱、堆肥発酵熱などの選択枝がありますが、もしヒートポンプを設置する豚舎の近くに浄化槽があるのでしたら、そこを集熱源とするのが最も効率的です。
ヒートポンプ方式にはいくつかの補助金が使えます。
補助メニューは年度や県によっても異なりますので、実際に検討する時は、業者さんや行政側とよく相談することをお勧めします。

 

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最終更新日 : 2022/01/23