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「豚舎・設備のお悩み解決!」(20)病原菌を入れない斃獣処理の工夫
今月も読者様からの質問について私の知見をご紹介します。今月は斃獣処理の工夫についてです。 九州では斃獣処理の業者が1日に何戸も回収に回るそうで、農場のなかに入ったりすることも珍しくないとか…。
また密集地域で死体を一か所に集める方式のところでは、餌袋に入った豚の死体をもったままで農家さん同士が立ち話をしていることもあるとのこと。 というお話しを頂きまして、私も驚きました。 豚が死亡する原因には多くの場合、何らかの病原菌が関与している場合が多いものです。 病原の種類によっては豚が死亡した後でも増殖を続けるものがあります。 増殖した病原菌が血液や体液に混じって弊獣の体からしみ出してくることもあります。 ということは、弊獣収集車の荷台は病原菌の巣と言っても過言ではありません。 病原菌をたっぷり含んだ液体を自社農場内に落として行かれれば病気を貰う確率が非常に高くなります。 業者さんに「他農場で積んだ弊獣の毛や汚水を垂らすな」と言ってもどだい無理な話です。 ですから弊獣収集トラックは最も危険度が高い病気の感染源として、厳重管理する必要があります。 また逆に、自分の農場からの病原菌持ち出しを極力少なくする工夫もあってしかるべきだと思います。 まず、第1の前提条件として、弊獣保管庫は農場敷地内に置かないこと。 つまり、図1に示したように農場の敷地外の場所へ設置することです。 決して弊獣収集車を農場敷地内に入れるべきではありません。 病気侵入リスクが高いのだという認識を持ってください。 この認識が薄い農場さんが結構あります。 この機会に弊獣保管庫の設置場所を再検討してください。 次はどんな保管庫を使うのが良いか、です。 連絡すればすぐに取りに来てくれる体勢がとれている農場であれば、保冷機能が無いものでも可能でしょう。 写真1がステンレス大型ゴミ置場です。 ハエやカラスが入らないように、しっかりとした蓋付きのものを選びましょう。 弊獣収集業者がすぐには来てくれない地域では、保冷庫または冷凍庫を用意する必要があります。 冬以外の季節では弊獣はすぐに腐敗が進みます。 また、2〜3日もすればウジ虫が湧いて目や口からごちゃごちゃと湧き出し、もののけ姫に出てくる『たたり神』状態になってしまいます。 こんな弊獣を収集する身にもなってみてください。 誰だって嫌ですよね。収集業者さんにも気持ちよく来て頂く配慮をしなければ、益々収集に来てもらえなくなります。 「あの農場へ行くと『たたり神』を掴まされるぞ」という噂を立てられたら終わりです。 自分の農場から持ち出す病原菌を少なくする意味でも保冷庫や冷凍庫は是非とも必要だと私は思います。 写真2がプレハブ保冷庫です。1坪タイプの新品で30〜40万円が相場のようです。 もともとは野菜や米を保管するための製品ですが、これを弊獣保管庫として使っている農場も結構あります。 100Vまたは200Vの電源が必要ですので、農場から少し離れた場所へ設置する場合は、別個に受電契約をする必要があります。 防疫を一番強化するためには、入り口と出口が別々に使える冷凍庫がベストです。 それには保冷車の中古を調達するのが良いでしょう。 写真3が保冷車の一例です。 農場側の搬入は横のドアからとし、収集業者さんには後部ドアから搬出して貰います。 こうして作業動線が交差しないようにします。 こちらも電源が必要ですが冷却ポンプが12Vバッテリー駆動の場合は、バッテリーを大容量のものに交換し、大容量充電器で電源供給するように改造して使います。
写真4がヤフオクで中古保冷車を検索したリストですが40〜60万円で入手できるようです。 ご参考になれば幸いです。 最後に、弊獣保管庫の設置場所を農場外に確保する事や保冷庫を調達することは、資金も手間もかかり面倒だとは思います。 しかし伝染病が入ってしまっては甚大な被害が出ますから本末転倒です。 良くご検討されることをお勧めします。
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