「豚舎・設備のお悩み解決!」(14) 農場防疫(伝染病予防)の具体策

PEDが東北地方にまで広がりを見せ、どこの農場でも防疫の強化が他人事ではなくなってきています。本誌先月号でもPEDに対する予防策を諸先生方が書いていらっしゃいますので、私はより現場に密着した部分での注意すべき点を書くことにします。前回の流行時には私の拠点である宮城県でも発生がありました。その時の体験を踏まえてご紹介します。おそらく、ここで私が書くことは大規模農場やSPF農場では既にルール化されていることばかりかと思います。そのような農場では、従業員が多数居ると思います。従業員一人一人が、たとえ誰も見ていない場面でも、きちんとルールが守られているかを確認して頂ければと思います。

 病気の侵入経路は大きく分けて、人、物、動物です。それぞれに見ていきましょう。

【ダウンタイム】

まず、人。他の養豚場や屠場に行った場合、自社農場に入るまでの待機時間(ダウンタイム)の規定はありますか。少なくとも丸1日と一晩(36時間)以上開けるようにして下さい。そして、服、靴、車を替えて自社農場へ出勤することです。つまり、他農場や屠場へ行く服、靴、車と自社農場へ行く服、靴、車を分けて管理することです。もちろん、自宅では風呂に入って全身を洗うことは当然です。他農場や屠場と接触があるのはおそらく管理職と経営者の方がほとんどだと思います。例えば海外に旅行や視察に行って帰ってきた時は、必ず動物検疫所に寄って靴の消毒をして貰うことも忘れないようにしましょう。

ちなみに私は、車に消毒用アルコールスプレーと換えの靴を積んでいます。訪問先農場を出る時は履いていた靴を脱いで消毒し、別の靴を履いて運転して帰ってきます。そして、自宅に着く前に洗車してきます。

 【農場事務所】

シャワーインしている農場でも出入口が1カ所しかなく、外からの出入りと豚舎への出入りが交差している農場があります。これでは片手落ちですから、必ず場外からの出入口と豚舎からの出入口を分けて下さい。シャワーインを未実施の農場であっても、最低限、この出入口を分けることと、服、靴の替えと手洗いを実施するようにして下さい。

 【豚舎内外での靴履き替え】

PEDは野生動物による伝染が疑われています。特に気をつけなければならないのが、ネズミ、ネコ、鳥です。豚舎の周りには野生動物の糞が落ちていることがあります。それを踏んで豚舎の中に入れば病気を持ち込むことになってしまいます。ですから豚舎の中と外では靴を履き替えるようにして下さい。既に実施している農場では、ズルができないように、舎外用と舎内用を色分けして下さい。例えば舎外用は黒長靴、舎内用は白長靴にすれば一目瞭然です。履き替えを実施している農場でも豚舎の出荷台には中靴のまま出ることになります。ここが要注意ポイントになります。

 【出荷台(豚舎の豚出入口)の管理】

出荷台に鳥の糞が落ちていては防疫上の穴になります。鳥が進入できないように防鳥ネットを張って下さい。トラックが接触する側は、網戸にして開閉できるようにすると便利です。いちいちネットを多数のフックに引っ掛ける方式よりも楽です。私が以前勤務していた農場では、既製品の網戸ではなく、出荷口のサイズに合わせて、さん木で枠を造り、それに防鳥ネットを張った手作り品で使いやすく工夫していました。

また、出荷台は使用したらすぐに清掃、洗浄消毒しましょう。糞やオガコをそのままにしている農場が結構多い様です。毎回清掃を徹底して下さい。

 【物の搬入】

最も頻度が高いのが餌です。敷地境界線に受入タンクを設置して、搬送ラインで豚舎側タンクへ移送している農場では心配ないでしょうが、搬送ラインが故障した時には農場内へ入れることになります。

ベストの方法は、バルク車の運転手は降りないで運転だけしてもらい、農場従業員が車体消毒と荷下ろし操作をする事です。農場入り口でタイヤ回りと、操作部、やバルクの上部、餌の出口のジャバラを入念に消毒を掛けましょう。

万が一餌タンクの下に餌がこぼれたら、必ず除去清掃して下さい。こぼれ餌は野生動物や鳥が集まる原因になります。

また、紙袋餌は薫蒸消毒してから豚舎へ持ち込みましょう。製造工場から直送で無い場合は特に気をつけなければなりません。中継倉庫で古くなった物や農場から返品された物が混じっている場合も考えられますから、製造年月とロット番号も毎回チェックしましょう。製造から1ヶ月半以上経過している物は受け取り拒否した方が無難です。

資材の搬入については、畜産と関係ない店から購入した新品であればあまり神経質になることはないでしょうが、豚舎の中の修理や工事に使う道具は要注意。

畜産専門の業者は他の農場にも同じ道具を持っていって仕事をしているからです。この場合は他の農場へ行ってから丸1日以上空いていることを確認した上で、消毒液につけられる道具は消毒液に浸し、それが出来ない電動工具類は消毒用アルコールを浸した布で満遍なく拭いてから農場へ入れることです。特にグリップ部分などザラザラしたところにはアルコールスプレーをかけて十分に消毒して下さい。

 【動物・豚】

種豚の導入に当たっては、運搬車両を直接農場へ入れずに、農場外の受け渡し場所で自車に移し替えるようにします。そして既存豚の居ない検疫豚舎又は空き豚舎へ受け入れて2〜3週間経過観察し、その間に採血して伝染病のチェックをしてください。

野生動物が進入しないように、豚舎の出入口は開けたままにしないことです。

壁の隙間、ドアの隙間など、ネズミやネコが入れるような隙間は塞いでおくか、細かいネットを貼り付けておきましょう。窓や開口部には防鳥ネットを張っておきましょう。編目のサイズは5mm1cmが適当です。これより大きいと雀が入りますし、これより小さいと風通しが悪くなります。但し、ウインドレス豚舎など、強制換気を行うならば2mmメッシュでもOKです。また、豚舎が古くなってくると軒下に隙間が出来て、そこから小鳥が進入します。(写真1:軒先の隙間に鳥の巣が)

 

こういったところへは、ホームセンターで売っている発泡ウレタンスプレー(写真2)で充填し、隙間を埋めて下さい。

【まとめ】

防疫を守るにはある程度の投資が必要です。しかし、ひとたび病気が入ったら、経営を根幹から揺るがす事態になります。要所はしっかりと締めましょう。

また、従業員の教育も重要です。何故病気を入れてはならないのかの説明を付け加えながら、防疫ルールの確認を毎週1度ぐらいのペースでミーティング時に全員で確認し合うようにしましょう。

 

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最終更新日 : 2022/01/23