「豚舎・設備のお悩み解決!」(9)豚舎の衛生管理アップ策

近年の種豚育種改良における繁殖能力の向上は目を見張るものがあります。
先月は繁殖成績向上による肥育スペースの過密対策をご紹介しました。


しかし、高能力豚を導入しながらも繁殖成績アップになかなか結びついていない農場もあります。
その違いはと言うと、繁殖成績が高い農場は、総じて清掃が行き届いている、と言えます。

 

【豚舎内外での靴履き替え】

まず、基本となることが豚舎毎及び豚舎内と屋外との靴の履き替えです。
建物が古い農場ほど、この履き替え実行率が低い傾向にあります。
豚舎の入り口に踏込み消毒槽を置いて、毎日消毒液を交換していても、
泥や糞が付いたままの長靴で出入りしていては、ほとんど効果が無いと言っても過言ではありません。

まずは、図1のように豚舎の入り口にプラスチックの容器(番重やペール)を置いて舎外用靴置場にします。
そして、舎外用と舎内用とは別の色にします。
たとえば舎内用は白、舎外用は黒にすれば、ズルをしている人がすぐにわかりますから。

しかしこれだけでは片手落ちです。
台車やカートなども舎内用と舎外用を分ける必要があります。

こちらのほうが面倒で厄介なのです。

図2のように台車を2段重ねで運用できる組み合わせを用意し、
豚舎の出入口で上の台車を載せ替えします。

取っ手部分にブレーキレバーが付いているものであれば乗せ替えが楽に出来ます。
こちらも舎外用と舎内用を色分けしておきましょう。

また、スコップと一輪車で除糞する豚舎では、
豚舎の出入口でローダーのバケット等に入れられるように工夫して下さい。
 

【事務所の防疫対策】

農場事務所を清潔に保つことは防疫上も大切ですが、農場全体を清潔にする意識付けの意味からも重要です。
靴を履いたまま入る事務室の場合は、場内側と場外側に区切り、場内側は靴を脱いで入るフロアに改造して下さい(図3)

そしてロッカー室を場内側と場外側に設けて、その中間にシャワー室又は洗面台を設置して下さい。

農場に入る際はシャワーインに出来ればベストなのですが、それが出来ない場合は、
最低限として衣服の交換と手洗いをするシステムに変えましょう。

既存の事務室が狭くて区切って使うことが出来ない場合は、増築するか、
またはプレハブハウスを利用するとレイアウト可能になります。
 

【ストール舎の洗浄】

繁殖成績の低い農場では、分娩舎は離乳後に毎回洗浄していてもストールは洗ったことがない
というケースを多く見かけます。ス
トールも母豚移動で空いた度に洗浄消毒を行うようにしましょう。

この時に餌のストックホッパーの内側に溜まったホコリや餌のこびり付きも落として下さい。
これをしないとこびりついた餌にカビが生えてカビ毒の被害が出る可能性があります。

また、母豚の尻側通路は毎日除糞をしてきれいになっていても、
給餌側通路の掃除がされていなくてこぼれ餌がかびている事があります。
これは直接豚の口には入らないですが、カビが生えれば胞子が飛びますから、
豚舎全体にカビが広がる原因にもなります。

出来れば1日1回以上、動噴を用いて消毒剤で洗い流して下さい。
これらのことで受胎率の向上や哺乳中子豚の下痢を低減することが可能です。
 

【分娩舎へ受入母豚の衛生管理】

分娩舎は離乳の後に洗浄消毒して次の母豚を受け入れしている農場がほとんどだと思います。
しかし、受入母豚の洗浄消毒はしていないところが多いのではないでしょうか。
四肢や尻、乳房に付いた糞を落とした上で畜体消毒を励行しましょう。

分娩舎に母豚を入れる前にぬるま湯をかけて洗うのがベストですが、
寒い時期は分娩舎に入れてからバケツに汲んだお湯とブラシで洗うことでも良いと思います。
 

【通路もきれいに。通路にものを置かない】

豚舎内や豚舎間の通路に道具や修繕用部品、ゴミなどを置いて、
その周りが汚れたままになっていませんか。

コンクリートの床なのか土間なのかが解らないぐらい
糞や泥がこびりついている農場を見かけることがあります。

そういうところは大抵、通路にものが沢山置かれています。
コンクリートの
)床の通路は定期的に洗浄機で洗浄消毒をしましょう。

そのためにも物置にしてはいけません。やむを得ず物置としても使いたいのであれば、

図5のように、物置台を使って床から離して下さい。
そうすれば床を洗浄消毒しても置いた資材が濡れることを防ぐことが出来ます。
 

【作業時間の工夫】

さて、ここまで説明しても「人手が足りなくて出来ない」と言い訳して実行しない現場もあります。
出来ない理由を言う前にやるための智恵を絞ってみましょう。

普段やっていることで省略できる無駄な作業はないか。
少しの時間でできることなら残業をしてやってもらうことも一手です。

また、洗浄消毒作業だけをお願いするパートさんを雇用するとか、
シルバー人材センターに外注する方法も考えられます。

衛生管理を向上させ、成績が上がれば、洗浄消毒の人件費以上の収益が上がるはずです。

 

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最終更新日 : 2022/01/23