「豚舎・設備のお悩み解決!」(9)密飼い対策

近年はトピッグスやダンブレッドなど、繁殖成績の高い種豚がユーザーの関心を集めていますね。
それらに負けじと、既存の種豚メーカーも品種改良を進めていますので、1腹離乳子豚数が11頭以上の農場は珍しくなくなってきました。

繁殖成績アップに伴って経営者の頭を悩ますのは、肥育スペースの不足ではないでしょうか。
私のクライアント様も例に漏れず肥育スペースの確保に苦労しています。
そんな中で一緒に智恵を絞ってトライした成功事例をいくつかご紹介します。

 一般的に繁殖成績がアップした時に取る方策としては、
@母豚を減らす。
A離乳舎や肥育舎を増設する。
B子豚出荷で対応する。が挙げられます。


@では週間離乳子豚数が増えた分だけ母豚を減らせば設備投資がゼロですから、母豚に係わるコストが減った分だけ利益が増すことになります。但し、種付数を減らしてから離乳子豚数が減るまでには最低5ヶ月かかりますから、その間の密飼いをどう防ぐかの工夫が必要です。

Aの豚舎増設は、長い目で見れば最も利益を増やせる方法だと思います。
しかし、糞尿処理施設の処理能力に余力がなければ出来ません。また、豚舎を増設するための敷地と資金の確保も難しい場合があります。少ない設備投資で糞尿処理の能力をアップさせるには、汚水処理の前処理としてリセルバー式脱水設備がお勧めです。豚舎を増設するにしても、完成までには半年以上かかる場合が多いので、それまでの間はやはり密飼い対策が必要になります。

Bの子豚出荷は、安定した出荷先が見つかれば即効性のある対策になります。
実際に複数の私のクライアント様農場で、今年から子豚出荷を開始しました。価格の取り決め方は子豚相場に準ずるケースと年間統一価格のケースがあります。年間統一価格取引の場合は、意識的に売り惜しみや買い惜しみが発生しやすいですのでしっかりとした信頼関係の元に始めましょう。試しに始める場合は、相場に準じた価格設定の方が良いと私は思います。それでも、子豚出荷は通常30kg以上での取引ですから、離乳舎の密飼いは避けられなくなります。

 では、2〜3割の密飼いでも発育成績を落とさずに管理する工夫を紹介します。まずはご自身の農場の離乳舎や肥育舎の豚房面積を収容頭数で割算してみてください。一般的に言われている1頭当り最低必要な面積を表1に示しますので、ご自身の農場と比較してみてください。例えば1ペン6uの離乳舎に20頭ずつ入れている場合はちょうど0.3u/頭ですね。また、1ペン18uの肥育舎に20頭ずつ入れている場合は0.9u/頭ですね。ここに1ペン25頭ずつ入れるにはどうすれば良いかと言うことです。
 

1頭当り最低必要な床面積  
   
体重 全面スノコ 部分スノコ
離乳〜30kg 0.30u 0.33u
30〜70kg 0.50u 0.60u
肉豚出荷まで 0.80u 0.90u

 それには、餌箱と給水器を増やすことです。ドライタイプの餌箱ならば収容頭数の半分の食い口が必要です。25頭収容ならば12口。つまり6頭口餌箱が2台必要です。ウェットフィーダーならば収容頭数の10分の1の食い口が必要です。25頭収容ならば3頭口必要です。写真1は12収容時に1頭口ウェットフィーダー1台だったペンに、ドライの餌箱1台追加して15頭収容にした例です。写真2は12収容時に1頭口ウェットフィーダー1台だったペンに、ウェットの餌箱1台追加して15頭収容にした例です。

 また、給水器は豚10頭に対して1個以上必要です。ウェットフィーダーを追加した場合は給水器も追加になりますから良いですが、ドライフィーダーを追加した場合には写真3のように給水器を追加設置してください。

給餌ラインからのドロップパイプは、高さに余裕があるならば写真1・写真2のようにト型分岐を付けて追加したフィーダーに分けます。こうすればシャッター部分の追加をせずに済むので、経費節約になります。

 それからもう1点注意が必要なのは換気です。収容頭数が増えますので必然的に換気量を増やさないと具合が悪くなります。ウインドレス豚舎の場合は最低換気量の設定を増やします。ウインドレス豚舎以外では、順送ファンを回して下さい。環境コントロールには今まで以上に気を使って下さい。換気不足や急な温度変化に対してはストレス反応が出やすくなりますので。

 実際に私のクライアント様農場での実施成績では、事故率、DG、FCとも落ち込みはなく、出荷頭数アップする事が出来ました。

 

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最終更新日 : 2022/01/23