「豚舎・設備のお悩み解決!」(7)汚水処理の基礎とメンテナンス

最近、飼料要求率改善のためにペレット飼料に変えたら、糞が柔らかくなって糞尿処理施設の負荷が増えたというお話しを伺いました。

また、経費節約のために、汚水処理施設の定期メンテナンス契約を止めたいとおっしゃる方もいます。
そこで今回は糞尿処理の基礎理論と自分たちでできるメンテナンスについて紹介します。
紙面の関係で、今回は汚水処理を中心に解説します。

 冒頭の事例で、糞が柔らかくなってコンポストの処理が追いつかなくなったケースでは次のような対策が考えられます。

@. 堆肥置場を増設して、コンポストから出た完成品へ豚糞の一部を混ぜて、堆肥化する。
つまり豚舎から出た糞の内、コンポの能力をオーバーする部分を増設した堆肥置場で堆積・切り返しをして堆肥化する方法です。

A.ロータリー式コンポストの場合は、送風ブロワーをワンランク上のものに取り替えて送風量を多くするとともに、1日の攪拌回数を増やす。
また、発酵促進のための生菌剤や、水分調整剤として、オガコや粉砕した繊維質(建築廃材を粉にした副産物がある)を添加するのも有効です。

B.手間を掛けずに設備に投資する方法として、糞尿分離豚舎の一部を糞尿混合豚舎にして、汚水の前処理(脱水設備)を追加する。例えば、離乳舎が糞尿分離が悪いのなら、オールインオールアウトできるウインドレスの溜ピット式に改築します。
そして汚水処理の前処理として凝集剤を使った脱水設備を追加するのです。
この設備にSS除去能力が高く、脱水ケーキ(絞りかす)の含水率が75%以下にできる能力のものを選定すれば、コンポストの能力にも浄化槽の能力にも余裕が生まれます。これが私が最もお勧めする方法です。

【汚水処理の基礎】

 さて、前置きが長くなりましたが、本題の汚水処理の基本に入ります。大抵の農場では汚水処理に活性汚泥処理方式だと思います。四角い曝気槽でも、複合ラグーンでも、オキシデーションディッチ(陸上トラックのような形の槽)式でも基本は活性汚泥法であり、汚水に空気を送り込んで好気性菌の働きで汚れを分解しています。

つまり、浄化槽で微生物を飼っているのです。

豚舎で豚を飼っているのと同じように生き物を飼っているのです。
決して機械で処理しているのではない。と言うことを忘れてはいけません。
生き物ですから生育に適した条件というものがあります。それを人間が管理して調節してやらなければ良好な浄化処理は進みません。

浄化槽の処理能力は以下の条件が絡んでいます。

@流入する汚水のBODSS含有量・・・微生物の餌

A活性汚泥(微生物)の濃度・・・それを食べる微生物の数

B酸素の供給量・・・微生物の呼吸源

C水温・・・微生物にも生活適温があります

これらのバランスが崩れると浄化処理がうまくいかなくなります。

BODとは、生物化学的酸素要求量とも言いまして、汚水中の汚染物質有機物)が微生物によって無機化あるいはガス化されるときに必要とされる酸素量のことです。この数値大きくなれば水質汚濁していることを意味します。  

SSとは、浮遊物質とも言いまして、水中に浮遊する直径2mm以下の不溶解性の物質のことです。
つまり濁りの原因になっている物質で、BODが大きくなる要因になっています。養豚の場合、その多くが糞に由来するものです。

では@〜Cのアンバランス状態を具体的に説明します。@は汚水のBODSSが多くなることです。
繁殖成績がアップして生産頭数が多くなり豚の在庫が多くなった場合がそうです。
また逆に肥育日数が伸びて在庫が多くなることもあるでしょう。
また、豚舎が古くなって糞尿の分離が悪くなると糞が汚水中に溶け出してBOD量が多くなります。

Aの活性汚泥が少なくなる状態は大量の雨水が入って、活性汚泥が流出したときなどに起こります。
汚れを食べる微生物が少なくなるわけですから浄化が進まなくなります。

Bの酸素不足。これは、ブロワーの劣化や故障で送風量が少なくなった場合や、散気ノズルの目詰まりなどで起こります。
流入する汚水のBODが増えた場合も相対的に酸素量が不足になります。

Cの温度。水温30〜35度ぐらいが微生物の活性が最大になります。
冬に浄化処理が追いつかなくなるケースでは水温の低下に起因することが多いのです。
ただ、水処理の場合は堆肥の発酵と違って、60度もの温度は不要なのです。40度以上では逆に活性が落ちるのです。

【浄化槽のメンテナンス】

次に浄化施設のメンテナンスをするにはバランスを崩す要因@〜Cをモニターする事が肝要です。業者とメンテナンス契約をされているところでは1ヶ月に一度来てもらうところが多いことでしょう。しかし、是非とも自社のスタッフで毎日モニターして下さい。毎日の変化を見ていれば手遅れになる前に対策を打つことができるからです。表1が毎日モニターする点検簿の例です。

SV30とは、曝気槽内の液を1リットルメスシリンダーに採り、30分間放置して沈降物と上澄みの境界の目盛を読んだものです。SV60は、更に30分経過し合計60分沈降させた時の値です。SVは浄化の度合いを見る指標になります。SVが低いほど、さらに上澄みの透明度が高いほど良い処理水が得られます。SVを見る採水場所は、連続式の場合は、沈殿槽に流れていく直前のばっ気槽(ばっ気槽が複数ある場合は最後のばっ気槽)から採ります。もし、MF膜などで直接ばっ気槽から処理水を分離している場合は、MF膜のある槽から採ってください。
(図1:メスシリンダー)

どの程度の値が適正なのかは施設の設計によって異なりますので、メーカーに確認しておきましょう。
また、液の色や臭いも浄化度合いの指標になります。

 DOとは溶存酸素濃度のことです。ブローワーの送風量が間に合っているかどうかがわかります。
一般的に2mg/kg程度あればOKです。0.7以下では酸欠状態です。
流入BODが多すぎるか送風量が低下しているか散気効率が低下しているかの確認が必要です。
(図2:DO計)

 ペーハー(pH)の測定でも酸素供給量の過不足が判断できます。
最適ゾーンは7.07.5です。7.6以上なら酸欠状態(曝気不足)です。
反対に6.5以下だったら過剰曝気状態です。
(図3:pH計)

 水温はペーハー計、又はDO計に測定機能が付いていますので同時に測定できます。
ペーハー計やDO計は、図のように測定プローブ(センサー部)に長いコードが付いているタイプを購入すると測定作業が楽になります。

 

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最終更新日 : 2022/01/23